2018年にぶっ壊したい、少子化日本の8つの矛盾とは?

明らかにおかしいだろ、っていう制度が山積みなんですよ、我が国は。

2018年始まりまって早々、僕はムカついているんです。この日本社会に。

世界一のスピードで少子化にまっしぐらなんです。でも明らかにおかしいだろ、っていう制度が山積みなんですよ、我が国は。

今日はそれを皆さんにご紹介したいと思います。

(1)少子化なのに、出産費用は保険が効かない

僕たちは妊娠相談ダイヤルやってるんですが、こういう相談が来ます。

「妊娠中なんですが、お金がなくて病院に行けない。自宅で産もうと思う」

自宅出産は、母子の命に関わります。

そんな明らかに危険な行為を、なぜせざるを得ないのでしょうか。

日本では、出産費用が平均約50万円かかります。

東京だと平均約61万円です。

日本では「出産は病気では無い」から、保険は適用外です。(先進諸国の多くは無償)

その代わり、出産一時金という補助金が出ますが、これが42万円。

東京だと平均20万円以上の、全国だと約10万円の差額持ち出しがかかってしまうわけです。

「普通の家庭」にとっては、多少かかっても、おめでたいことだし、問題はないでしょう。

でも、未婚の母だったり、ひとり親だったり、精神疾患で働けなかったり、貧困状態にあったりする場合、その負担は彼女たちを、深く深く追い詰めてしまうのです。

世界一の少子化って言ってんだったら、出産無償化しましょうよ。

(2)養親縁組増やさないといけないのに、LGBTや事実婚世帯は「親」になれない

今日本では、2週間に1人、赤ちゃんが虐待で死んでいます。

予期せぬ妊娠や貧困、精神疾患で、赤ちゃんを育てられないと思った実母が、遺棄するのです。

でも、特別養子縁組で、赤ちゃんを望まない実親から、望んでくれる良き育ての親に託すことがもっと当たり前になれば、こうした悲劇は防げます。

1人でも多くの、良い育ての親が必要です。そして、子どもがほしいと願うLGBTカップルはたくさんいます。

けれど日本では、民法817条の3「養親となるものは、配偶者のある者でなくてはならない」と定められています。

配偶者というのは、法律婚をしたパートナーを指します。よって、法律婚を認められていないLGBTカップルに、特別養子縁組の道は開かれていないのです。

世界中で同性婚が認められているにも関わらず、日本では認められていない。そしてそれが特別養子縁組への道も塞いでしまっているのです。

同様に、事実婚のカップルにおいても、シングル世帯においても、です。

よく考えたらおかしいことです。未婚でも子どもを育てているひとり親や、事実婚で出産するカップルも多々いて、それはOKなのに、特別養子縁組だけは制限されてしまう。

これは法の下の平等に反しているように思うのです。しかも、養子縁組増やしていって、子ども達の命を救いつつ、暖かな家庭を、っていう国の方向性とも逆行しているわけで。

LGBT家庭も事実婚・シングル家庭も、養子を迎えられるような社会を。

(3)母親が希少なのに、マザーキラー子宮頸がんのワクチン推奨がストップ

マザーキラーの異名を持つ子宮頸がんで、毎年2900人の人が亡くなっています。

命は無事でも、毎年1万人の女性たちは子宮を取らざるを得なくなっています。

けれどこの子宮頸がん、ワクチンで防げる唯一のガンなんです。2013年には厚労省が推奨を始め、70%の人々がワクチンを打つようになりました。

しかし、副反応を訴える患者団体が現れ、ワクチン反対運動を始めます。医師の一部では、子宮頸がんによってその異常な症状が起きる、と言った人間もいました。

マスメディアは一気に子宮頸がんワクチン叩きを始め、厚労省も積極的なワクチン推奨を「一時的に」ストップしましたが、そのストップは今でも続いています。結果、接種率は1%以下にまで下がってしまいました。

しかし後に、子宮頸がんによって異常症状がでる、という論文は捏造であったということが、医師でありジャーナリストでもある、村中璃子先生の調査で分かります。

また、副反応とされる症状も、ワクチンとは無関係であるというエビデンスも2015年の名古屋市の調査などで明らかにされ、産婦人科学会を始めとする科学・医師コミュニティは、警鐘を大いにならしました。

この厚労省のスタンスには、WHOからも過去2回、「医学的根拠が薄弱である」と批判を受けました。

昨年、権威あるマドックス賞を村中璃子医師が受賞し、海外からも日本のこの異常なワクチン推奨停止状態について批判されました。まさに国という単位で人体実験をしているようなものです。

(出典:「薬害でっちあげ」村中璃子)

けれど、過激な反対運動に怖れをなした厚労省と、事なかれ主義の政治家たちによって、ワクチン推奨は未だに止まったままであるだけでなく、再開の兆しさえありません。

少子化の我が国にとって、子どもの産める年齢の女性は非常に重要です。しかし、マザーキラーである子宮頸がんを、ワクチンで防げる病気にも関わらず、ワクチン推奨を停止しているというのは、少子化を促進するばかりではなく、母親たちを見殺しにしていることと一緒なのです。

今年こそ、この悲劇的な状況を、変えねばなりません。

(4)虐待通告が増え続けているのに、親権強すぎ

虐待を児童相談所に報告する「通告」件数は右肩上がりで12万件を突破しました

子どもの命と人権を守るためには、重篤な虐待が起きる前に、親権を停止して、里親等に養育を代替してもらうことが必要です。

しかし、日本の親権停止件数は、2015年度でたった17件。

ドイツは1万2000件で、イギリスは5万件以上なのと比較すると、あまりに低い水準です。

その理由は、法律とガイドラインによって保証されている親権の強さです。

例えば、18年間ずっと施設に入れっぱなしにして、1度も会いに来なかったとしても、親権を実親が持ち続けられます。

その子を愛してくれる、里親や養親がいたとしても、会いに来ない実親がNOと言えば、マッチングはできないのです。

馬鹿げてませんか?

国連の「子どもの権利条約」には、子どもが「家庭で育つ権利」がある、と明記されているのです。

「親権よりも、子どもの権利が上」ということを明示的に位置付け、もっと簡易に親権を停止、剥奪できる仕組みをつくっていくことが求められます。

(5)待機児童多すぎなのに、保育園は「配給制」

昨年は待機児童が最高値を記録しました。「幼児教育無償化よりも全入化だ」というのが現役保護者たちの切なる叫びでは無いでしょうか。

待機児童が生まれるのは、ニーズに応じた機動的な供給ができないため。それは、実は保育園制度の構造が由来しています。

保育園に入りたい時、どこに行きますか?そう、自治体の役所です。

役所の保育課が、あなたはこの園、君はあっちの園、と振り分けます。

保育園が足りなければ、自治体が保育園を運営する事業者を公募して募ります。「このくらい必要になるはずだから、このくらい作ろう」というのも、自治体が意思決定します

これを認可制というのですが、正に「配給」ですよね?行政が計画し、行政が仕入れて、行政が供給するわけです。

供給量が少なくても良かった時代には、こうした計画経済的なアプローチは有効なのですが、大量に機動的に供給しなくてはいけない時には、全く向いていません。

役所がニーズの推計(マーケティング)を機動的に行える、と信じる人は、ソ連のパン屋の行列を思い出してもらいたいわけです。

とはいえ、「福祉だから仕方がない」という意見もあります。あまり市場化しちゃうのもね、と。

いや、医療は役所にあっせんしてもらいませんね。介護も直接デイケアセンターに連絡を入れます。

医療や介護も「指定制」と言って、参入ルールはありつつも、供給は事業者の裁量に任されています。よって、公金が入りつつも、ニーズに合わせて供給を増やしていけるのです。

福祉だから配給制でなくてはいけない、というわけではないのです。

政府は小手先の待機児童対策をいつまでもやってないで、「配給制から指定制へ」という保育構造改革を断行しないとダメなのです。

いつまでも「保育園入れるかどうか分からない」なんていう状況で、子どもが安心して産めるわけがないんです。

(6)ひとり親貧困率54%なのに、養育費支払い率2割

ひとり親の半数以上が貧困状態。それはダイレクトに子どもの貧困に繋がります。

その理由は、子どもを養育するために、別れた夫(配偶者)が支払うべき「養育費」が2割しか払われていないから。

なぜそんなに支払い率が低いか。

日本では支払わなくても罰せられないから。

だからバックれ放題。

アメリカだったら、パスポート作れなくなったり、免許証が剥奪されたり、給与から天引きされます。

養育費不払いは犯罪という位置付けです。

スウェーデンでは、国がひとり親世帯に養育費相当額を支払い、もう一方の親から回収する「立て替え払い制度」が確立されています。低収入で養育費の取り決め額が少ない場合は、子の生活保障の観点から国が養育費にプラスして支給するんです。

諸外国のように、養育費支払を義務化すべき。そのために徴収は国の仕事(代理徴収)にしましょうよ。

それで、よしんば夫が貧困等で、とりっぱぐれたら、労災と同じで国が一時的に補填しましょう。

子どもに罪は無いんです。なんでバックれた親の責任を、子どもが取らないといけないんですか。

ひとり親をネグレクトし続ける社会にはNO!

養育費義務化へ!

(7)子どもの貧困が深刻なのに、母子加算引き下げ

生活保護を受給している母子家庭に、母子加算というものがあります。

その引き下げを検討していると言う報道が昨年12月にありました。

まさに最も困窮した子育て家庭を助けるための制度を引き下げようとしているわけですが、その理由の主なものは「生活保護費が増えているから」というものです。

ですが、生活保護費が増えているのは高齢化に伴って、無年金の高齢者等が増えているからであって、母子世帯が原因なのではありません。

また生活保護を受給している母子世帯の約7割がDV被害を受けており、3割が精神疾患を患っているのです。

政府はそうした現状を知っているはずなのに、最も弱い状況にある母子をさらに追い詰めようとしています。

子どもの貧困問題を解決する気が本当にあるのでしょうか。即時撤回して頂きたいと思います。

(8)空き家が増え続けるのに、空き家を寄付したら「罰金」

出典:野村総研WEBサイトより

人口減少が進む日本。かつて人口増加時代に作りすぎた空き家は、2013年には820万戸に及び、2033年には2170万戸と倍増します。

しかし、例えばその空き家を、DVシェルターにしたり、貧困世帯の準公営住宅に転換できれば、心強いセーフティネットになります。

我々NPOや福祉団体はそうした空き家や不動産の寄付を強く求めているんです。

しかし!ここで問題が。

良かれと思って、空き家をNPOに寄付すると、寄付した側に税金がかかるんです。

家あげて、さらに税金取られたら、誰もあげたいと思わないですよね?罰金かよ、と。

この仕組みを「みなし譲渡所得課税」と言って、個人の税金逃れの穴を塞ぐために、昔作られたものなんです。

でも、昔は不動産や家と言えば価値があるに決まっていたけれど、今はそうじゃないわけで。制度として時代遅れになっているのです。

少なくとも、譲渡した家や不動産を公益的に活用するのであれば、みなし譲渡所得課税は免除しないと。

空き家が広がって治安への大きな脅威となる前に、国土の虫食い状態がこれ以上広まる前に、税制改正が必要です。

以上、2018年にはぶっ壊したい、少子化日本8つの矛盾でした。

もうすぐ平成も終わるんだし、一つの時代の終わりと共に、古い制度は葬り去って、新たな時代を創っていきましょうよ。

そう思いませんか?

(2017年1月2日「Yahoo!ニュース個人(駒崎弘樹)」より転載)