2月上旬だというのに、日中の気温が25度を超えるアリゾナ州メサ。今春オープンしたばかりの真新しい球団キャンプ施設で練習を終えた藤川球児は、日焼けした肌に清々しい表情を浮かべていた。綿密に組み立てられたリハビリメニューと格闘している。
■30代前半でしっかり体を作り直せたのは良かった
2月上旬だというのに、日中の気温が25度を超えるアリゾナ州メサ。今春オープンしたばかりの真新しい球団キャンプ施設で練習を終えた藤川球児は、日焼けした肌に清々しい表情を浮かべていた。いわゆるトミー・ジョン手術と呼ばれる右肘靱帯再建手術を受けたのが、昨年の6月11日。以来、日本に帰国した3週間あまりを除き、綿密に組み立てられたリハビリメニューと格闘している。
カブスと2年契約を結んだばかりの昨季は、思いどおりに物事は進まなかった。開幕戦で初セーブをマークし、守護神に任命されるも、右前腕部の張りで故障者リスト入り。戦列復帰した後も、わずか2週間で症状を再発させ、結局トミー・ジョン手術を受けることになった。
手術を受けることが決まった当初こそ冴えない表情を見せていたが、藤川の強みは、気持ちの切り替えの早さだ。客観的かつ合理的に状況を判断し、前に進もうとする力を持っている。今回の手術に関しても、「メジャー人生の幕開けにいきなり水を差された」とは捉えていない。トミー・ジョン手術を受けた投手の大半が、術後にパフォーマンスを伸ばす点を踏まえ、「怪我をするなら一番前向きに捉えられる怪我。これから先のことを考えたら、今のタイミングに手術を受けてよかったと思いますね」と話す。
もちろん、長期にわたり試合で投げていないことに対する違和感はあるが、投げられないものは仕方ない。手術後に待っているリハビリ期間を苦しく辛いものと受け止めるかも自分次第。藤川は、この期間をこれまで使い続けてきた体全体を休ませるオーバーホールとして利用し、下半身の強化を含め、体を1から作り直した。
「体が少しずつ変わり始める30代前半で、しっかり作り直せたことはよかった。やっぱり20代の時のまま、というワケにはいかないですから。ま、これがよかったのかどうか判断されるのは、復帰後の結果次第ですけど(笑)」
■「やっぱり先発投手は大変だと思う」
このリハビリ期間中に藤川が繰り返すのが、「やっぱり先発投手は大変だと思う」という言葉だ。
奇しくも、メジャー移籍後にトミー・ジョン手術を受けた松坂大輔(メッツ)と和田毅(カブス)の両先発投手は同級生。手術を受けるにあたり、松坂から「リハビリにはできる限りの時間を掛けた方がいい」とアドバイスされた。キャッチボールを始めるようになると、投げ終えた後、今まで経験しなかった肘の張りを感じるようになった。新しい靱帯が体になじむまでは、それなりの時間を要するものだから仕方ない。
今後の復帰までの道のりを考えた場合、球数の少ない救援は、比較的張りも少なく、張りを取るトリートメントも短時間で済む。だが、先発は試合で投げている間に張りも増すし、そのトリートメントにも時間が掛かる。「球数や投球回数の違いは大きい。やっぱりマツ(松坂)とか和田は大変だったと思うよ」と話した。
現段階では、平地でのキャッチボールが約120メートルの距離にまで伸びた。次の大きなステップは、2月下旬に予定されているブルペンでの投球練習だ。順調にいけば、メジャー復帰は5月下旬から6月上旬。少しずつだが、一歩一歩確実に復帰への道を歩み続けている。
「どうやったら打ち取れる? こうやったらいんじゃないか?っていうのは、常に頭の中にありますよ。復帰した時に、イメージどおりにどれだけパフォーマンスできるか。やるしかないでしょう」
怪我をした自分に対する憐憫もなければ、新しい靱帯を手に入れた右肘に対する恐れや心配もない。藤川の頭の中にあるのは、復帰後のマウンドで思いどおりに打者を斬る自分の姿だけだ。
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フルカウント編集部●文 text by Full-Count
(2014年2月14日フルカウント「「やるしかないでしょう」 超ポジティブ思考で復帰を目指す藤川球児の現在地」より転載)