はじめまして!
駅ナカ書店のブックスキヨスク・ブックスタジオ(JR大阪駅・JR新大阪駅・JR森ノ宮駅・JR尼崎駅・JR姫路駅)でビジネス書のチーフバイヤーを担当しております桑野禎己と申します。
書店員、本屋さんで働くようになって15年。
本屋のおにいちゃんから、本屋のおっさんになりました。
中学生のころからベースを弾いていて、バンドでごはんを食べられたらなぁとバンド活動していた二十歳ごろ、せっかくいいと思える曲を作っても、歌詞が最悪やったらぜんぜんダメちゃうんかと思いました。
それで、いい詩を書くには、いい詩がある本屋さんにいればいいと思い、本屋さんのアルバイトに応募しました。
そこから15年、今はもうバンド活動はしておりません。
本屋さんの仕事と相性がよかったのか、長い間、僕は本屋さんとして生活しています。
棚を作ること、棚を作って売れていくことに、大変な魅力を感じました。
本屋さんの棚はライブでナマモノ。
朝に生まれた棚は、夜には死んでいるかもしれない。
手を入れ続けなければいけない感覚。
完成したと思ったら腐るみたいな。
とりあえず今はこれでいいみたいな。
なんかもうそんな感じ。
恥ずかしいんでやめます。
僕が紹介させていただく本は、アメリカの哲学者であり、詩人であり、思想家でもあるラルフ・ウォルドー・エマソンの『自己信頼』(海と月社)です。
エマソンの思想・哲学は詩人宮沢賢治や喜劇王チャップリンなど、数多くの表現者たちに自分を信じ抜く勇気を与えてきました。アメリカ前大統領オバマさんも、エマソンの言葉を座右の言葉としているそうです。
「自分の考えを信じること、自分にとっての真実は、 すべての人にとっての真実だと信じること」
ドラゴンクエストに天空シリーズの装備があります。
僕にとってエマソンの『自己信頼』は天空の盾です。
僕を守ってくれる盾です。
本屋さんの仕事も、子育ても、今日着る服も、誰かにかけた言葉も、いま決断して実行したことも、正直、どれが正解なのかわかりません。
僕はバイヤーなので、各店舗を巡回します。店舗のビジネス書の売上に貢献できるように、担当者や店長と話し、棚を触り、商品を動かしPOPを描いたり、出版社に発注をかけたりします。でも、どれも正解ではないのかもしれないのです。
明確な問いがあっても、明確な答えはないかもしれない感じ。
「自分の仕事にまごころをこめ、最善を尽くすなら、
心は安らぎ、晴れやかになるが、
そうでない言行からは心の平安は得られない。
才能にも見捨てられ、創造も希望も生まれないだろう」
かなり勇気づけられます。
「いま考えていることを断固として語りたまえ。
そして明日は、たとえ今日いったことのすべてと 矛盾していても、
そのときに考えていることを 断固として語るのだ」
予測不能な状態、不確実な時代などといわれています。
なんかいろんなもんが加速しています。
自分を取り巻く環境も変化します。
便利で喜ばしいこともありますが、しんどいときもあります。
そんな時に『自己信頼』の言葉を 胸におさめておくのはどうでしょう。
黒々と渦巻く雲間にさす、ひとすじの光です。
最後に、
僕とこの本をつないでくれたある出版社の営業さんは、もうこの世にはいません。
彼がいなければ僕の本屋さん人生は 違った別のものになっていたでしょう。
彼に最大の愛とリスペクトを。
恥ずかしいんでやめます。
連載コラム:本屋さんの「推し本」
本屋さんが好き。
便利なネット書店もいいけれど、本がズラリと並ぶ、あの空間が大好き。
そんな人のために、本好きによる、本好きのための、連載をはじめました。
誰よりも本を熟知している本屋さんが、こっそり胸の内に温めている「コレ!」という一冊を紹介してもらう連載です。
あなたも「#推し本」「#推し本を言いたい」でオススメの本を教えてください。
推し本を紹介するコラムもお待ちしています!宛先:book@huffingtonpost.jp
今週紹介した本
ラルフ・ウォルドー・エマソン『自己信頼』(海と月社)
今週の「本屋さん」
桑野禎己(くわの・よしき)さん/ブックスキヨスク チーフバイヤー
どんな本屋さん?
桑野さんがバイヤーを務める「ブックスタジオ大阪店」は世界で3番目の乗降客数を誇る大阪駅の御堂筋北口すぐに位置し、朝早くから夜遅くまで客足が途絶えることのないお店です。ビジネスマンに向けた書籍も豊富ですが、特徴的なのは若い女性向けの書籍売り場。流行に敏感なお客さんにも喜んでいただける最新の売れ筋が揃ってます。
(企画協力:ディスカヴァー・トゥエンティワン 編集:ハフポスト日本版)