いいトシした大人がお恥ずかしい。ネットのリテラシーが低いとしか言いようがない。
「ネット通販詐欺」に遭ってしまった。
でも、これって、私だけなのだろうか。
巧妙な手口なので、ちゃんと伝えておかないとみなさんも被害に遭う可能性がある。
後で警察などに聞いてみたら、私のような被害者は全国各地にいる。
しかも、同じような業者は手を変え、品を変えて今日も誰かを餌食にしている。
それを止めなければならない。
そんな思いで自分の恥をさらすことにしたのがこの記事だ。
というわけで、これは一人の大学教員がネット通販の詐欺に遭った出来事を描いた記録である。
~ルポ・ネット通販先の被害に遭うということ~ (その1)
私はこの数年、商品を買う際に「ネット通販」を使うことが圧倒的に多い。
家電製品、衣料品などは、同じ商品ならば量販店や街中の店は商品を実際に見たり、市中価格を確認する程度にしておいて、実際の購入にあたっては価格ドットコムで値段を調べ、Amazonや楽天市場、Yahoo ショッピングなどで「より安いもの」を探す。
実際に検索の方法などを工夫すれば、家電製品などは量販店よりもさらに安く変えることが多い。
ネット時代における消費者の典型的なショッピングのやり方ともいえるだろう。
さて、私は正月休みに冬物の衣料品などを購入しようとした。
価格をチェックしたのは、アウトドア・スポーツ衣料の「パタゴニア」の製品だ。
フリースのベストを購入しようとして近くの店に行ったら目当ての柄がなかった。
そこでGoogle などの検索エンジンで「パタゴニア」と入力したら、「パタゴニア激安店」というホームページが出てきた。
そのホームページの画面が冒頭の写真だ。
「100%品質保証・全品送料無料」とあり、パタゴニア専門店【アクシス】と書いてある。
しかも料金を見たら、正価19,950円のフリースのベストが10,970円、正価34,000円のダウンジャケットが25,200円などと表示され、かなり安い。
パタゴニアには公式オンラインショップもあるが、正月明けの段階ではごく一部でセール商品もあったが、それ以上の割引率だ。
クレジットカードの決裁があるように書いてあり、宅配便での配達となってることや会社概要も所在地や責任者名が書いてあったことで疑問を持たなかった。ちなみに会社の所在地は「佐賀県佐賀市兵庫町大字渕1346-1」とあり、店舗運営責任者は「宮本久美子」とある。
配送と返品についても、「送り先」として横浜市都筑区の住所と担当者名が載っていたので安心した。
そこでフリースのベスト1つ(正価19,950円が10,970円)とその他に以前から気になっていた全天候型のリュックサックも(正価18,900円が11,340円)と安いと感じて注文することにした。HPの画面に自分の氏名や住所、メールアドレス、電話番号をまず登録し、ログインしてから注文する仕組みだった。
2つの商品を「注文」すると、HP画面が切り替わって、「ご注文番号10022708」と表示された。
支払い方法として「ジャパンネット銀行 銀行振込」とあった。
すぐにメールアドレスにも「ご注文ありがとうございます。ご注文内容は以下の通りです。」という「注文確認書」と題したメールが送られてきた。そこでは銀行振込先として「ジャパンネット銀行」の「コガワタケシ」なる人物の口座番号が記されていた。
送金した後は、その旨をメールですぐに知らせるとすぐに発送できると書いてあった。
この口座に銀行振込で送金してメールで連絡すると、今度は再び、メールが届いた。
差出人は「宮本久美子」とある。
文面は「ご注文有り難うございます。送金を確認しました。すぐ出荷を手配します。商品を発送してから、君様と連絡します。宜しくお願いします。」
「君様」? 日本語が怪しい。
ひょっとして中国人かも、とは感じたものの、すでに時遅し。お金はすでに送金済みだ。
わざわざ返信をくれた以上はウソではあるまいと良い方向に考えることにして、しばらく待つことした。
ところが「宮本久美子」からはその後、なしのつぶて。メールで問い合わせても返事がない。
数日経ってこれは詐欺だったのではとの疑いが心をよぎり、HPに記載があった佐賀市内の住所の「宮本久美子」宛に「配達証明」で返金を求める封書を出したところ、封筒に「あて所に尋ねあたりません」とスタンプが押されて戻ってきた。
やはり不安は的中し、詐欺だったことが確定した。
「パタゴニア激安店」なるネット詐欺に、22,310円をだましとられてしまったのだ。
報道の仕事が長く、この種の犯罪についても多少の知識を持っていたつもりが・・・。
「パタゴニア激安店」のホームページは数日後で削除されてしまった。
ジャパンネット銀行や警察に問い合わせたところ、同じような被害者が全国各地に存在することが分かった。
しかも間抜けな私の被害はこれだけにとどまらなかったのだ。
(つづく)
(2014年2月23日「Yahoo!個人」より転載)