スペイン北西部のアストゥリアス自治州の教会にある木彫りの「聖母子像」が、復元と称してピンクや黄緑などで着色され、けばけばしい状態になっていることが明らかになった。
ニューヨーク・タイムズなどが9月7日、報じた。あまりの変容ぶりに、文化財保護に取り組むスペインの団体は怒りをあらわにしている。
スペインでは芸術作品の修復をめぐって同様の問題が相次いでいる。
ニューヨーク・タイムズによると、聖母子像は聖母マリアとマリアの母、聖アンナが幼いイエス・キリストを抱えている様子をモチーフにした15世紀の作品。
元々は素材を活かした風合いだったが、地元でたばこ店を経営しているマリア・ルイーザ・メネンデスさんが、教会の司祭から許可を得て「復元」に着手。その結果、マリアの服は鮮やかなピンクや水色、キリストは黄緑色でそれぞれ塗られた。
彼女が施した着色に対し、厳しい意見が相次いだ。イギリス紙ガーディアンによると、2002年にこの彫刻の修復に携わったルイス・スアレス・サロさんは「何にでも使える産業用エナメル塗料が使われた。けばけばしいし、馬鹿げた色彩で、くらくらする」と語った。
スペイン保存・修復専門家協会はTwitterで「我が国で略奪行為が続いてることに関心を持つ人はいないのか?。祖先が築き上げた遺産が目の前で破壊されているのに、それをただ受けいれるというのは、いったいどんな社会なのか」と嘆いた。
De nuevo gritamos #SOSPatrimonio. ¿A nadie le importa este expolio continuado en nuestro país? ¿Qué tipo de sociedad permite pasiva que destruyan ante sus ojos el legado de sus antepasados? https://t.co/iCEqmxtvDcpic.twitter.com/PhW7BGfZGc
— ACRE (@A_CR_E) 2018年9月6日
メネンデスさんは「私はプロの画家ではないが、これまで楽しく絵画に取り組んできた経験がある。実際、彫刻は塗り直すことが必要だった」と釈明。その上で、「私はベストを尽くした。適切とみられる色で塗ったし、近所の人たちも気に入っている」と述べた。
素人修復による相次ぐ受難
スペインの美術品をめぐっては、ナバラ州の教会に飾られている木製の聖ジョージ像が、清掃を依頼された美術教師が勝手に色を塗り、原型とは異なる印象になった。
アラゴン州の別の教会では、キリストのフレスコ画「この人を見よ」を専門家ではない地元住民の女性が修復。その結果、猿のようになったことが問題になっていた。