新聞に未来を感じているアマゾン創始者

「新聞」から紙が消え、電子化されていくと「電聞」とでもなるのでしょうか。そのような動きが加速されることを予感させる出来事が報道されています。アマゾン創始者でCEOのジェフ・ベゾスがポケットマネー2億5000万ドル(およそ250億円)でワシントン・ポストを買収したことです。

「新聞」から紙が消え、電子化されていくと「電聞」とでもなるのでしょうか。そのような動きが加速されることを予感させる出来事が報道されています。アマゾン創始者でCEOのジェフ・ベゾスがポケットマネー2億5000万ドル(およそ250億円)でワシントン・ポストを買収したことです。

今回の買収はワシントン・ポスト社ではなく、ワシントン・ポスト紙だけです。ワシントン・ポスト社の事業で最も大きいのが教育事業で売上の55%を占め、ケーブルテレビ事業が20%、買収された新聞事業は14%で、新聞事業のなかの主要なメディアであるワシントン・ポスト紙ですが、ワシントン・ポスト社は、この買収で社名が使えなくなるとか。

さて、誰しもふっと疑問に思うのは、なぜ企業としてのアマゾンではなく、ジェフ・ベゾスCEOがポケットマネーで買収したのかです。考えられるのは、アマゾンの株主に対して合理的な説明ができないからだろうということです。ジェフ・ベゾスCEOの直感であり、新聞メディアの明るい未来を予感しているのでしょう。ウォール・ストリート・ジャーナルの記事からも察することができます。

ベゾス氏はポスト紙のウェブサイトに同社の従業員向けに、「日々のワシントン・ポストの経営には関わらない」と述べた。同氏はテクノロジーによって小売業を恒常的に革新してきたことで定評がある。また、米国の最も伝統ある新聞の1つである同紙のために大きな計画を持っていると示唆した。「地図はなく、この先の針路の選択は容易ではない。新しいことを考え、試していかなければならない」と述べた。

「地図はなく、この先の針路の選択は容易ではない。新しいことを考え、試していかなければならない」からこそ自らがリスクを負うとは、いかにも起業家であり、世界のアマゾンを築き上げてきた事業家の発想の重みを感じさせます。

いずれにしても伝統のある新聞メディアが石橋を叩きながらおそるおそる電子化の時代に向けた取り組みをやっているなかで、ワシントン・ポストは、思い切った試みができる条件が揃ったといえそうです。

ところで、ワシントン・ポスト紙の発行部数はどの程度でしょうか。同社のアニュアルレポートを見ると、年々減ってきており2012年では日刊版が48万部で、日曜版が70万部です。

しかし電子版のほうへのアクセスでは、訪問者数も、ページビューも順調に伸ばしてきており、2012年の月間平均ページビューは3億2270万で、月間平均訪問者数は4,130万人となっています。

techcrunchの記事によると、広告収入で見れば、今年の第2四半期に紙媒体のワシントン・ポストは5450万ドルで対前年同期比4%のダウンで、オンライン収入は2980万ドルで前年同期比で15%の増加です。オンライン収入はワシントン・ポスト単独ではないようですが大半を占めているようです。まだ紙媒体の広告収入のほうが多いのですが、オンライン広告の収益が上回るのも時間の問題ではないでしょうか。しかも紙媒体の部数減は確実にコストが減ることになります。

またこの夏から一定数以上の記事を閲覧する利用者への課金を始めると発表しており、有料版での収入も加わってきます。

ワシントン・ポストと日本の大手新聞社を比べると、日本は大きすぎて身動きがとれないのだろうなと感じてしまいます。日経や朝日など日本の新聞社も電子版の有料化に踏み切っていますが、まだまだ紙媒体への依存度は高いのが現実です。

タブレットPCが普及していけば、紙媒体から電子版への移行の流れは加速していくと思いますが、恐竜のように大きなサイズになってしまった日本の新聞社は、そういった時代変化にはたして対応していけるのでしょうか。

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