ファッション通販大手ZOZOの「苦戦」が囁かれている。2018年12月下旬から始まった会員制サービス「ZOZOARIGATO」を機に、オンワードなどのアパレルメーカーが相次いでZOZOTOWNへの出店を取りやめる事態となった。
「ZOZO離れ」どういうこと?
発端は、2018年12月25日にZOZOが開始した新サービス「ZOZOARIGATO」だった。
年会費3000円もしくは月額500円を払えば、常に10%割引(入会初月は30%割引)で商品を買えるという内容で、より安く商品を買いたいユーザーにとっては利点の多い有料会員サービスだ。
割引額はすべてZOZO側が負担しているが、一方で、一部のアパレルメーカーにとってはZOZOTOWNとリアル店舗などでの販売価格に差が生じてしまうなど、不都合な面もあるサービスといえる。
このサービス開始を契機に、アパレル大手オンワードホールディングスは、全ブランドの「ZOZOTOWN撤退」を決断。これに続くように、子ども服ブランド「ミキハウス」の三起商行、ジュエリーブランド「4℃」を展開するヨンドシーホールディングスなどもZOZOTOWNから撤退した。
ZOZOTOWNに出店するアパレルメーカーの中には、ブランドイメージを重視する”高価格帯”のブランドを持つ企業も少なくない。
「23区」や「自由区」などのブランドを展開するオンワードの広報担当者は、ZOZOTOWNから撤退を決めた理由について、「(新サービス「ZOZOARIGATO」による)恒常的な値引きがブランド価値の毀損になると判断した」と説明した。
長年のビジネスパートナー、ユナイテッドアローズがECサイト運営を自社に切り替えへ
また、ZOZOTOWN設立初期から出店し、長年にわたりビジネスパートナーとしてZOZOの成長を支えてきたセレクトショップ大手のユナイテッドアローズの発表も注目を集めた。
同社は約10年間にわたり、自社ECサイトの開発・運営をZOZOの子会社に委託していたが、2019年10月をもって自社運営に切り替えるという。
ユナイテッドアローズ広報担当者はハフポスト日本版の取材に対し、この決定に至った理由について、顧客の利便性向上を目的とした「将来の販売モデル像の構築に向けた取り組みの一つ」と説明。
「オンラインとオフラインを統合した戦略をさらに推進していくためには、自社主導で機能の追加などが可能な開発・運営体制への変更が必須であると判断しました」としている。
なお、ZOZOTOWNへの出店については、今後も継続していく方針という。
業績予想を大幅に下方修正。出店撤退の影響は「軽微」
ZOZOは1月31日、第3四半期の決算説明会で、2019年3月期連結決算の業績予想を下方修正すると発表した。
売上高は従来予想(1470億円)から19.7%減の「1180億円」、営業利益は400億円から33.8%減の「265億円」、経常利益が400億円から33.8%減の「265億円」。親会社株主に帰属する当期純利益は、期初予想の280億円から36.4%減の「178億円」と大幅に引き下げた。
また、説明会では前澤友作社長が「ZOZO離れ」の報道についても言及。
1月31日時点で、ZOZOTOWNに出店する1255ショップのうち42ショップが全商品販売を見送ったことを明かした。
前澤氏は、「EC事業本部とブランドさんで一生懸命に取り組んできたショップですので、ショップとして減るのは悲しく思います」とコメント。
一方で、前期実績の商品取扱高では1.1%にあたるため、業績に与える影響は「軽微である」と話した。
「ブランドの意見も取り入れながら努力を続ける」
プライベートブランド事業など新規事業に力を入れるZOZOは、着るだけで体型サイズを採寸できるボディスーツ「ZOZOSUIT」など、型破りなアイデアで日本のビジネスシーンを盛り上げてきた。
しかし、PB事業での苦戦をはじめ、今回の「ZOZOARIGATO」導入については、多方面から厳しい声が寄せられている。
ZOZO広報担当者によると、このサービスは「よりファッションを楽しみながら、社会・業界に貢献していく新しいチャレンジ」と捉えているという。
「既にZOZOTOWNをご利用いただいているお客様から、まだZOZOTOWNをご利用いただいたことのないお客様まで、日本のファッション好きの皆様に届けていきたいと考えています」
さらに、ブランド側の意見を取り入れながら、サービス向上を目指していくという。
当初、商品一覧ページでは「ZOZOARIGATO」割引後の価格が表示される仕様になっていたが、2月中に割引価格を表示させるかどうか、各ブランドの希望に合わせて選択できるようにする。
広報担当者は、「サービスの目的や内容について当社からブランド様への十分なご説明に至らなかった点については、今後も引き続きご理解をいただけるように、ブランド様の意見も取り入れながら努力を続け、よりよいサービス提供のために努力してまいります」と説明した。