ひさびさの新しいiPhoneで、5sと5cあわせた販売台数が3日間で900万台を超え、これまでの最高となったとアップルが発表しましたが、やはり興味の的は、ドコモもiPhoneを取り扱いはじめたことで、日本でのキャリア間の力関係がどう変化してくるのかになってきます。
ドコモ、au、ソフトバンク間でiPhone大戦争がはじまったわけですが、観客席から眺めていると、いずれがこのiPhone戦争を制するのかのオッズでもあればいったいどんな予想になったのかが興味津々です。そしてやはり焦点はドコモがiPhone取り扱いでどれだけこれまでの劣勢を巻き返せるのかです。全国で他のキャリアのショップでは行列がほとんどなかったにもかかわらず、ドコモショップにiPhone購入希望者が行列をつくって並ぶ映像がテレビに流れていました。
しかし蓋をあけてみれば、各キャリアのサービスショップの販売状況はわからないものの、BCNが行っている量販店での販売状況の調査結果では、滑り出しの発売一週目でソフトバンクが圧勝で、ドコモが勝利の美酒で乾杯!どころか、ドコモもauも完敗という結果となっています。孫社長がなりを潜めているにもかあかわらずソフトバンクがスタートを制したようです。
まだ、ドコモが扱いになれておらず店頭で混乱があるとか、メールサービスspモードメールが10月1日までiPhoneに対応しておらず、それまでに届いたメールの閲覧・削除ができないことなどの準備の遅れが災いしたとすれば、10月以降にどうなるのかにまだまだ目が離せません。
しかし、もし10月以降もドコモの巻き返しが不発に終わったら、iPhoneを欠いていたことがドコモの敗因ではなく、ドコモの戦略そのものに問題があることが証明されるに等しいので、ドコモとしてもここは一踏ん張りして、猛烈ダッシュならぬ、ユーザーの猛烈奪取をはかることに必死になるでしょう。そういった緊張感を内部で持てるかどうかにかかっているのかもしれません。しかし、そういった緊張感があまり感じられないところがドコモたるゆえんでしょう。
しかし、なにを強みとし、何を魅力としてドコモに引きつけるのかが今ひとつ見えてこないところが辛いところです。先のBCNが東京の山手線10駅で実施した新iPhoneによる3キャリアのLTE通信速度の比較結果でも、ソフトバンクがトップで、つづいてauとなり、ドコモはかなり差をつけられて最下位のようです。
ドコモは図体も大きく、機敏にゲリラ戦を仕掛けるというのは苦手でしょうし、コマーシャルやプロモーションの巧みさで勝負をかけることも不得意でしょうから、もうこうなったら値引き合戦に拍車をかけて、大勝負をかけるしかないのかもしれません。
いずれにせよ、このキャリア間の大戦争でスマートフォンの普及に拍車がかかってくると思います。モバイルでのシステム利用サービスを提供する側から見れば、いずれにしても、携帯、アンドロイド、iPhoneのいずれにも対応しなればならないのですが、ただスマートフォンのほうが機能を高度化させることができるので、この戦争で日本のスマートフォン比率が高まってくれればありがたいことです。
日本の携帯は、ガラケーと揶揄されますが、iModeなどいちはやくインターネット対応とその他の先進的な周辺機能やサービスを広げてきたために、他の先進国と比べると携帯からスマートフォンへの移行が遅れています。
日経BPコンサルティングの「携帯電話・スマートフォン"個人利用"実態調査」では、全回答者の39.4%がスマートフォンを一台は所有しているということでしたが、これを国内の人口構成に合うように補正すると、スマートフォンの普及率は28.2%ということになるそうです。
Googleの行っているスマートフォンの利用に関する大規模調査「Our Mobile Planet」では25%となっていますが、いずれにしてもスマートフォンの普及率が低いことに変わりありません。
今では、若い世代、そして女性よりも男性のほうがスマートフォンの普及率が高くなっていますが、LINEをはじめ女性の方がコミュニケーション・アプリの利用や活用度が高く、スマートフォンに人気がでてきており、今後は女性の普及が進んでくるのでしょう。とくにLINEがスマートフォン普及を促しているということろは注目しておきたいところです。
それにしても、このiPhone大戦争は、短期勝負は別にして、中期的には更地に近い40代、50代の世代をどのキャリアが取り込むのかの勝負になってくると思います。そこは本来はドコモが強いところではないでしょうか。ターゲティングの基本に立ち返れば、また他のキャリアとは違った新たな戦略も描けるのではないかと思えてなりません。
(※この記事は9月25日の「大西 宏のマーケティング・エッセンス」より転載しました)