政治家として国際社会でアウト!「国家社会主義=ナチ」と2Sの脇の甘さ。高市早苗総務相らの写真

共同通信が書いているが、先週就任したばかりの高市早苗総務相と自民党の稲田朋美政調会長と右翼団体「国家社会主義日本労働者党」代表の2ショット写真。同団体のホームページに一時公開されていたのをイギリスの高級紙ガーディアンが書いた記事の転載だったが、日本政府の国際的な評判を一気に落としてしまった。

共同通信が書いているが、先週就任したばかりの高市早苗総務相と自民党の稲田朋美政調会長と右翼団体「国家社会主義日本労働者党」代表の2ショット写真。同団体のホームページに一時公開されていたのをイギリスの高級紙ガーディアンが書いた記事の転載だったが、日本政府の国際的な評判を一気に落としてしまった。

高市氏らが極右代表と写真 海外主要メディアも報道

第2次安倍改造内閣で総務相に就任した高市早苗衆院議員や、自民党の稲田朋美政調会長ら国会議員3人が、極右団体代表の男性と議員会館で会い、ツーショットで撮った写真が団体のホームページに一時公開されていたことが9日、分かった。議員側は「男性の人物像は知らなかった」と説明した。

団体は「国家社会主義日本労働者党」で、ホームページにはナチス・ドイツの象徴「かぎ十字」やこれに似たマークを数多く掲載。

出典:共同ニュース

もとになった団体のHPを見ると、最初のページに「我々はより優れた人種だ」という英語の文章やハーケンクロイツ(ナチの象徴の「かぎ十字」マーク)などがある。

最初に報じたガーディアンの電子版には、高市氏や稲田氏が同団体の代表と一緒に映っている画像が掲載されている。

Pictures from Japanese neo-Nazi Kazunari Yamada’s website show him posing with Shinzo Abe’s internal affairs minister, Sanae Takaichi, and his party’s policy chief, Tomomi Inada. Photograph

出典:ガーディアンのホームページ

私もイギリスに長く駐在した経験があるが、イギリスの新聞が日本の閣僚に関連するニュースを大きく取り上げることは滅多にない。しかも写真付きというのは異例の扱いと言ってもいい。

なぜ、このようなことになったのか。

思うに、右翼団体と言っても、今回の団体は日本に数多くある民族主義右翼とは名称が異なるからだ。

単なる民族的な右翼団体の名称であれば、これほど大きな問題にはならなかっただろうと思う。

なぜならその団体名に入っている「国家社会主義」

英語にすると「National Socialism」、ドイツ語だと「Nationalsozialismus」という言葉。

欧米社会では名乗ること自体が許されない存在として人々の間で定着している。

ユダヤ人の大虐殺を実行したヒトラーが率いた「ナチ党」の正式名称は、「国家社会主義ドイツ労働者党」。よく戦争映画で登場するナチ(Nazi)という言葉は、国家社会主義者(=Nationalsozialist)を言い換えた表現だ。つまり、今回の閣僚などの2S写真事件は、英語訳、ドイツ語訳されて報道されればされるほど、団体代表と一緒に写真を撮った閣僚らにとっては印象がすこぶる悪い。しかも、ガーディアンの記事によれば、この団体の代表はヒトラーを礼賛している、という。

私はテレビ局のドイツ特派員をしていた頃に、ドイツのネオナチ政党をたびたび取材したことがある。2000年頃、ネオナチの若者たちが有色人種を攻撃して死亡させたり、ケガを負わせたり、という事件が相次いでいた頃だ。失業の増加などで不満のはけ口を外国人や移民排斥に見い出していた旧東ドイツ地域の若者たちのデモを取材していた私も「イエロー!」と言われて殴られそうになったことがある。人種差別で外国人と見れば、黒も黄色も一緒で、黄色も中国人も韓国人も日本人も一緒。それが拝外主義や人種差別の実態なのだ。

ドイツではナチを真似る行為、ナチの敬礼やヒトラー礼賛、ユダヤ人差別などは「犯罪」として禁じられている。

警察による取り締りの対象だ。ネオナチ政党の代表格であるNPD(ドイツ国家民主党)も党首にインタビューしたことがあるが、こうした正面切っての取材では「外国人優遇政策」を批判するものの「黄色人種でも日本人は特別優秀だ。仲良くやりたい」などと言う。

どこまでが合法でどこからが違法かを意識して露骨な外国人差別の発言などはしなかった。

だが、実際に彼らの集会やデモを取材していると、人種差別の言葉が飛び交っていた。

「オウ!オウ!」と叫び声を挙げて、威圧的に存在を示す。ネオナチ担当の公安警察が頻繁に活動をマークしていたが、警察の目が届かないとみるや禁止されているハーケンクロイツの旗もなびかせてもいた。

最近、ドイツを始めとするヨーロッパ社会でもこうした極右、ネオナチ政党の台頭が深刻な社会問題になっている。外国からの移民の流入や失業の増加などで、若者層の不満がそこに集中している。その結果、極右政党が地方議会などを中心に議席を増やし続けている。

既存の有力政党の政治家たちにとっては、どうやってネオナチの根を絶つか。国を超えて大きな関心を持っている。

そのさなか、日本の新しい閣僚、それも政権の目玉といえる女性閣僚がナチを信奉すると思われる人物と2S写真。

これはヨーロッパでは大きな関心を持って受けとめられたはずだ。

しかも日本では最近、ヘイトスピーチが問題になるなど、排外的な傾向が強まっていてその動向が国際的にも注目されている。

安倍政権自体も靖国参拝などで周辺国からはファシズムへの回帰と批判されている。ガーディアンの記事にもこのことへの言及があった。是非はともかく、そうした疑念を持たれて、日本が国際社会から見られていることは確かだ。

政治家がどんな信条を持とうがそれぞれの勝手だが、今回の2S写真は間違いなく、

日本の国際的な評判を落とした。

日本政府の「国際感覚」を世界中から疑問視させる事態をもたらした。

今回の写真がどういう経緯で撮影されたかどうかは分からない。

ガーディアンの記事によると、高市総務相側は「その代表がどういう人物か分からなかった」と弁明しているという。今後、日本でも詳しい報道が行われるのだろうと思う。

それにしても気軽に写真撮影に応じた国会議員は脇が甘いとしか言いようがない。

「国家社会主義」という名称の入った団体の代表と2S写真。

それを撮ることがどういう結果につながるのか、予想できなかったのだろうか。

あるいは、この団体に共感した上で信念や覚悟ある写真だったのなら、それはそれで立派なことかもしれない。

それならば、この機会にすっぱり辞任していただくのが筋というものだ。

当然ながらこの問題はまた閣議後の記者会見の格好の話題となって、新聞やテレビでも報道されることになるのは必至だ。

次の閣議が行われるのは12日金曜日の朝。

金曜日の各局の昼や夕方、夜のテレビニュースや夕刊や翌13日の朝刊各紙に注目しよう。

(2014年9月10日「Yahoo!個人」より転載)

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