11月22日、法政大学の総長選挙が実施され、社会学部の田中優子教授(社会学部長)が33代総長に当選した。近く理事会で正式決定されるが、東京六大学で総長・学長・塾長など大学のトップに女性が就任するのは史上初めての快挙だ。私自身の職場での出来事なので手前味噌だが、大学業界全体にとっても画期的なニュースなので記事を投稿する。
田中優子さんは法政大学の出身。社会学部教授で現在、社会学部長。専門は江戸文化で、フェミニズムにも詳しい。朝日新聞の書評委員のほか、TBSの日曜朝の情報番組「サンデーモーニング」のコメンテーターとしても知られ、和服姿でのメディアへの露出も多い。
法政大総長に田中優子氏 社会学部長、江戸文化を研究
法政大は22日、増田寿男総長(72)の任期満了に伴う総長選挙で、次期総長に田中優子社会学部長(61)を選出した。近く理事会を開き、正式決定する。任期は来年4月1日から3年間。 田中氏は神奈川県出身。第一教養部教授や社会学部教授を経て、2012年4月から社会学部長を務めている。 専門は日本近世文化とアジア比較文化で、文学や芝居、社会風俗など江戸文化を幅広く研究。「江戸の想像力」「江戸百夢」など多数の著書がある。05年に紫綬褒章を受章。サントリー芸術財団理事や芸術選奨委員も務める。
出典:共同通信(11月22日)
安倍首相は女性の社会進出を後押しするとして、企業の役員などへの女性の登用を積極的に働きかけている。しかし、実際には女性がトップになる大企業はまだまだ例外的で数は圧倒的に少ない。大学はどうかと思って見渡してみれば、東京大学、早稲田大学、慶應義塾大学、明治大学、立教大学、そして、私が勤務する法政大学と、東京六大学では現在の総長・学長・塾長はおろか、歴代トップにも女性は存在しない。「自我作古」とか「学の独立」「権利自由、独立自治」などとうたいながら、大学という世界はどこも圧倒的な「男性優位社会」なのだ。「七帝大」と言われる旧帝国大学も歴代男性のトップばかり。関関同立の関西4大学にも女性のトップはかつても今も存在しない。
女性のトップがいる場合でも、女子大、あるいは、少し前まで女子大だった大学ばかりだ。
または「特徴」を出すことに熱心な大学、たとえば、最近ではマンガ学部のある京都精華大学の次期学長に漫画家の竹宮恵子氏が選ばれたことがニュースになった程度だ。
京都精華大:次期学長に漫画家の竹宮恵子氏
京都精華大(京都市左京区)の次期学長に「風と木の詩」などの作品で知られる漫画家で、マンガ学部教授の竹宮恵子氏(63)が選ばれたことが21日、大学への取材で分かった。12月7日の理事会で承認され正式に決定する。任期は2014年4月から4年間。 竹宮氏は徳島県生まれで、00年に京都精華大の教授に着任。代表作は「風と木の詩」のほか、「地球へ...」があり、小学館漫画賞を受賞、アニメ化もされた。 京都精華大は短期大学だった1973年に「マンガクラス」を設置。2006年に国内で初めてマンガ学部を開設した。(共同)
そんななかで誕生した法政大学の田中優子次期総長。社会の少子化が進むなかで、大学という教育機関も旧態依然としていては時代に取り残される。今回の女性総長誕生は、教員や職員の間にそうした危機意識が高まっていることと無縁ではない。
安倍首相は、経済界に対して「すべての大企業で少なくとも役員の1人は女性を登用してほしい」と要請している。世界経済フォーラムが発表した「世界男女平等ランキング」では日本は101位と「男女平等後進国」だ。
大学というところは、対外的なイメージが直接、収益構造に結び付く企業とは違って、社会に向けての発信は下手くそだ。理念は立派でも、「顔」が見えにくい大学は多い。だが、少子化がどんどん進むこれからの時代、そんなことでは済まされない。トップの発信力が大学生き残りの趨勢を決める。不人気な大学は淘汰される時代が、もうそこまで来ている。
田中優子さんがテレビ出演などで着る勝負服は和服だが、大学内では鮮やかな赤のスーツも多い。「個人の自由」をとても尊重する人で、昨年、私がテレビ局から転職してきた時に「大学は社会に向かって何をおっしゃっても自由。会社員時代には言いにくかったこともどんどん発言してください。むしろ、大学教員だからこそ発信して行きましょう!」と言ってくれた言葉が胸にしみた。
白髪の年配男性ばかりが圧倒的に多い大学社会で、どんな新風を吹かせてくれるだろうか。
(この記事は、11月22日のYahoo!ニュース個人『東京六大学初の「女性総長」に田中優子さん 女性の進出が遅れる大学界に新風』から転載しました)