児童虐待の現場にて

帰り道。改札を出ると、騒然としていた。子どもを父親が全力で殴りつけたという。側に駆け寄ると、七歳くらいの知的障害児が号泣してる。駅員さんがどうしたら良いか分からなそうだったので「児童虐待防止法では通報義務があります。警察を呼びましょう」と話す。父親は微動だにせず、一点を凝視していた。

帰り道。改札を出ると、騒然としていた。子どもを父親が全力で殴りつけたという。側に駆け寄ると、七歳くらいの知的障害児が号泣してる。駅員さんがどうしたら良いか分からなそうだったので「児童虐待防止法では通報義務があります。警察を呼びましょう」と話す。父親は微動だにせず、一点を凝視していた。

その刹那、急にバッタリと倒れる。駅員が救急車を呼びに行った。おそらく父親も心身の健康に課題を抱えていて、追い詰められていたと思われた。しばらくして、やってきた警察官に、父親にも福祉的ケアが必要な可能性があること。児童相談所と連携してほしい旨を伝える。

「自分はよく分からないので、生活安全課を呼ぶ」と警官は言った。父親は命には別状なさそうだったが、何も反応はなく、虚ろな表情だった。児童虐待の現場を見た通りがかりの母親は、泣いていた。僕も泣きたい気分だった。

父親は病院に運ばれた後、警察の取り調べを受けるだろう。その後に適切な機関に繋がり、サポートを受けられるだろうか。そうなることを心の底から願うばかりだ。

障害児家庭の支援を仕事にしている僕にとって、胸が潰れるような出来事だった。こうやってどこかで、親が大きな課題を抱え、障害児が殴りつけられているわけで。そんな光景はもう見たくない。全力で支援の手を広げよう。それに自分の命を使おう、と心に誓った。

(2014年8月9日「ライフ・子育て」より転載)

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