電波行政に厳しい判定が下った

6月18日に、総務省について行政事業レビュー公開プロセスが実施され、ぼくは「無線システム普及支援事業(周波数有効利用促進事業)」に参加した。レビューの結論は『事業全体の抜本的改善』となった。ぼくもこれに賛成したが、『廃止』に投じた有識者が一名出たのには驚いた。

6月18日に、総務省について行政事業レビュー公開プロセスが実施され、ぼくは「無線システム普及支援事業(周波数有効利用促進事業)」に参加した。レビューの結論は『事業全体の抜本的改善』となった。ぼくもこれに賛成したが、『廃止』に投じた有識者が一名出たのには驚いた。

150メガヘルツ帯の消防・救急無線と、150または400メガヘルツ帯の防災行政無線は、デジタル化した上での260メガヘルツ帯への移行が進行中である。レビューの対象は、移行のための補助金を自治体に交付する事業であって、その原資は電波利用料である。電波監理を主な目的に、すべての無線利用者から電波利用料が徴収されている。2013年度の予算は666億円で、その過半は携帯電話利用者の負担である。ほとんどすべての国民が携帯電話を利用しているので、電波利用料は国民全員に対する均等税的な性格を持ち、それゆえ適正に利用されているか、レビューしたのである。

電波利用料の使途は電波法によって限定されており、消防・救急無線などの移行は、昨年の法改正で実施されることになった。改正案が審議された、同年5月21日の衆議院・総務委員会で、新藤総務大臣は「今回の電波利用料を使う部分というのは、その中で特に財政力の弱いところ、全国で94自治体です、そこについては、全体の電波の利用の観点から助成措置、財政措置をつけようということであります。」と答弁した。したがって、この94自治体に淡々と補助金を交付すればよかったはずだ。しかし、実際には、申請に基づいて交付先を決定するというプロセスを取り、この結果、「94の中には申請しなかった自治体もあり、94の外で申請した自治体もあったので、それらの中から審査して交付先を決定した」ということになった。この総務省電波部の説明は、「あいまい」「不透明」「基準が明確でない」と、レビューにおいて大きな反発を受けた。

消防・救急無線のデジタル化については、消防庁が別に補助事業を実施している。それが「消防救急デジタル無線の整備に必要な経費」であり、昨年度、行政事業レビューの対象となっている。これと今回の対象事業との重複はないか、交付自治体は異なっているか、が議論された。電波部は、重複はないと回答した。

150メガヘルツ帯が空き、次の用途に利用できるようになって、初めて有効利用が促進されたということになる。このことも議論になった。情報通信審議会からはデジタル列車無線と水防道路用デジタル移動無線システムに使用するという答申が出ているが、「いつから」「どのような技術を用いて」使用するか、は決まっていない。150メガヘルツ帯は他の用途にも利用されているが、それらをどう移転させるか、移転させないままとするかも定まっていない。そこで、「空いた周波数帯の利用計画を早期に明確化すべき」と有識者の総意でコメントすることが、レビューの最後に合意された。

これらの議論を受けての結論が、『事業全体の抜本的改善』である。適正に交付されているか疑問なうえに、後利用計画も定まっていないのだから、厳しい判定は当然である。このようにして、レビューは、閉鎖的な電波行政に、外部からの声が届く貴重な機会になった。

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