読売テレビのニュース番組、保険証の提示や胸を触って性別確認。「人権感覚の欠如」とコメンテーター激怒

怒りの声をあげたのは「かんさい情報ネット ten.」に出演する作家の若一光司氏。ネットで賛同の声が集まっている
「かんさい情報ネット ten.」の公式サイト
「かんさい情報ネット ten.」の公式サイト
HuffPost Japan

読売テレビ(大阪市)のニュース番組「かんさい情報ネット ten.」が5月10日夕、見た目で性別がわかりづらい一般の人に対し、リポーター役の芸人が保険証を提示させたり、胸を触ったりするなどして男性と確認する企画を放送した。

これに対し、コメンテーターとして出演していた作家の若一光司氏が「許しがたい人権感覚の欠如。そんなもの、よう平気で放送できるね」などと激怒。生放送中のスタジオは一時、沈黙が広がった。

Twitterなどソーシャルメディアでも怒りの声が上がっている。

生放送中、怒りの声をあげた若一さん(左)=番組公式Instagram

読売テレビ関係者や、番組を見たとみられる人たちがソーシャルメディアなどに投稿した情報によると、問題が起きたのは、番組後半で放送した「迷ってナンボ!」というコーナー。

お笑いコンビ「藤崎マーケット」が街中に繰り出し、様々なことを調べる企画で、この日は、大阪・十三にあるお好み焼き店の店員から「性別がわからない常連客がいる」と頼まれ、その人物に確認するという内容だった。

外見からは性別がわかりづらいこの常連客に対し、藤崎マーケットの2人は「失礼かもしれないですけど、性別ってどちらなんですか」と質問。

客は「男ですよ」と答えたが、藤崎マーケットは「純粋な男?女の人が好きな男?」などとたたみかけた。

さらには性別を確かめるため、客に保険証を提示させたり、胸の膨らみ具合を手で触ったりした。

VTRが終ったあと、若一氏は次のように怒りをあらわにした。

「あのね、男性か女性かどっちかという質問のやり方、これは許しがたい人権感覚の欠如ですね。個人のセクシャリティーにそういう形で踏み込むべきじゃないです。極めて……。そんなものよう、平気で放送できるね。どういう感覚ですか、これ。報道番組として。ちゃんと考えろよ」

「たとえご本人がテレビに出ることをご了解してたとしても、個人のセクシャリティーに対してそういうアプローチをすること自体が人権感覚、人権意識にもとります」

これに対し、ともに出演していた中谷しのぶアナウンサーや沢口実歩キャスター、小島康裕・解説デスク、菊間千乃弁護士らは沈黙した。

Twitterでは若一氏の発言に賛同が集まる一方、ほかの出演者や番組制作陣に対して批判が相次いだ。

ハフポストは読売テレビに電話で取材を試みたが、応対した警備員が「今日は土曜日なので広報担当者は休みです」などと答えた。

一方、読売テレビの番組制作関係者はハフポストの取材に対し、企画ができる流れをこう明かした。

「ニュース番組という看板を掲げていますが、後半は情報系の内容が主体です。下請けの番組制作会社が取材や編集をし、番組側に納めます。これをテレビ局本体の情報系番組の経験がある担当プロデューサーがチェックします」

その上で、この関係者はこう懸念を表明した。

「常連客本人の了承はもちろん取っているでしょうが、性別の多様性が広く認識され、それに伴う差別に注意を払うことが常識となりつつある昨今、本人がオーケーだからといって放送してもいいということはありえません。こうした放送を見たセクシャルマイノリティーの方々がどう思うか、よく考えなければいけないと思います」

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