総選挙が終わり、あいかわらずの低い投票率を嘆く声があちこちで聞こえます。
今回の投票率は、戦後2番目の低投票率で53.68%と報じられています。ちなみに10代の投票率はこの通り。
18歳が投票率は50.74%なのに比べて、19歳は32.34%と大差があります。
その差18.4%です。1歳異なるだけ投票率がこれだけ異なる国って先進国で他にあるのかな...
18歳選挙権が実現したのは昨年2016年の参議院選挙からでした。そういうわけで去年の10代の投票率と今年の投票率を比較してみるとこのようになりました。
10代の投票率は低下。19歳は約10%も
去年も今年も10代全体の投票率は、全世代の投票率よりも低いことがまずわかります。
18歳の投票率は昨年が51.28%であったので、0.54%の減少。19歳の投票率は、昨年は42.3%であったので、今年は9.96%と約10%も投票率が下がりました。
データの出典元である毎日新聞の記事によると、19歳で投票率が下がった理由については
総務省幹部は「19歳は住民票を実家に残したまま大学や就職で親元を離れることが多いためではないか」という見方を示す。
としています。
スウェーデンだと個人番号(マイナンバーのようなもの)カードがあるだけで、全国で場所を選ばずに投票できます。行政上の理由だけで民主的権利を行使することが困難になるという日本の状況は普通ではないでしょう。
今現在、公開されている投票率のデータは限定的で全体の年代別投票率はまだ出ていません。しかし、当確した政治家と年齢は公開されているのでデータを集めて分析してみました。
- 10代が投票できるようになってから政治家も若返ったのか?
- 衆議院の平均年齢は何歳?
- 最も若い政治家は? 若手の政治家はどれだけいるの?
- 最も年齢が若い政党はどこか?
そんな視点でデータを舐めまわしてみました。
新・衆議員の平均年齢は? 最も若い政党は?
まず今回の衆議院議員選挙で選ばれた議員の年齢をみてみましょう。
最年少の議員は自民党の鈴木貴子議員で、31歳です。ちなみに最年長もまた自民党の議員で、79歳の伊吹文明議員となりました。全体の平均年齢は54.74歳です。(中央値は55歳)
続いて、それぞれの政党がどれだけ若いのかみてみます。結果から提示するとこの通り。
最も衆議院議員の平均年齢が低いのは、希望の党で49.4歳です。しかし30代以下の議員の割合は14%で、トップの維新の党の18.2%に劣ります。これをランキングにすると、
30代以下の衆議院議員の割合が多い政党ランキング
1位:日本維新の会 (18.2%)
2位:希望の党 (14%)
3位:立憲民主党 (7.3%)
4位:自民党 (6.7%)
5位:公明党 (3.4%)
6位:社民党、共産党 (0%)
ということになります。公明党は充実した若者政策を提案していますが、30代以下の衆議院議員の割合が3.4%しかいいないのは意外ですね。与党自民党もそうですが、社民・共産の高齢化はもっとすごいですね...
若手の政治家は増えたのか?
最後に全衆議院議員の年代別の割合をみてみましょう。全衆議院議員を10代ごとで区分するとこのようになりました。
今回選ばれた衆議院議員で最も年齢層が多いのは、50代で33.1%です。次が40代で26.9%。その次に60代、70代、そして最後に30代の7.1%と続きます。特筆すべきは20代の政治家がいないことです。衆議院は25歳で出馬できるのに...
政治家って市民の声を代弁するわけですから、それぞれの年齢層のボリュームに応じた割合の政治家がいないといけませんよね。これではまるで、日本に20代と10代の若者がいない国のようにしかみえません。高齢化が深刻化するにつれて、高齢者の票が多くなるので自然と政治家や政策も、高齢者を意識することになり、若い世代が気づいたら政策の対象から排除されることになってしまいます。
これは何も日本だけでなく欧米先進国とも共有している課題で、そうならないために積極的に若者の声を政策に反映させていくという若者参画政策をヨーロッパでは90年代から推し進めてきました。こちらの記事で、日本の若者参画政策の現状を分析しましたが2010年前後はよくなって、それから後退しているようにみえます。
それが今回の衆院選で如実に現れたことになりました。18歳で投票できるようになったのに皮肉ですね。
加速するシルバーデモクラシー
ちなみに30代の「若手」衆議院議員の数は増えています。高橋亮平さんのこちらの記事によると前回の衆議院議員の数は24人なので、今回は9人増の33人です。しかし相変わらず20代、そしてもちろん10代の政治家も1人もいない国なのです。
2016年に作成した以下のグラフでは、北欧、ドイツの全世代の投票率、30歳未満の若者の投票率、そして国会の若い政治家の割合を比較しました。
例えば、30歳未満の若い政治家の割合が6%だったドイツと比べると、日本は若手の政治家の割合がドイツの10分の1の0.6%だったのです(2016年当時)。日本の参議院にも20代の政治家がいないのでこの貴重な0.6%が今回で、ゼロになってしまいました....
ちなみにスウェーデンの先日、取材の通訳を務めた日本農業新聞のこちらの記事によると、スウェーデンの国会議員の平均年齢は45歳で国会議員の1割が30歳未満ということです。(上記のデータの元であるこちらの資料の数字は2010年時点のものなので数字が違いますね)
エストニアでは地方選挙で16歳でも投票できるようになり、アメリカのカンザスでは州知事に16歳が立候補..しました。先日もスウェーデン視察の時に25歳の女子大生が地方議会で普通に政治していました。オーストリアでは31歳の首相が輩出されましたが、これは日本の最年少の衆議院議員と同じです.....。
18歳で投票できるようになっても、その声を反映させる同世代の若い政治家が皆無な国、日本。若者の政治参加が声高に叫ばれ、主権者教育や政治教育が盛んに実施されるようなったことは評価できます。また様々な若者団体がより政治活動をすることになったのは、賛否両論はあっても日本の「若者の民主主義」を育てる上で不可欠であり、前進しているといえるでしょう。
僕は、参政権の行使などの公式的な(フォーマル)なチャンネルのみならず、非公式的な(ノンフォーマル)なチャンネル(若者団体、ユースセンター、ユースワーク、若者支援など)での若者参画の機会の拡充を訴えてきましたが、それどころではないくらいにますます若者の声が反映しづらい世の中になってきています。
スウェーデンの若者市民社会庁が作成した資料では、投票は「若者の政治参加の最下位」に位置付けられています。
梯子の下の方に行くほど政治参画の度合いが低いと言えます。選挙での投票は英語では「Voting」といいますが、「Voting」は政治参加の度合いでいうと実は1番下から2番目に低いものです。今、日本での選挙に関する教育や模擬投票等の事業は投票という政治参画の度合いが非常に低い段階をゴールと捉えて行なわれているものです。「若者の政治参画の様子」を見ると分かるように投票はゴ ールではありません。その事実にすら気付いていない人があまりに多いというのが現状です。
もちろん模擬投票をすることは、投票を身近なものとするために大切な取り組みと考えます。
若者が社会に影響を与えられるようにすることが、若者参加の本質的な目的です。だから投票だけでない、若者の影響力を高めるために若い世代の声を代弁する政治家を増やす必要があるのです。
ちなみに模擬選挙ネットワークの林大介さんはこちらのブログ記事対してこのようにコメントいただきました。
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(2017年10月29日「Tatsumaru Times」より転載)