1日12時間勉強して挑んだ国家試験に落ちて自信を喪失
「人生で一番勉強したのは専門学校時代です。国家資格を取りたくて、何カ月もの間、1日12時間は勉強していました」。そう明かすのは、動画クリエイター「東海オンエア」のメンバー、ゆめまるさん。いまやチャンネル登録者数200万人超えという日本を代表するグループだが、ゆめまるさん自身は、学生時代には将来に明るい見通しが立たず悶々(もんもん)とした日々を送っていたという。
「1日の大半を勉強に費やしてきたのに、試験に受かることができなかったんです。しかも、周りの友だちはみんな合格していて、落ちたのは僕ひとりだけ。正直、『なんで自分だけ……』と唇をかみ締めたし、合格に値するだけのモチベーションを保てなかったことを悔やみもしました」。失意から、受験については誰にも触れてほしくない日が続いたが、時がたった今、ようやく当時を振り返れるようになったという。
前向きになれた理由のひとつが、動画クリエイターとしての活動を展開するうち、徐々にカメラの前で自分らしさを出せるようになったこと。「活動をはじめた当初は撮影に不慣れで、カメラが回っているとすんなり言葉が出てこないことがしょっちゅうでした。しかも、国家試験に落ちたことで自信を失くしていた時期だったので、なおさらポジティブになれなかったんです」。
その深層には、「また失敗したくない」という恐怖心もあったのだろう。カメラの前に立つと、「なにか面白いことを言わなきゃ」と焦る一方だったという。
しかし、焦れば焦るほど自然体でいることは難しくなるもの。遂には見かねた先輩から、「焦らずのんびりやればいいんだよ」と声を掛けてもらうこととなったというが、これがゆめまるさんにとって大きな転機となった。
肩の力を抜いて楽しめば、自然と評価もついてくる
「それまでの僕は、自分で自分の首を絞めていたんだと気付いたんです。同時に、『せっかく仲間たちと好きなことに没頭できているんだから、この時間をもっと楽しもう』と思えるようになった。そうすると自然と肩の力が抜けて自分らしさを発揮できるようになったし、周りの評価も変わりはじめました」。
「評価」の一つは視聴数。「数字として可視化されるとわかりやすいし、自分ががんばった分だけ結果がついてくると、さらに上を目指そうと思えるようになりました」。
身近な人のアドバイスや見ず知らずの人の応援によって、ネガティブな気持ちから脱却して前を向けるようになって以来、ゆめまるさんの中では、「自分も誰かの支えになりたい」との思いが際限なく膨らんでいる。
「困っている人を助けたいという気持ちは昔からあったものの、若いときは自分に何ができるかを見いだせずにいました。たとえば、東日本大震災発生当時もそう。高校生だったから現地に駆けつけることもできず、自分の無力さを感じました」
疲れている人、悲しんでいる人を笑顔にできたら、こちらまで気持ちが温かくなる
しかし大人になった今なら、自分でスケジュールを調整して現地に足を運ぶこともできる。そこで2018年には、西日本豪雨の被災地となった岡山県でボランティア活動に参加。炊き出しや掃除にいそしむ中、現地に暮らす人々から「ありがとう」の言葉や安堵(あんど)の笑顔を向けてもらえたことを思いだすと、今でも胸が熱くなる。
「自分のためではなく、誰かの幸せのために尽くすことで、こんなにも心が温かくなるのだと実感したのは、あのときが初めてかもしれません」。
とはいえもちろん、日常の中のささいな出来事で、周囲の人を笑顔にしてきた経験は数えきれない。
思い返すと、通学で使う駅で出会うサラリーマンやOLを笑わせようとしたこともたびだびあった。「朝の駅ですれ違う人のほとんどが、疲れているように見えたんです。だから少しでも笑ってほしくて積極的に挨拶していた時期があったんですけど、反応してくれる人はごくわずか。大抵無視されて終わりでしたけど、たまにでも笑ってくれる人がいるとうれしかったですね」。
疲れた表情や悲しい顔をしている人を見かけるととにかく気になる。見知った顔であろうがそうでなかろうが同じことで、最近では、難民に関するニュースを見かけるたびに心が痛む。
不当な差別に苦しんでいる人のために、声を上げられる自分でいたい
「今回の「10億円会議キャンペーン」参加にあたって、『馬鹿でかい家を建てて難民を受け入れる』とツイートさせてもらいましたが、その根底には、一人でも多くの人に毎日安心して暮らしてほしいという願いがあるし、人間が差別されることがあってはいけないという思いもあるんです」。
差別に関しては、ゆめまるさん自身が海外を旅した際にも経験したこと。英語に堪能ではないため、細かなニュアンスまでは理解できなかったものの、アジア人だと後ろ指をさされていることだけは理解できたし、「同じ人間なのにどうして優劣をつけるのだろう?」と疑問に思わずにはいられなかった。
また、学生時代にも同じような経験をしたことがあった。「当時、ビアンの女の子と仲が良くて、よく一緒にごはんを食べに行っていたんですけど、あるときふたりでたまたま入ったご飯屋さんで恋愛話に花を咲かせていたところ、隣に座っていた年配の男性が『お前、レズなのかよ!』って絡んできたんです。だけど当時の自分は勇気が足りず、面と向かって注意するのが怖くて、『もう行こうよ』と店を出ることしかできなかった。そのことは今でも心に引っ掛かっているし、これから先同じようなことが起こったときには、ひるむことなく相手に立ち向かいます!」
言うまでもなく、相手に非があることを認めさせるためには説得力が必要だ。そのためにも、「まずは“知ること”がとても大事。LGBTにしても難民にしても、自分とは違う境遇に置かれているのだから、相手が何に悩み、何に傷ついているかを真に理解しようと思ったら、親身になって耳を傾けることが不可欠です。一生懸命理解しようという気持ちが相手に伝われば、相手からの信頼も得られるし、よりよい関係を築いていけると信じています」。
自分とは異なる相手なのだから、お互いが思いやりの心を持って相手に寄り添うことはとても大切。その意識を持つ人が増えるにつれ、世界にはびこる差別はなくなっていくはずとゆめまるさんは話す。
動画クリエイターとして、ひとりの人間として、自分にできることを日々考えている
「そのために僕にできることはなんだろう? と日々考えています。動画クリエイターとして、たとえばLGBT当事者に話を聴きに行って、それを世間に発信することもその一つかもしれない。だけど、発信したことによってひどい言葉を浴びせられる可能性があるのもまた事実だから、どんなふうにみんなに伝えていくかは慎重に考えなければいけないなと思っています」。
もちろん、「動画クリエイターとしての自分」以外にもできることはたくさん。その一つが、身近にいる誰かを笑顔にすることだし、自分だけでなく、多くの人にそれを実践してほしいと心から願って止まない。
「キャンペーンに参加することによって、今一度、自分の周りにいる人を笑顔にすることの尊さについて考えてもらえたら僕もうれしいです。みんなが幸せでいられる社会は、自分たちの手でつくっていくもの。僕は、『幸せな社会をつくりたい』というすべての人を応援しているし、僕もその一員として、一緒に理想的な社会を作っていきたいと思っています」。
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