■メジャーで最も有名な5番手外野手
ヤンキースのイチロー外野手が米地元紙ニューヨークポストの名物コラムニスト、ジョエル・シャーマン記者から不要論を唱えられ、話題になっている。同紙電子版に掲載されたコラムには「イチローを放出できなければ、ヤンキースは最も有名な5番目の外野手を押し付けられることになる」と痛烈な見出しが躍った。
イチローは12日のタイガースとのオープン戦で今年初めて実戦の1番打者を務め、2度目となるレフトで先発。この時、偶然にもタイガースの1番レフトの先発で、イチロー同様に左打ちのアンディ・ダークスが腰の手術で前半戦絶望となることがすでに球団から発表されていた。2チームの事情が重なった結果、イチローのタイガース入りの噂が浮上したが、記事によると、タイガースのデーブ・ドンブロウスキGMはダークスの代役を内部昇格か、他球団とのトレード等の補強か決めかねているとシャーマン記者に話し、「我々は大きな移籍を模索していない」と明言したという。また、ヤンキース幹部もタイガース側のイチローに対する身分照会はまだないと話している。
シャーマン記者はスプリングキャンプの段階でスター軍団におけるイチローの状況を分析。外野手と指名打者のローテーションはカルロス・ベストラン、ジャコビー・エルズベリー、ブレット・ガードナー、アルフォンソ・ソリアーノの4人体制が固まっており、イチローはメジャーで最も有名な5番手外野手になると皮肉気味に指摘した。
他の外野手に負傷者が出なければ、イチローの出番は、ヤンキースがリードしている終盤に、ベルトラン、あるいはソリアーノに代わるライトの守備固めでの起用となると分析。また、ピンチランナーかピンチヒッターとし、先発は週に1度か10日に1度程度と厳しい予想を展開している。その場合、打撃回数はシーズン150回から200回程度とも付け加えている。
同記者は、まだ本人が肉体的な衰えを自覚する前に、偉大な選手をベンチに下げることは、どの球団にとっても回避したいことの一つだと指摘。20歳の時点からオリックスでレギュラーだったイチローは、メジャーでも最も有名な打者の1人に数えられている。
■他のチームなら多くのプレー時間を望める
40歳を過ぎたイチローは昨年のOPS(出塁率と長打率を合算した指標)では規定打席に達した打者140人中136番目という.639という厳しい数字で、外野手では最悪だったという。また、13日のフィリーズ戦でイチローは3打席凡退に終わり、オープン戦での成績は21打席3安打(1割4分3厘)で二塁打や盗塁もまだない。
シャーマン記者は全盛期ほどではないにしろ安打を打ち、守備能力が高く、走塁も素晴らしいというイチローの要素から、フィリーズ、ダイヤモンドバックス、ブルワーズなら多くのプレー時間を望めると分析している。
また、ヤンキースはイチローを放出することで、650万ドルの今季年俸を節約し、ロースターに流動性を保ちたいと思っていると、シャーマン記者は指摘する。ロースターの内訳はピッチャー12人と先発打者9人に加え、ベンチは4人。1人は捕手の控え、もう1人は背中の負傷の回復次第でブレンダン・ライアン遊撃手、そしてエドゥアルド・ヌニェス三塁手も濃厚だ。空席は残り1つ。イチローが残留すれば、このスポットを手にすることができるという。
しかしながら、正三塁手のケリー・ジョンソンと、ヌニェスも外野手を兼任できる。マイナーからジリオ・アルモンテ外野手も昇格する可能性もある。イチローがロースターにいなければ、手薄な内野陣にマイナーから若手を昇格させることができるともつづっている。
最後に、シャーマン記者は名手の残酷な現状をこう締めくくっている。「今のところ、イチローはヤンキースにいる。球界で最も有名な選手の1人は視界から消えようとしている」と。
天才のプライドと意地にかけて、かつての圧倒的な安打量産を再び取り戻し、現在の苦境と名物コラムニストの酷評をはねのけることを期待したい。
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(2014年3月14日「フルカウント」より転載)