中国経済は米中貿易戦争で崩壊するのか、しないのか。夏のダボス会議で楽観派と慎重派が論戦

政治や経済界のリーダーたちが集まる夏季ダボス会議で「中国経済のこれから」が議題に上がった。

アメリカと中国がお互いの輸出品に高い税金(=関税)を掛け合う、米中貿易摩擦。

トランプ大統領と習近平国家主席は、G20に合わせて開催された首脳会談で、追加の関税措置を実施しないことを決めたが、これまでに引き上げられた関税はそのままだ。

関税が上がると、儲けを確保するために輸出された品の価格も上がる。中国はアメリカとの貿易で黒字を生み出してきたが、すでに経済に影響が出始めている。

こうした中、世界の政治や経済界などのリーダーが集まる夏季ダボス会議(7月1日-3日)が中国・大連で開かれ、実業家や研究者らが「中国経済のこれから」について論戦を繰り広げた。現地の様子をリポートする。

夏季ダボス会議で開かれたセッション
夏季ダボス会議で開かれたセッション
World Economic Forum

■楽観派が口火

「貿易戦争は難局ではある。しかし企業もすでに対応策を検討している」と自信を覗かせたのは、中国の化学会社大手でエネルギー産業などを手がける中化集団のトップ、寧高寧(にん・がおにん)氏だ。

中化集団の寧高寧(にん・がおにん)氏
中化集団の寧高寧(にん・がおにん)氏
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寧氏は、中国の企業について「中国の企業は成長モデルを変え、持続的、計画的な成長をするようになった。投資も長期的な考えに立っていて、合理的だ。

(国が目標とする範囲の)年間6.3-6.4%程度の成長を実際にするかはわからないが、研究開発に投資をして成長する国になってきている。経済成長の勢いも強い。今後については楽観的だ」と評価した。

これに対して、中国国家金融研究院の朱民(じゅー・みん)院長「寧氏には訂正して欲しい。2019年は不確実性が増すだろう」と反論した。

中国国家金融研究院の朱民(じゅー・みん)院長
中国国家金融研究院の朱民(じゅー・みん)院長
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中国経済を取り巻く環境について、「(イギリスがEUを離脱する)ブレクジットが十分な協議をなされないまま強硬に進められた場合、金融市場への影響は大きい」と指摘。

さらに貿易戦争については「G20を通じて両国首脳が話を続けていくことを確認し、雰囲気は良くなった。ファーウェイにも部品の供給をすることになり、技術的なサプライチェーンは崩れないと見られる。しかし、貿易戦争自体は長期的に続いていて、すでに自動車産業に影響が出ている」とした。

この意見に寧氏は「学者はマイナスな事を言わないと仕事がなくなる。過去30年間、中国経済は悪いと言ってきた人間は、皆間違っていた」と皮肉を交えて返すと、会場から笑いが起こった。

■”ただ1つ言えるのは...”

会議では、中国国外で活動する専門家からも意見が寄せられた。

JPモルガン・チェースのジン・ウルリッヒ氏は、中国経済の先行きにはリスクもあるとした上で、「アメリカの成長が鈍化する一方で、中国は6%以上の成長を続け、グローバルな成長に貢献している。その貢献を理解することが大事だ。成長のドライブが製造業から変わり、投資がテクノロジー、IT、バイオテクノロジーに集中している」と分析。

JPモルガン・チェースのジン・ウルリッヒ氏
JPモルガン・チェースのジン・ウルリッヒ氏
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成長を続けるためには「今後は、自動運転が出てきて、自動化も進み、人が働く必要が減っていく。空いた時間を創造的なことに当てたり、生活を楽しんだりと変化が出て、消費も増える。技術革新と消費を組み合わせれば、中国は世界経済を加速させることになる」とした。

コンサル大手のマッキンゼーでグローバルマネージングパートナーを務めるケビン・スニーダー氏は、やや悲観的な見方を示した。

マッキンゼーのケビン・スニーダー氏
マッキンゼーのケビン・スニーダー氏
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スニーダー氏は「今後も経済状態は悪くなるだろう。貿易戦争よりも、もっと基本的な変化が起きている。少子高齢化や環境問題、ポピュリズムの台頭などの挑戦を受けている。
悲観的ではあるが、世界は中国市場を必要としている。結論を下すのはまだ早い。ただ1つ言えるのは、不確実性はまだそこにあるということだ」とした。

会場の定員は405名だったが、会場前から多くの参加者がイベントを聴こうと集まり、中国経済への関心の高さをうかがわせた。

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