PRESENTED BY FUJITSU JOURNAL

「現在の働き方を大きく変えるのは、新しいビジョンとテクノロジー」 "ワークスタイル変革"の今、そして未来。

ワークスタイル変革分野の第一人者であるミスター「ワークスタイル変革」統合商品戦略本部統合商品ビジネス推進統括部 西山聡一シニアマネージャーに、「ワークスタイル変革」の今、そして未来を語っていただきました。

スマートデバイスの活用が日々進化し、コミュニケーションの分野からビジネスシーンへと広がりを見せています。これまでも富士通はワークスタイルを変革させるさまざまなソリューションを開発し、市場に送り出してきました。

スマートデバイスの導入で企業はどう変わるのか?

「ワークスタイル変革」をどのように成し遂げたのか?

どうすればお客様の社員全員が「ワークスタイル変革」の主人公になれるのか?

「ワークスタイル変革」を実現するために、何が必要なのか?

ワークスタイル変革分野の第一人者であるミスター「ワークスタイル変革」統合商品戦略本部統合商品ビジネス推進統括部 西山聡一シニアマネージャーに、「ワークスタイル変革」の今、そして未来を語っていただきました。「ワークスタイル変革」の本質とはいったい何なのでしょうか?

ミスター「ワークスタイル変革」

西山聡一

総合商品戦略本部 統合商品ビジネス推進統括部

TRIOLEオファリング推進部

シニアマネージャー

MCPCシニアモバイルシステムコンサルタント

――なぜ今「ワークスタイル変革」が注目されているのですか?

日本社会における「ワークスタイル変革」は以前から企業が取り組んでいるテーマです。しかし今日のブームは、2010年5月、米国アップル社が開発したタブレット型コンピュータ「iPad」の登場なしには語ることができません。これまでもそうですが、新しいテクノロジーが社会にリリースされると、コンシューマー主導で社会に普及した後、3年ほど遅れてビジネスシーンに導入される印象を持っています。

それを証明するように、4年ほど経った現在、こうしたタブレットが法人市場に本格導入される兆しがあります。2014年には126万台と前年の2倍近く出荷台数が見込まれており、2016年には272万台とスマートフォンに迫る台数の出荷が見込まれています。(出典:MCPC「企業におけるスマホ・タブレット利用動向とBYODの実態(2013年版)」)

つまり、「スマートデバイス」の活用が日々進化し、「自分」を中心にあらゆるデバイス、モノ、空間がつながり、個人の働く力を最大限に拡張できる状況を作り出そうとしていると感じています。

「ワークスタイル変革」というテーマについて、企業はその時々で変革を繰り返してきたのですが、「スマートデバイス」という新しいテクノロジーを利用することで、その変革のテーマが明確となり、市場も広がるのだと思っています。

――「スマートデバイス」を導入することで、ワークスタイルがどのように変化するのでしょうか?

私の考える「ワークスタイル変革」は、ビジネスシーンに無理矢理「スマートデバイス」を導入することではありません。私たち富士通の仕事はヒトとテクノロジーの間を取り持つことだと思っています。

当社のお客様は、産業・流通・金融・公共・自治体・文教・医療・社会基盤など様々な事業内容の方々で、そのワークスタイルも多様です。

そこで、私たちは「スマートデバイス」の利用範囲を、「オフィスワーク」「営業ワーク」「現場ワーク」の3つに分類し、お客様に分かりやすくしました。

1.オフィスワーク

音声通話やメールチェック、スケジュール管理、ワークフロー管理などの業務現場にスマートデバイスを導入することで、外出先や自宅など、いつでもどこでも業務を行えるようにする。

2.営業ワーク

プレゼンテーションや商品説明など、対面営業活動では、操作性がよく画像や動画を大きな画面で見せることができるタブレットの活用が鍵となる。紙の資料では持ち運べない膨大な情報もストックできる。また動画を使えば、紙上では表現しきれない製品の魅力を正確に伝えることができる。

3.現場ワーク

工場や配送、設備保守、病院など様々な現場での業務用端末としてもスマートデバイスを利用可能。従来の専用端末よりも低価格で軽量化されているうえ、個人利用で慣れているタッチパネルの操作で、誰でも簡単に利用できる。

富士通が得意としているのは、これら3つの「ワーク」をお客様のニーズに合わせて、端末~サービスまで垂直統合で提供するインテグレーション力と、お客様の既存システムとモバイルをつなぐカスタマイズ運用力です。

例えば金融業界の「現場ワーク」では、同じスマートデバイスでも他の業界よりも高い「セキュリティ」と「操作性」を両立すべく、「手のひら静脈認証」タブレットと既存システムを連携するインテグレーションが可能です。

また、ワークスタイル変革には継続性も大切です。あるお客様が2011年に先行してグループウェアを目的にタブレットを導入してくださった例があるのですが、そのお客様は、その1年後には営業強化のために電子カタログを導入したい。更にその1年後にはオフィスのパソコンと同じように、自宅でも外出先でも社内の業務システムを使えるようしたいと、ご相談をいただくようになりました。

これはお客様のご要望としては至極当然で、ワークスタイルというのは、導入したら終わりではなく、導入してからがスタートです。毎年、改善を繰り返し、さらに新しく、効率よく、進化しなければならないので、私たちはシステムとしてこうした変化に対応しカスタマイズ・運用をし続けなくてはなりません。最初に富士通のシステムを導入して、ダメだったら別の会社に持ち込むという訳にもいかないので責任重大です。

あるお客様で以前に他社導入したグループウェアのモバイルシステムと、今回弊社で納入させていただく電子カタログシステムとの認証が合わないという事態が発生しました。最初から私たちのシステムであれば問題なかったのですが、後々、こうした不都合が起こりうることをお客様が予見するのは難しい。「ワークスタイル変革」には継続性が求められることを忘れてはいけません。

――これまでどんな導入事例があるのでしょうか?

「オフィスワーク」の分野ですと、富士通自身に導入した事例があります。

「グローバルコミュニケーション基盤」を自ら国内11万人、約200社で統一しました。これによって、スマートデバイス活用によるフィールド活動の支援、メール中心のコミュニケーション文化からリアルタイムコミュニケーションへ、富士通グループ17万人規模でのナレッジ共有、といったワークスタイルの変革を他社に先駆け取り組んでいるのです。こうした富士通の成功事例を具体的にご紹介すると、お客様も安心して導入を決断してくださいます。

私自身、年間50社以上の商談に参加させてもらうのですが、導入することで業績をあげたいというお客様もいらっしゃいますし、逆にコストを下げたいというお客様もいらっしゃり、その目的はさまざまです。

小売業の「現場ワーク」のお客様事例としては「株式会社サークルKサンクス」様がございます。店舗指導を担当するスーパーバイザーの方々の業務効率向上が求められており、オフィスではPCのように使えて、外出先ではタブレットのように使えるハイブリッドタブレットをご導入頂きました。この導入決定にも、お客様のワークスタイル変革への並々ならぬ拘りがございました。

また、金融業の「現場ワーク」のお客様事例としては、「ふくおかフィナンシャルグループ」様がございます。

渉外行員の営業プロセスを改善し営業力強化するため手のひら静脈認証内蔵タブレットとシンクライアント基盤、閉域網での高速通信回線を導入し、外出先でもセキュアかつ簡単に行内システムにアクセスできる仕組みを構築した最先端事例です。

――スマートデバイスの導入をする上での課題とはなんでしょうか?

ワークスタイル変革で富士通が提供できるモノはICTが中心になるのですが、新しいテクノロジーを企業の現場に導入し、浸透させるにはかなりの労力を必要とします。日本の企業は伝統的に現場部門の影響力が強く、新しいテクノロジーの導入になかなか現場が動いてくれないときがあります。

海外の場合は、企業の成長戦略とICT戦略が直結している企業が増えており、このような認識のずれは少なくなっています。

日本人のワークスタイルは伝統的にとても真面目で効率的です。このためICTを導入しなくても成立している現場がいくつもあり、それが現場の誇りだったりもします。

ですから、ICTを活用して企業のサポートをする私たちも、このテクノロジーを導入した場合、現在とくらべてワークスタイルがどう変わるのか、ということを丁寧に、具体的に説明する必要があります。

その時に大切なのは、モバイルPCの利用率がこれだけ上がるとか、タブレットの利用率が20ポイント上がったとか、そういう数字も大事ですが、どれだけ残業を減らすことができるのか、生産効率を上げることができるのか、社員同士の新しい関係性でクリエイティブな会社に変わるなど、お客様が重要と考えているワークスタイルの本質部分がどう変わるのか、ということをご説明しなければなりません。

――「ワークスタイル変革」で一番大切にしていることはなんですか?

富士通はICTの会社なので、お客様にしっかりとしたシステム・サービスを導入し運用することが一番大切です。そのために昨年、モバイル活用に向けた製品・サービス群を「FUJITSU Mobile Initiative」として発表をさせていただきました。お客様に満足いただける様に、端末からモバイル基盤・アプリケーション・サービスまで垂直統合でご導入いただけます。また、様々なカスタマイズや運用のご希望にも対応する自信を持っています。

さらに、最近の「ワークスタイル変革」ではICTだけでなく、お客様の働き方を一緒に考える訳ですから、お客様が「ワークスタイル変革」で実現したいコトを一緒に検討し解決するための施策が必要です。

そのためICT以前のアプローチが必要となります。Gartner REPORT「モバイルの戦略的ロードマップ(2012年版)」には、企業のモバイル戦略において「需要」、「供給」、「ガバナンス」、「リスクと問題」が重要とあります。

この4つの戦略を富士通なりに解釈すると、図1「ワークスタイル変革の戦略的ロードマップ」のように、ビジョン策定~就労見直し~セキュリティポリシー~インフラ選定を総合的に検討・実施することが、将来目指すべきワークスタイル変革を実現するための近道と考えています。

図1.ワークスタイル変革の戦略的ロードマップ

――「ワークスタイル変革」は企業のビジョンがなければ実現しないというのは本当ですか?

「ワークスタイル変革」とは、企業が日々の業務を改善していくプロセスであって、新しいテクノロジーを導入するプロセスではありません。

新しいスマートデバイスや最新のソリューション・サービスを導入すればワークスタイルが変わる、というような風潮があります。確かにICTを利用して、ワークスタイルを変えることは可能です。しかし、その一方でそれらを導入する企業に「ワークスタイル変革」のビジョンがなければ、変革が進まない場合もあります。未来の働き方のビジョンをしっかりと持って、その実現のためにICTを積極的に導入することが必要です。

私は「ワークスタイル変革」を成功させる秘訣は、企業全体の「ビジョン」とそれを推進するための「コンセンサス」だと思っています。

「ワークスタイル変革」で社員一人一人が変革の主役になるためには、企業全体が向かうべき変革にむけて「経営部門」「現場部門」「IT部門」「事務部門」が一体になる「コンセンサス」があってこそ、新しいテクノロジーを導入する意味があり、変革を推進・運用する原動力となります。けれども、最初にお話した通り、これがなかなか難しい。そこで富士通では、私たちがファシリテータ・コンサルタントとなって、こうしたビジョンをお客様と一緒に考えるというサービスを始めました。

ここで取り入れるのはデザイン思考を使った「ワークショップ」手法です。開催する場所もいわゆる会社の会議室ではありません。頭の中にその日の業務が残ってしまうような場所ではワークショップを行っても変革のアイデアが出てきません。私たちはオープン・イノベーションと呼んでいますが、イマジネーションを刺激するような空間デザインやツールに囲まれた非日常的な空間で開催するのが効果的ですね。ここではビジネスで使うロジカルな思考ではなく、少し飛び抜けたというか、少しジャンプした「未来志向」なアイデアが期待されます。

ワークショップに参加する人は会社によって様々です。IT部門の人が「現場を説得するための武器にしたい」と言って参加する場合もありますし、経営陣が率先して参加することもあります。

一番多い場合は、全ての部署から数人ずつの若手が参加するパターンでしょうか。現場の担当者と経営企画・人事・総務の担当者とIT部門の担当者がこのワークショップを機に顔を合わせて、これからの会社の未来の姿について真剣に話し合うことだと思います。最終的なビジョンももちろん大事ですが、そのプロセスを体験することが企業にとっての変革の第一歩なのです。

――具体的にどのようにビジョンを描いていくのですか?

例えば「タブレットを導入したけれども効果が見えない」「システムの導入を決めたが経営会議で承認してもらうための指標が作れない」「オフィス移転を機にワークスタイルを変えたが、目指す姿が描けない」「現場改革を何年もやっているが、決定的な効果を生んでいない」というような課題に対して、ワークショップで様々なアイデアを皆さんで出し合っていただきます。

その上で富士通の専門チーム(注1)がワークスタイルの分析を行い、「ビジョン」を新たに作成し、そのビジョンに基づいた「ワークシーン」を描き、それらを実現するための「ロードマップ」「KPI・KGI等」「ICT実行施策」を2~3カ月かけて作成します。

(注1)富士通デザイン株式会社、株式会社富士通総研、各アカウントSE・SE会社から専門チームを編成します。

(注2)UX: User Experience

――富士通の「ワークルネサンス」のコンセプトもこうしたワークショップからできたと聞きましたが本当でしょうか?

はい、そうです。未来の「ワークスタイル変革」のコンセプトからお客様と一緒に作らせてもらうという意味では、自社で制作した「ワークルネサンス ~人を思うICT、働き方は明日へ~」という動画を見ていただけるとよく分かると思います。

「ワークルネサンス」は富士通が考える未来のワークスタイルのコンセプトです。ICTを活用して個人の能力を最大限に強くすることをテーマに、富士通の部署の垣根を超えた社員が集まってワークショップを行い、まとめたものです。「データがつながるだけではなく、想いがつながるチームになりたい」や「自分らしく働き、自分らしく生きる」などのコンセプトを元に作成しました。この動画もワークショップに参加した若い社員が作りました。

そもそもこうしたサービスはお客様に寄り添って、お客様の望まれることを具体化してゆくために、何をしたらよいのかを考え積み上げてきたからこそ実現したものです。その上でクオリティの高いクリエイションを実現するにはプロの力が必要不可欠なのですが、我が社には「富士通デザイン」や「富士通総研」というソフトウェアデザインやコンサルティングを専門にしている会社があって、UXサービスデザインができるメンバーが数多くいることが奏功しました。

こうしたビジョンをクオリティの高いデザインで可視化するということは、「ワークスタイル変革」でもっとも重要な「コンセンサス」を得る武器としても最大限活用できます。100ページにもなる報告書よりも、一枚の完成された「コンセプトマップ」「コンセプトムービー」のほうが説得力を持つ場合があるのです。

「Work Renaissance(ワークルネサンス)」 人を想うICT、働き方の明日へ

――今後、どのような仕事をされたいとお考えですか?

私は、入社当時、富士通研究所で「人工現実感(Artificial Reality)」というテクノロジーを扱う研究者でした。

いろいろ扱ってきた中でも、ヴィジュアリストで映画監督の手塚眞さんと共同で制作した「TEO もうひとつの地球」というパソコン・ソフト開発は思い出に残る仕事となりました。パソコンを介して想像のなかの惑星「TEO」にアクセスし、その惑星に生息する様々な生物と交流できる。人工知能、リアルタイムOS、CGをはじめ、キーボードレスのインターフェイスや音声認識など、当時としては画期的な取り組みが、コンピュータの専門家や学者にも高く評価されました。

私は小さい頃からパソコンに熱中し、コンピュータが人間や社会のあり方を幸せな方向へ導くだろうと信じ夢を見ていた世代です。小学校の頃からプログラムを組んでいましたから。このプロジェクトを通じて、人間がコンピュータに使われてはいけないんだという思いも強く持つようになりました。

2000年、富士通研究所から富士通本社のマーケティング部門に人事異動となりました。当初はベンチャー企業と一緒にニュービジネスを考える部署に配属され、その後、現在の統合商品戦略本部の所属となったのです。

研究所時代は、まだ見ぬ未知の技術開発に汗を流していたのですが、マーケティングの仕事は、そうした技術が実際に商品となって社会にリリースされた後、それをどう普及させていくのかという仕事です。

商品は実際にお客様に使ってもらってこそ価値があります。研究者時代は、お客様から遠い場所で仕事をしていました。ただ幸運なことに「TEO」のプロジェクトを通じて、部署の枠組みを超えて、新しい技術の開発から製品出荷まで、ワンストップで行った経験が今の仕事に活かされています。

現在のようなインターネットとテクノロジーの融合の時代になると、技術者もそうした現場に近い場所での仕事を経験したほうが良いと思います。テクノロジーを開発する技術者と、商品を普及させるマーケティングという仕事は、一見、まったく違うように思えますが、私の中では同じ延長線上にあります。

私はこれまで、お客様に寄り添ったサービスを手掛けてきましたので、機会があれば商品開発の現場で仕事をしてみたいと思っています。新しいデバイスをはじめ、社会を牽引するような商品の開発は、とても興味を覚える分野です。

研究所からマーケティングの世界に飛び込んで、改めて富士通ならではの強い商品作りに貢献してみたい。現在の社会を大きく変えるのは、新しいビジョンとテクノロジーだと私は考えています。

プロフィール

西山 聡一

総合商品戦略本部 統合商品ビジネス推進統括部

TRIOLEオファリング推進部

シニアマネージャー

MCPCシニアモバイルシステムコンサルタント

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