政治、経済、学術など各分野における指導者層の交流促進を目的とした独立・非営利団体「世界経済フォーラム」(WEF)は1月10日、「グローバルリスク報告書2024年版」を発表した。
最大の短期的リスクに「誤報と偽情報」、最大の長期的懸念に「異常気象と地球システムの危機的変化」を挙げている。
改ざんされた情報と社会不安の結びつき
報告書は、今後2年間にアメリカなど主要経済国で選挙が実施されることを踏まえ、「改ざんされた情報と社会不安の結びつきがリスクの中心になる」と指摘。
誤報や偽情報に関するデジタル・リテラシー・キャンペーンを通じて、個人や国家のレジリエンス(脅威にうまく適応していく)を強化することなどを求めた。
また、調査に参加した専門家は、「AIの飛躍的な進歩は、組織のリスク見通しを根底から覆すものであり、多くの企業は誤情報、仲介者の排除、戦略的誤算から生じる脅威への対応に苦慮している」と分析。
その上で、「この急速に進化するリスク展望を乗り切るためには、組織、国、国際レベルでレジリエンスを構築するための絶え間ない努力と、官民の協力拡大が必要」と見解を示した。
グローバルリスク報告書は、1400人を超えるグローバルリスク専門家や政策立案者、業界リーダー(グローバルリスク・コンソーシアム)に対して行った調査結果をもとに作成。世界が直面するリスクへの認識を高め、合意を形成して備えることを目的としている。
なお、グローバルリスク・コンソーシアムの3分の2が「今後10年間に多極化または分断化した秩序が形成され、中堅国や大国が新たなルールや規範を争い、設定し、また強制するであろう」と予測している。
世界経済フォーラムの取締役・サーディア・ザヒディ氏は、同報告書を受けて「不安定な世界秩序は両極化する言説と不安、異常気象の深刻な影響、経済の不確実性を特徴とし、誤報や偽情報を含むリスクを加速させている。世界の指導者たちは短期的な危機に対処するだけでなく、より強靭で持続可能かつ包括的な未来に向けた基盤を築くために団結しなければならない」と述べた。