怪我で後半戦を離脱していた内田篤人。日本代表の合宿では順調な回復ぶりを見せた。再発の恐れもあるが、本人は手を緩めるつもりはない。そこには4年分の思いがある。南アW杯の悔しさを本人は忘れていない。
■「W杯で勝ちたいと思うのは自分だけのためじゃない。4年前より責任感がある」
2月9日のハノーファー戦で右太もも負傷を負い、長期離脱を強いられていた内田篤人。単なる肉離れの再発ではなく、腱も切れていたことが判明した。
「ケガをした瞬間は単なる肉離れだと思っていた。最初の診察では肉離れと言われて、シャルケの病院へ行ったら『腱がない』と。それからまた別の病院に行ったら、偉い先生が3人くらい出てきて『すぐにオペだ』って。
それで、『ちょっと日本に帰らせてくれ』って言ったんだけど、その時は『(ブラジル)間に合うのかな…』と。日本に帰ってきて鹿島のドクターに『手術はなし』って言われたんで、そこから少しずつ『間に合わせないと』という気持ちになりましたね。
切れた場所はひざの内側なんですけど、治りやすい場所だったと聞いています。今はくっついて腱もあるし、張りと順応性も出てきた。帰国してすぐ検査して入院・治療と全てがスムーズだったのがよかった。
あとは試合に出て勝つことが恩返し。W杯で勝ちたいと思うのは自分だけのためじゃない。4年前より責任感があるというか、そんな感じですね」と内田はこの3ヶ月、回復に全力を注いでくれた人たちへの感謝を口にするとともに、本大会での勝利を改めて誓った。
■「デブになるんじゃなくて、筋肉をつけたい」
5月16~19日に都内で行われた欧州組合同自主トレは全日程参加した。シャルケでは全体練習合流には至らなかったというが、このトレーニングでは全力疾走も躊躇することなくこなしていた。上半身もかなり逞しくなった印象で、確実にパワーアップしていることが伺えた。
「向こうでも2対2とか1対1とかはやっていたんで、ある程度は問題ないけど、今はこういう(追い込み型の)練習なんで、きつい時は楽しくやった方がリフレッシュできますから。体重は1キロくらい増えたのかな。
デブになるんじゃなくて、筋肉をつけたいなと。重くならないようにとは意識してやっていました。再発の恐れに関しても、どんどん練習をやってけば、恐れも怖さもなくなってくるしって感じですね」と本人は手ごたえを口にしていた。
その感触通り、21日からスタートしたブラジル本番に向けた鹿児島県指宿市での日本代表第1次合宿では、全メニューに合流しているという。午前午後合計4時間超にわたるハードな練習。
しかも走り中心で、走力に長けた香川真司までもが「足がパンパンできつい」と本音を吐露するほどだ。それに手を緩めることなくこなしているのは、内田がほぼ完ぺきに回復した証拠。
「再発したら再発したでオフ。思いっきりいくしかない。スタッフの人からは抑えるところは抑えて行けと言われているけど、行けるからには行きたい。手を緩めるつもりはない。こうやって練習できることで、自分はサッカー選手なんだって気がしてくる。いいんじゃないですか」
■「CLはすごいレベルが高かった。だから普通にやればいい」
あとは実戦にいつ戻れるかだ。最初のターゲットは27日のキプロス戦になる。本人は「いつ90分出られるようになればいいとか、そういう目安はない」と語っていたが、できることならスタメンで行きたい気持ちはあるだろう。
同じ右サイドバックの酒井宏樹が右ひざ膝腱炎でまだ痛みを抱えているだけに、ザッケローニ監督も内田を使いたい意向は強いかもしれない。その試合でこれまで通りのパフォーマンスを見せられれば、ブラジルへの不安は払拭できるだろう。
「でも自分にはこれまでチャンピオンズリーグ(CL)とかドイツでやってきた自信があるし、CLはすごいレベルが高かった。だから普通にやればいい。
4年前は対戦相手の国の名前や選手名は知っていても、それ以上は知らずにやっていました。それに大会直前にメンバーがころっと変わるのをベンチから見ているだけだった。あの後の4年間はホントに頑張ってきました。やってきた4年を無駄にしたくないし、勝ちたいと思います」
意気込みは強いが、プレー自体は自然体。普段通りの内田篤人を出せれば、ブラジルでは十分やれるはずだ。その感覚を1日も早く取り戻すことが、今の彼に課せられたテーマである。
【了】
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(2014年5月25日「フットボールチャンネル」より転載)