昨年、テスラ社のセダンが相次いで出火事故を起こし、また、先月も盗難された「モデルS」が警察とのカーチェイスのすえ、複数の車に衝突して大破し、散乱したリチウムイオン電池が炎上したという事件もおこっていました。それでもテスラの快進撃が止まらないのがすごいところです。
ロイターによると第二四半期は赤字幅が拡大したものの、売上高は倍増し、需要に対して生産が追いつかないといいます。
しかし、もっとすごいと思わず唸らせてくれたのが、テスラ社がとった出火事故対策の意外な方法です。日経記事によると、普通ならリコール対応が想定されますが、常識破りの解決方法だったのです。
なんと通信を使ったソフトウェアの更新でした。
PCやスマートフォンなどなら不具合をアップデートで修正することには慣れているわけですが、テスラ社はそれを自動車でやってのけたのです。もちろん希望すれば無償の修理も受けられるのですが、通信によるソフト更新で解決とは驚きです。
通常なら修理対応を迫られてもおかしくない状況にテスラが取った対応が、ソフトウエアのアップデートだった。車両の通信機能を使い、高速走行時には 車高を下げられないよう遠隔で設定を変えた。希望する顧客にはサービス拠点での無料補修も受け付け、ハード面の手当ても整えた。
テスラの EVはネットに常時接続され、ソフトの更新をアフターサービスの軸にするよう設計されている。昨年末に急速充電器の一部で部品が溶けるなどの不具合が発覚 した際も、ひとまず遠隔操作のソフト更新で応急措置をとり、その後に改良したアダプターを顧客に送って対応している。顧客の要望で渋滞時などにゆっくり発 進できる「クリーピングモード」を追加した例もある。
冷静に考えれば、なるほどということですが、イノベーションとはそんなもので「まさか、なるほど」の世界です。
少し前に、「もののインターネット(IOT)」は新たな産業革命を引き起こすと書きましたが、そのひとつの例かもしれません。アフターサービスの信頼性が高まり、しかもアフターサービスのコストを下げることも可能になってくきます。さまに一石二鳥です。
自宅でスマートフォン操作によって照明なり家電製品をつけたり消したりできるということよりも、はるかに大きなイノベーションが起こってくる、あるいはもうすでに起こってきていることが実感できるのではないでしょうか。
今日本は、製造から次の競争次元へと産業を進化させていくことが求められてきています。そのなかでも「もののインターネット(IOT)」、あるいはそれに近いものは、競争優位に立つための大きな切り口のテーマになってくると思います。
とくにテスラ社が示したのは、設計から販売、さらにアフターサービスまでを統合したビジネス体系をつくるということには注目しておきたいところです。