傑出した人物が組織を大きくする例は、企業や政党などあらゆる世界で見受けられることである。それが1人であれば、その1人が道を誤ると傾かせて弱体化させることはありながらも、組織そのものが分裂する心配は小さい。問題は複数いる場合だろう。「両雄並び立たず」から路線対立が起き、組織を弱体化・分裂させる懸念を生じさせる。
そうは言っても、全部が全部それにあたるとは思えない。企業で言えば、ホンダの本田宗一郎氏と藤沢武夫氏、ソニーの井深大氏と盛田昭夫氏などが例として挙げられる。いずれも2人の傑出した人物が世界的な大企業に育て上げた。本田氏と藤沢氏については、現役時代、不仲説も出ていたが、いずれもツートップが引退するまでに袂を分かつことなくリードしたのは言うまでもない。
政治の世界で言えば、自民党の「三角大福」の時代はそれにあたるのではないだろうか。2人どころか、総裁になった順に記すと、田中角栄、三木武夫、福田赳夫、大平正芳ら元首相の面々が激しく競いながらも、党を割ることなく政権を維持し続けたことは記憶されるところだ。
これらに共通すると思われるのは、1つの目標の下で突き進んだという点だ。方や企業が求められる利潤の追求、方や冷戦下における自由主義の堅持、それぞれに方法論に違いが生じ対決の芽があったとしても、根本となる部分が一致しているのであれば、組織が崩壊することはない──それを示したと筆者はみている。議論で敗れた側がいたとしても、時が流れて環境が変化すれば、立場が逆転することもあるだろう。
さて、筆者が所属する、みんなの党──渡辺代表が江田前幹事長を更迭した件について、いろいろな見方が出ているものの、筆者は例に示したように、路線闘争は事実としても、組織が崩壊するまでは至らないと思っている。それは、党が掲げるアジェンダの下、進むべき方向性では一致しているからだ。
ここで重要なのは路線闘争の中身だ。根本の部分となる政策そのものと、それをどう実現していくかの方法論──このいずれかを論争の軸にするかで、闘争の意味合いがまったく異なってくる。他の政党を批判することは極力避けたいが、多くみられるのは政策における路線闘争。これについては、分裂しない方がむしろ不自然ではなかろうか。みんなの党の場合、大きな論点は再編に向けての時間軸という、方法論における対立なのである。
選挙に連続しての大勝で、まとまっているようにみている巨大与党も、たとえば、国論を二分しているTPPはどうするのか──「執行部一任」によって最後はまとまると想像できるとしても、政策面での路線闘争は続くはずで、将来的にはそちらの方が深刻になるのでは、と余計なお節介かもしれないながら気になってくる。
アジェンダに従う意思を確認してから旗の下に集ったのが、みんなの党。一連の動きについて、「政策」の対立によるものか、「方法論」の対立によるものか──この本質的な部分をみることが重要だろう。江田前幹事長が会見で記者の「離党しないのか」という質問に対して「全く考えておりません。私から離党をする理由がありませんので」と述べられたことが、象徴しているのではないか。
この記事について、手前味噌と批判されても構わない。所属議員の1人として独り言のように記したが、みんなの党は「政策の党」であることを改めて強調しておく。