新しい政党の名前が「国民民主党」(略称:「国民党」)に決まりました。綱領や基本政策などについても合意に至りましたので、今週中にも、希望の党、民進党それぞれの党内での手続きを経て、正式に新党が発足する運びとなります。この節目にあたり、今の思いを述べたいと思います。
【反省とお詫び】
昨年の総選挙の際、民進党の衆議院議員は希望の党に合流して選挙を戦いました。小選挙区制度の下では、与党と野党の1対1の構造を作らなければ勝利は難しいため、民進党の衆議院議員が希望の党に合流することで野党の乱立を防ぎ、一気に政権交代を目指す大きな政治決断に基づくものでした。しかし、急な所属政党の変更は有権者に混乱を与え、仲間の多くは「変節した」などの批判にさらされました。そして、残念ながら、そのチャレンジは失敗しました。野党を一本化するための試みだったにもかかわらず、立憲民主党が誕生するなど、かえって野党の数を増やす結果にもなってしまいました。政治は結果責任です。まず、こうした経緯について深く反省し、国民の皆様にお詫びを申し上げなければなりません。
【自民党に代わる選択肢をつくる】
混乱は、今も続いています。しかし、「野党はもっとしっかりしろ」、「安倍政権を何とかして欲しい」といった声が毎日のように寄せられています。今、森友学園の国有地払い下げ問題、公文書改ざん、防衛省による情報隠ぺいなどの不祥事で、政治・行政に対する信頼が地に落ちているにもかかわらず、野党側に国民の期待を受け止める大きな塊(かたまり)がないからです。
だからこそ今、私たちは、自民党に代わって政権を担える選択肢を示さなくてはなりません。野党の地位に安住していてはならないのです。また、早ければ6月にも仕掛けられるかもしれない解散・総選挙にも備えなくてはなりません。
つまり、今回の新党結成は、一強多弱と揶揄される状況に終止符を打ち、かつ、右か左かといった二元論的な対立を乗り越え、社会全体を包み込む温かさをもった政治勢力の結集をはかるための第一歩です。
そのため、私たちは、立憲民主党をはじめとする他の野党の結集を呼びかけるだけでなく、安倍政権による権力の劣化を憂うる自民党内の心ある改革勢力との幅広い連携も念頭に置きながら、大きな政界再編を主導していきたいと思います。これが、新党を立ちあげる目的であり、私たちの歴史的使命だと考えます。
しかし、単なる数合わせでは、また国民の期待を裏切ることになってしまいます。そこで、新たな出発にあわせ、私たちの思いを綱領としてまとめ、そのベースにある基本的考え方を整理しました。
【根本理念としての「共生」】
まず、私たちが最も大切にしたい価値は、綱領に掲げた「共生」の理念です。今、世界中で社会の分断が広がっています。だからこそ私たちは、人間が個人として生きる存在ではなく、歴史的な時間軸、社会的な関係性、地球的な空間の中でのみ存在し得るとの自覚に立って、「共に生きる=共生」を新党の基本理念として高らかに掲げました。
第一に、私たちは、先人の努力と営みの上に生きる存在として、「時間的な共生」を重視します。つまり、私たちは、過去の世代が血と汗の犠牲を払ってつくりあげた基盤の上に生活し、その基盤を将来の世代に引き継いでいく歴史的存在であって、それゆえに、「未来に対する責任」と同時に「過去に対する敬意」を大切にします。
第二に、私たちは、他者との支え合いによって生きる存在として「社会的な共生」を重視します。私たちは、自分が、家族や友人、同僚、同じ地域や国に生きるすべての人たちによって生かされていることを自覚し、同時代を生きるすべての人に対する責任を引き受けます。また、日本は東京をはじめとした都会だけで成り立っているのではなく、多様な特徴を持った地方から成り立っており、都会は地方からエネルギーや食糧だけでなく人材の供給も受けていることを忘れず、地方の存在を重視します。
第三に、私たちは、自然環境の中に生きる人間として、「地球的な共生」を重視します。私たちは、人間が自然の生態系の中で生かされている地球的存在であることを自覚し、地球環境や生物多様性に対する責任を引き受けます。
【保守・リベラルの対立を乗り越え、国民生活に現実的に向き合う】
私たちは、こうした「共生」の理念に立脚しつつ、多様な価値観を寛容に受け入れます。よって、リベラル・保守といった単純な二項対立や、特定の主義主張に拘泥するのではなく、国や国民が直面している諸問題に対して現実的に向き合う「改革中道政党」として、具体的な解決策を示していきます。特に、私たちは、国民の生活に直結する経済政策や社会保障政策に最大限の力を入れていきます。私たちは、経済に強い新党を目指します。
【日本をアップデートする】
私たちは、「未来を先取りする改革政党」でありたいと思います。世界は驚くべきスピードで変化しています。日本には過去の成功体験に囚われている暇はありません。私たちは、錆びついたレールを磨くのではなく、未開の荒野に新たなレールを敷くつもりで改革に取り組まなくてはなりません。人工知能(AI)をはじめとしたテクノロジーの進歩は、従来のライフスタイルや、経済社会のあり方を大きく変えつつあります。
例えば、治らないと言われていたガンや認知症が革新的な薬や治療法で治ったり、ブロックチェーン技術を取り入れた地域通貨の発行で、地方が補助金に頼らず自立して経済を活性化させることも夢ではありません。こうしたことが可能になれば、少子高齢化や人口減少などの問題は恐れるに足りず、むしろ日本は人類史上最高の幸せと豊かさを手に入れる国になれます。
だからこそ私たちは、最新の科学技術の発展を官民あげて応援する生態システムを作り上げ、革新的イノベーションによって経済成長の実現や社会問題の解決を目指す「イノベーション・ニュー・ディール政策」を推し進めます。私たちは、最新のテクノロジーで、経済社会システムと人々のライフスタイルを次世代型へとアップデートしていきます。そのために、投資を促す大胆な規制緩和や減税・非課税策を講じていきます。
また、急速な労働力人口の減少が進む中、日本経済、とりわけ地域経済において外国人労働力が不可欠の要素になっている現状に正面から向き合い、定住を円滑に進める制度を整備します。
【責任ある再分配政策でくらしを守る】
今、世界中で格差や貧困が進んでいます。子どもの貧困が深刻な状態であるなど、日本も決して例外ではありません。そして、OECDの報告書にあるように格差は経済成長の阻害要因です。だからこそ、私たちは、政府の再配分機能を重視した政策を採用します。個人の自己責任に全てを押しつける立場はとりません。
ただし、そこに最新のテクノロジーを活用した効率的な配分の仕組みを取り入れ、行政コストのかからない効率的な政府を実現していきます。また、イギリスのユニバーサル・クレジットを参考にした基礎的所得保障制度(日本版ベーシック・インカム制度)を導入します。
当然、負担のあり方も逃げずに議論します。全ての人が、しかるべき負担の中で、しかるべき受益を受けるという、いわゆる一体改革的な考え方は、私たちが「未来に対する責任」を綱領に掲げている以上、避けられないアプローチです。持続可能な生活保障の制度は、人生100年時代には不可欠であり、私たちは、給付と負担のバランスのとれた政策をまとめあげ、政府に採用を迫るぐらいの堂々たる議論を展開していきます。
また、企業の経済活動についても、可能な限り活動の自由を尊重する一方で、「自分さえ良ければ何でも良し」と言う無責任な身勝手主義とは一線を画します。社会の中で、自己とともに他者をも尊重する「利他の精神」を重んじ、自らが引き受けるべき責任を真摯に受け止める「為すべきことを為す自由」を私たちは尊重します。したがって、労働者を単にコストとみなす考え方ではなく、人を大切にし、人への投資を重視する経営(「人本主義経営」)を後押しします。同時に、一部のグローバル企業などによる租税回避措置には厳しく対応します。
【現実的平和主義】
私たちは、日本が戦後ずっと追求してきた平和主義は、絶対に守り続けます。安倍政権のように、従来の憲法解釈を恣意的に変え、野方図に自衛権の範囲を拡大する立場はとりません。しかし同時に、厳しさを増す安全保障環境の中で、現実的な対応を示さなければ、安心して政権を任せてもらえる政党にはなれません。
実りある安全保障議論には、国民の間に、日本が希求すべき「平和主義」の中身や、自衛隊が行使する自衛権の範囲についての合意が不可欠です。さらに、ドローンや無人機による攻撃、あるいはサイバー攻撃といった全く新しい技術が登場している中、従来の安全保障政策で対応できるのかという問題意識にも応えていかなくてはなりません。
こうした要素を踏まえ、新党では独自の総合安全保障政策を取りまとめます。その際には、「近くは現実的に、遠くは抑制的に、人道支援は積極的に」との考え方を受け継ぎ、党内での具体的な議論を深めていきます。
また、アメリカが世界の覇権を握った「パックス・アメリカーナ」の時代が終わりを迎え、政治や経済の中心がアジアに大きくシフトしつつある時代を見据えて、日中韓、そして非核化が実現した北朝鮮も加えた北東アジアの新たな平和と繁栄のメカニズムを日本が主導して構築していかなくてはなりません。環境に配慮した道義的かつ持続可能な経済開発にも、日本が積極的な役割を果たしていきます。
【まちに出て、国民の声に耳を傾ける】
新党の綱領や基本政策を定めた以上、あとは、私たち一人一人が、マイクを握り、チラシを配り、死に物狂いで活動を行っていくしかありません。地方議員や党員・サポーターの皆さんと一緒になって、地道な活動を全国各地で始めます。厳しいスタートですが、全議員がもう一度、それぞれの原点に立ち戻り、まちに出て、国民に直接訴え、そして、国民の声なき声に耳を傾けていきます。
「国民が第一の政治」を実現するため、もう一度、ゼロからはじめます。がむしゃらに取り組みますので、どうか、よろしくお願いします。