6月20日は「世界難民の日」でした。毎年、この日に合わせて国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)が2017年末時点での「世界における強制移住の動向」という報告書を発出しています。このブログでは、その報告書をサラッと読んで私の印象に強く残っている点を共有したいと思います。
世界で強制的移住状態にある人の大多数は「国内避難民」
報告書によれば2017年末現在、迫害や紛争また一般化された暴力によって家を追われた人々の総数は約6850万人で、前年から290万人の増加、10年前の1.5倍となりました。そのうち難民は2540万人とされていますが、この「難民」には、1951年の難民条約上の定義に則って「難民」と認定された人だけでなく、540万人のパレスチナ難民に加え、OAU条約、カルタヘニア宣言、またその他の補完的保護や一時的保護政策などに則って「難民に准ずる者」という地位を与えられている人(=厳密に言えば「難民ではない人」)も含まれていますので、十分に注意が必要です。
また全体の約6割にあたる4000万人が国内で避難生活を余儀なくされているそうです。これは、人々が出来る限り国内に留まりたいと思っているからなのか、あるいは国境管理がより厳しくなり他国に逃れることが難しくなっているからなのか、検証が必要でしょう。
難民の五大出身国はシリア、アフガニスタン、南スーダン、ミャンマー、ソマリアで、2017年中に新たに家を追われた人々の多くがミャンマー、コンゴ民主共和国、シリアの出身でした。とりわけ約100万人に及ぶロヒンギャと称する人々はどこの国からも「自国民」と見做されない無国籍者で、解決の糸口が見つかっていません。
世界で最も難民に「寛容」なのはヨルダンとレバノン
人口比率で最も多く難民(パレスチナ難民を含む)を受け入れているのは、ヨルダン(住民3人に1人が難民)とレバノン(住民4人に1人が難民)、絶対数で言うと、350万人の難民を受け入れているトルコが世界最多です。またUNHCRが支援している難民のうち、85%がいわゆる途上国によって受け入れられているとのこと。(ドイツを除き)国がより豊かになっていくほど、困っている人に冷たくなるかのようなのは、なぜでしょう?
2017年に世界最多の庇護申請を受け付けたのはアメリカ
昨年170万件の新規庇護申請が世界でなされたそうですが、そのうち33万件強がアメリカ、約20万件がドイツ、約13万件がイタリアにおける庇護申請でした。アメリカにおける庇護申請数の増加は、ベネズエラなど中南米出身者が主な理由とのことですが、昨今物議を醸しだしている国境地域での「強制収容政策」がすぐに想起されます。と同時に、2017年の間に2100人ものアメリカ人がカナダで庇護申請をしたというのもなかなか印象的です。
2017年の間の新規庇護申請者のうち最も多いのはアフガニスタン出身者でした。興味深いのは、同じアフガニスタン出身者でも庇護申請を受け付ける国によって難民認定率が著しく異なることです。例えば、オーストラリア、オーストリア、フランス、イタリア、スイスはアフガニスタン出身の庇護申請者のうち80%近くを難民認定しましたが、デンマーク、ノールウェイ、ブルガリアでは認定率は20%にとどまっています。世界全体で見ると、約半数の新規庇護申請者がいずれかの国で何らかの保護(難民認定か補完的保護)を与えられました。報告書の45ページはとりわけ、日本における保護率が著しく低い(1%未満である)ことに言及しています。
第三国定住:減る人数と増える国数
私の専門的研究テーマである第三国定住については、UNHCRが「第三国定住が必要」と見なす難民の数が120万人と増える一方、(特に米国トランプ政権による政策の影響で)2017年は世界における第三国定住の機会は大幅に減少しました。と同時に、第三国定住で難民を受け入れる国の数は過去最高レベルの35カ国まで増えました。より多くの国が難民を第三国定住経由で受け入れることに積極的である傾向を示したものでしょう。2017年中に難民を第三国定住で受け入れた国は多い方から、アメリカ(33400人)、カナダ(26600人)、オーストラリア(15100人)、英国(6200人)、スウェーデン(3400人)でした。
日本にいる難民、日本出身の難民
最後に、報告書の巻末についている統計資料によると、2017年末現在で、日本にいる難民の数は2191人、庇護申請中の人が31204人、また日本出身の人で、海外で難民と認められたのは50人、庇護申請中の人が105人となっています。これら一つ一つの数字をUNHCRが一体どのように算出したのか、非常に興味深いです。