2014年7月7日付けの日本経済新聞夕刊に『インターン青田買い防げ 文科省、17年ぶり指針改定』と題する記事が掲載された。政府が成長戦略でインターンの活用促進を掲げたことを受けインターンの在り方を定めた指針を改正し、その中にインターンを通じて事実上の採用活動を行う「青田買い」を禁止する規定を盛り込んだ、という内容だった。
文部科学省サイトで調べたところ、『インターンシップの推進に当たっての基本的考え方』という、文部科学省・厚生労働省・経済産業省連名の4月8日付文書が見つかった。4月の文書を7月に報道したのがまず不思議で、記事の末尾に「インターンの実態が指針に沿っているかどうか大学や企業を通じて調査することも検討している。」とあったのに、さらに首をかしげてしまった。指針には何ら法的強制力がないのに、どんな調査ができるのだろうか。
三省文書の中には、「インターンシップと称して就職・採用活動開始時期前に就職・採用活動そのものが行われることにより、インターンシップ全体に対する信頼性を失わせるようなことにならないよう、インターンシップに関わる者それぞれが留意することが、今後のインターンシップの推進に当たって重要である。」と、青田買い禁止に関わる記述があった。昨年6月に政府は『日本再興戦略』を決定し、現在の大学3年生から会社説明会は3月に、採用選考は8月に開始することが政府方針となった。学生が落ち着いて学業等に専念できる環境が整備でき、一時的に留学していた学生も採用選考に乗りおくれることがないからだという。それが、インターンシップという形で青田買いが横行してしまっては、学生が落ち着いて学業に専念するのを妨げるからと、今回の指針が出されたのだろう。
このように、就職活動に連動しないようにインターンシップが実施されることは、学生や企業にとってよいことなのだろうか。
企業が採用活動に一斉に動き出すので、一歩でも乗り遅れれば致命的になるという恐怖心から、学生は何十社にも同時にエントリーする。企業には何千通・何万通ものエントリーシートが届き、じっくり読む余裕はないので、企業はほとんどランダムに面接に進む学生を選択する。学生には大量にお断りの連絡が届き、その結果、どんな仕事をしたいかではなく、ともかく内定を取ることが学生の目標になる。企業はルーレットで当たった学生を採用し、学生はルーレットで当たった企業に就職する。これが、就職後3年以内に3割以上という、若者の高い離職率の原因になっている。
インターンシップによってその企業について深く知った学生が就職を希望し、一方で、有望と見込んだ学生を企業が勧誘して何がいけないのだろうか。ぼくには全く理解できない。一斉主義の就職活動こそ、学生と企業の疲弊の元である。ルーレットのような「新卒一括採用」という採用慣行こそ、打ち破らなければいけないものだ。