もし日本の隣国がフランスのようならば

歴史にまつわる謝罪や賠償の話になると中国や韓国のメディアは「日本はドイツを見習え」という論調になりますが、もし中国や韓国がフランスを見習ってくれればこんな話はとっくに終わっているはずです。実際、東南アジアの国々は日本の謝罪を受け入れてすでに未来志向の関係を築いています。

歴史にまつわる謝罪や賠償の話になると中国や韓国のメディアは「日本はドイツを見習え」という論調になりますが、もし中国や韓国がフランスを見習ってくれればこんな話はとっくに終わっているはずです。実際、東南アジアの国々は日本の謝罪を受け入れてすでに未来志向の関係を築いています。

いったいどれだけの謝罪と賠償を繰り返せば中国や韓国は日本を許すのでしょうか?中国や韓国のマスメディアが書く内容だけを見ていても、中国や韓国の人々の真意は見えてきません。しかし中国や韓国のネットユーザーの書き込みを見ていると、彼等の真意がなんとなく見えてきます。

どうやら彼等は、「殴る→謝る→許す」という回路をそもそも持っていないようです。彼等は「一回殴られたのだから、こちらには一回殴る権利があるはずだ」と本気で思っています。つまり韓国の人々は韓国側が主張する朝鮮人従軍慰安婦よりもより多くの日本人女性を従軍慰安婦にして、韓国側が主張するよりもより多くの日本人に強制労働をさせて初めて気が済みますし、中国の人々は日本を占領して中国側が主張する南京大虐殺の被害者数よりもより多くの日本人を虐殺して初めて気が済むわけです。中国の人々は日本に対してだけではなく、力のなかった頃の中国は各国から踏みつけられてきたのだから力を持った中国が周囲の国々を踏みつけるのは当然の権利なのだと思っているふしがあります。彼等がフランスや東南アジアの人々と比べて未成熟なことは明らかです。

一方で、日本人の中国や韓国に対する意識には世代間のギャップがあります。太平洋戦争に参加した世代は中国大陸で日本軍が行ったことへの反省の気持ちを持っていました。その子供の世代や孫の世代、つまり太平洋戦争に関わった人から直接はなしを聞く機会が多かった世代も、中国大陸で日本軍が行ったことへの反省の気持ちを持っていました。しかしさらにもう一世代先に進むと、太平洋戦争に関わった人から直接はなしを聞く機会が少ししかありませんから、この世代は中国大陸で日本軍が行ったことへの反省の気持ちをそれほど強くは持っていません。

中国や韓国の政府が日本に謝罪を求める場面に出くわすと、この世代の人達は「そんなこと言われても知らない。私は何もやってないんだから」という気持ちになってしまいます。そんな若者達の方にばかり問題があるとは言えません。なにしろ彼等や彼女等は反省すべきことなど本当に何もやっていないのですから。

中国大陸で日本軍が行ったことへの反省の気持ちを持っている世代が解決しておくべき課題のいくつかを解決できないまま今日に至っています。そのツケを中国大陸で日本軍が行ったことへの反省の気持ちを持っていない世代に払わせるというのはかなり無理があるのですが、すでにその時が来つつあります。

隣国への意識だけでなく、「戦争」そのものに関する認識にも世代間のギャップが存在します。若者の中ではすでに、首相の靖国参拝を支持する割合が過半数に達しているという調査結果もあります。戦争に関わった世代や戦争に関わった人から直接はなしを聞く機会が多かった世代は、戦争というのはただただ惨たらしくておぞましいものだと知っています。この世代の人達は戦没者の魂を慰めて、同時に不戦の誓いをするために慰霊施設を訪れます。一方、戦争に関わった人から直接はなしを聞く機会が少ない世代には、戦争というのを勇ましくて立派なものと勘違いしてしまっている人も少なくありません。彼等や彼女等は不戦の誓いと同時に立派に闘った戦士達への感謝のために慰霊施設を訪れています。どちらも不戦の誓いではあるのですが、後者の誓いには危うさを感じさせられます。

そもそも、司令部の立てた無謀な作戦のために退却途中に熱帯地方でのたれ死にした兵士達の魂は感謝されることなど望んではいません。そんな場所でそんな死に方をしたいと思っていた人は一人もいませんでしたし、彼等は自分の死を勇ましいとも立派だとも思ってはいませんでした。彼等は、ただそんな所で死にたくなかっただけなのです。

日本の若者達が直接の加害者でないということは事実ですが、日本という国が加害者の側だということも事実です。交通事故を起こした加害者の家族が「過ぎたこてとはもういいじゃない」と言うべき立場ではないのと同様に、「いったいいつまで謝罪を繰り返せばいいのか?」と加害者の側が言うべきではありません。

勇ましすぎる戦争観を持った若者達が、未成熟な隣国に対して、加害者の側が言うべきではないようなことを声高に叫べば、惨たらしくておぞましい現実を招いてしまうこともありえます。それは正しい選択ではありません。

現実に私たちにできることはかぎられています。中国や韓国が成熟してフランスや東南アジアの国々のようになるその日まで、日本の側は隣国の暴挙に毅然とした態度で冷静に対応し続けるしかありません。ムキになって政府関係者が靖国神社に参拝しても、相手の成熟が早まることはありえないのですから。

さて、あなたはどう思いますか?

(2014年2月26日「誰かが言わねば」より転載)

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