2018年3月20日、超党派で構成される「若者政策推進議連(仮称)」発足に向けて、自民党・牧原秀樹衆議院議員をはじめ与野党の国会議員と主要若者団体を集めた事前打合せが開催された。
若者団体には、若者政策推進議連の事務局を務める予定の日本若者協議会(代表理事:室橋祐貴)をはじめ、特定非営利活動法人YouthCreateや一般社団法人リビジョン、学生団体ivoteなど、今まで若者の政治参加や主権者教育をリードしてきた団体を中心に計23団体が参加。
事前打合せでは、議連発足の経緯説明や若者側から議連の検討課題に関する要望など意見交換が行われた。若者側からは「被選挙権年齢の引き下げ」や「供託金の引き下げ」などに加え、証拠に基づく政策立案(エビデンス・ベースド・ポリシー・メイキング=EBPM)、機械が判読できる形での選挙などの情報公開、ピア・エデュケーションの推進などが提言された。
議連において具体的にどういう政策の議員立法を目指すかは今後検討していくことになるが、大きくは、若者の政治参加など(直接的に)若者に関する政策や、社会保障や財政など(もっと広い範囲での)若者が責任世代として成し遂げるべき政策を検討していく。
若者と一緒に進める議連
この議連(議員連盟=議員が何らかの目的を持って結成する会の総称)のユニークな点は若者と一緒に政策を考える点にある。
18歳選挙権が実現した2016年以降、若者の政治参加が強く叫ばれてきたが、その内容のほとんどが「どうしたら若者が投票に行くのか?」という点であった。しかし、'''本来問うべきは、「どうすれば、若い世代の意見を政治に反映できるのか?」である'''。投票はその一つの手段でしかない。
もちろん投票に行くことも重要であるが、若者の有権者数は相対的に少なく、仮に高齢者層と同じ割合で投票に行ったとしても、若年層の影響力は乏しい。さらに今後少子化が続けば、その影響力低下は加速する一方である。
2014年衆院選時点での年代別投票状況。総務省選挙関連資料をもとに筆者作成
また、選挙以外の政治への意見反映の場、ロビイング(陳情)や有識者会議などにおいても、各業界のエグゼクティブ(経営幹部)層が占め、そのほとんどが50歳以上だ。10代〜20代(もしくは30代まで)の若者の声が政治に届く機会は決定的に乏しい。
そうした現状を打破するため、日本若者協議会では昨年から各政党に若者と一緒に政策を考える場=超党派議連の立ち上げを呼び掛け、今回の発足に向けた事前打合せ開催に至った。
有権者だけではなく、若手の政治家も少ない。総務省選挙関連資料をもとに筆者作成
スウェーデンやドイツには公的に若者の声を聞く仕組み
当日の意見交換の場でも、「'''こうした若者のための議連が今までなかったのがおかしい'''」という意見もあったが、日本ではこうした若者政策全般を議論・検討していく議連は存在しない。
一方、欧州ではこうした仕組みが公的に整備されている。
スウェーデンでは、若者に影響を及ぼす政策を実施する際は、若者の声を聞くことを義務付けた「若者政策法」(1994年に成立)が存在し、「全国若者団体協議会(LSU)」が全国の若者団体から意見を集約し、政府にロビイングを行う。
またドイツにおいても、「ドイツ連邦青少年連合(DBJR)」が全国の若者団体から意見を集約し、政府にロビイングを行う。こうした組織は国から予算が出ており、持続可能で十分な規模の活動ができるようになっている。
筆者が2017年11月に視察に訪れたドイツ・ポツダム市にあるブランデンブルク州青少年連合では、スタッフが8人存在し、州の青少年団体約30団体を束ねる。そして、州などが年間約190万ユーロ(約2.5億円)もの予算を支出し、そのうち約5380万円は青少年連合が使い、残り約2億円は会員団体に渡す。
今後は正式に議連発足後、日本若者協議会で若者の意見を集約しながら、国会議員と議論し、具体的に政策を検討していくことになるが、「若者の意見を(建前上)聞いた」形にならないよう、若者の意見に沿ったかつ実効力を持った政策立案が求められる。