株価というのは、とても正直で、将来を決定付けるような出来事があると、上下いずれに関わらず、先読みした方向に一気に突っ走るものである。記録的となった今回の上昇も例外ではない。
24日現在で、日経平均は16連騰。これまでの連騰記録は、岩戸景気の時代だった56年前のことで、狂乱とも言えた80年代後半のバブル相場の時でさえ、この記録は破られず、当時の記録は13連騰止まりだった。
今回の連騰記録のスタートは10月2日であるが、その前日にあったこと憶えているだろうか。2日は月曜日であるため、立会日でいうと前日は9月29日となる。この日は、希望の党の党首である小池東京都知事の記者会見が行われた。そう、衆議院選挙の流れを大きく変えた、あの"排除発言"があった日なのである。
株式市場の関係者の大半は、直近の相場における上昇の理由として、総選挙で与党の勝利が読める(実際に勝ったのは言うまでもない)状況になったことを挙げている。近年の株式市場が政治に求めるのは、成長路線と構造改革。その両者を実現しようとするアベノミクスが継続するとの期待感が買い材料になったのだ。
この場合、自公が単に勝っただけでは、買い材料にはならない。与党が過半数を維持しても、大幅に議席を減らせば、安倍首相の退陣とならないとも限らず、自民党政権が続いても経済政策が転換すれば、野党の勝利と同様、株価は下げに転じると考えられる。株価が読んだのは、自公政権の継続ではなく、あくまでも現政権による経済政策の継続と言っていい。
過去5年に及ぶ長期的な上昇相場は、アベノミクスを材料にしている訳だが、その始まりも象徴的な出来事からだった。党首討論で、当時の野田首相が解散を明言。経済の停滞に対して手詰まりだった民主党政権に終わりを告げ、自民党への政権交代で景気が上向くと、株価は党首討論の翌日から先読みしたのである。
56年前の14連騰の時はどうだったかと言えば、きっかけは、当時の池田首相による「国民所得倍増計画」の閣議決定。その後、この経済政策を好感する形で株価は上値を追う展開となった。
今回の衆議院選挙では、憲法改正や安保ばかりに目が行きがちとなり、経済政策に関心が向けられているとは言えなかった。だが、株価はしっかり、先読みをしたのである。語るまでもなく、憲法改正や安保体制堅持を買ったのではない。強力な政権基盤が維持について、これらではなく、アベノミクスを文句なく進めることができるようになった、そう受け止めているのだ。「経済的な視点から選挙結果を見て欲しい!」──記録的な株価の連騰は、そう訴えかけているように思えてくる。