医師の働き方改革「処遇改善がなければ改善しない」 予算委員会で論戦に

3月4日の参議院予算委員会では、国立大学病院で働く医師の給与処遇について厳しい言及がなされた。
櫻井充氏(左)と柴山昌彦文部科学大臣(右)
櫻井充氏(左)と柴山昌彦文部科学大臣(右)
参議院中継ページより

3月4日の参議院予算委員会で、柴山昌彦文科大臣は国立大学病院の医師の兼業率が77%〜100%だったと明らかにした。「医師の働き方改革」についての櫻井充委員(国民民主党)の質問に答えた。 

厚労省は一般勤務医の残業時間上限を「年960時間」に定める一方で、研修医と地方医療従事者は特例として「年1860時間」とする案を2月20日に提示している。特例は、2024年の4月から2035年度までの期間限定で適用される予定。

櫻井氏の質問はこの厚労省案を受けたもの。医師でもある櫻井氏は、ほとんどの医師が兼業をしている実態を指摘。「大学の職員の処遇を改善しない限り、長時間労働は改善しない」と述べて、抜本的な解決のために国立大学運営費交付金等の増額が必要だと要請した。

臨床研修の期間を終えた後、大学病院の医局で進学し博士課程の「大学院生」となる医師は多い。研究に加えて大学病院で外来や病棟患者の診療にもあたることになり、実質的にアルバイト(兼業)が必須となっている状況がある。

実際の質疑内容(概要)は以下の通り。

櫻井充氏:大学で働いている医者のバイトの件数って一体どのくらいですか。

柴山文部科学大臣:多くの医師が、特に国立大学病院で働く医師の多くが、兼業を行なっているという現状は承知をしております。実はこの問題につきましては、委員からご指摘を頂き、実態調査を行わせて頂きました。兼業をしている教授の率は、数大学を抽出しての調査(※1)ではありますが、77.3パーセントから100パーセントでありまして、主な兼業先は地域の他病院の非常勤医師や他大学の非常勤講師ということでございました。

※1 答弁後、ハフポストが文科省に問い合わせたところ、6つの大学に関する調査とのこと。

櫻井氏:なぜ、教授だけではなく一般の医師も、バイトをしなければいけないのでしょうか。

柴山大臣:主な理由として、国立大学病院で働く医師の給与が、民間病院などで働く医師の給与と比べて低い現状があります。例えば、開設者別常勤医師一人当たりの平均給与は、平成28年度のデータで、一般の医療法人が約1520万円に対し、東大病院などでも約1000万円でした(※2)。文科省としては、各大学における医師・大学院生の処遇について、兼業の背景や副収入の実態を踏まえつつ、病院での勤務実態に応じた手当を措置するなどのケースもありますので、そうした事例を促進していただけるよう、適切に対応していきたいと考えております。

櫻井氏:すみませんが、その統計、絶対間違ってますよ。これはバイトをしている額を含めただけの話であって、大学から受け取っている給料をちゃんと出してください。1000万円なんかもらってませんよ。そういう額をもらっているのは教授だけ。若手はどうですか。今大学院生っていう話がありました。(大学院生は)年間53万5000円の授業料も払っているんですよ。それなのに大学から給料をもらってないじゃないですか。こんな数字絶対おかしいですよ。もう一回答弁してくださいよ。

柴山大臣:確かに今紹介させて頂いた事例は、全ての職員ではありません。特に、正規の職員と助手等の給与格差ということが指摘をされている実態は承知をしております。

櫻井氏:私が大学で働いていた時、(給料は)15万円でした。今多分20万円くらいだと思いますよ。大学院生は、先ほど申し上げた通り、給与を大学からもらってません。こういう人たちが今約1万人いるんですよ。この処遇を改善してくれない限り、働き方改革は改善しないと思うんです。大学への運営交付金は、毎年ずっと減額されていて給与は上げられる環境にないんですよ。ですから、まず大学の職員の処遇を改善して頂かない限り、この長時間の労働時間は改善しないと思いますが、この点についていかがですか。

柴山大臣:正規職員と非正規職員との間の不合理な待遇があれば、必要な見直しがしっかりと行われなければといけないと考えております。先ほど申し上げた諸手当の工夫も、しっかりと横展開をさせて頂きたいと思います。その上で今、委員からご指摘がありました、運営費公営金、は、独法化に伴って漸次減らされてきている実態がございます。麻生(財務)大臣ともしっかり折衝し、2019年度予算案で国立大学運営費交付金については、対前年と同額の1兆971億円を確保しておりますし、施設整備費もプラス70億円確保させて頂きました。

櫻井氏:現状が低いんですよ。現状が低かったら相当増額してもらわないと困ると思いますけど、どうですか。

柴山大臣:文科省としては、運営費交付金をもっと拡大をする必要があるのではと考えております。

このやり取りに対して、麻生財務大臣は、運営交付金が含まれる科学技術予算関係の予算は「適切に確保してきた」「大学の1人当たりの公的支援額は世界でもトップクラスの水準」と答弁した。

一方で、大学病院の運営費が実際は赤字になっている点については、今後調査する必要がある考えも述べた。また、より高い成果につなけるため公的資金の使い方の質を上げたいと述べた上で、「科研費」などに資金の重点配分をする意向を示した。

※2 ハフポストは櫻井氏が、柴山大臣による「東大病院の平均給与は約1000万円」という発言に対して異議を唱えた点に関しても文科省に問い合わせた。文科省からの回答は、以下の通り。

「平均給与額約1000万円というのは東大から直接聞いた額で、東大に改めて確認はしていませんが、東大が正規の先生方(教授・准教授・講師・助教)に実際に支払っている額の平均です。非常勤の職員や大学院生の給与は計算に含まれていません」。

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