仕事において、もっと高みを目指したい!
しかし、無理なく子育てにも専念できるような働き方も選びたい。
株式会社co-meetingでエンジニアとして働く寺嶋章子さんは、3人のお子さんを持つお母さんです。約10年間勤めたIT企業を退職し、リモートワーカーになりました。今回はco-meetingのオフィスにお邪魔し、出勤中の寺嶋さんと取締役である矢野貴明さんにお話を伺いました。
寺嶋 章子(Shoko Terajima)
1982年生まれ。千葉県在住。IT企業で10年ほど勤務し、マネジメントを担当。その後、株式会社co-meetingに転職し、週に5日、1日5時間の契約でエンジニアのリモートワーカーとして働いている。2歳・5歳・7歳の3人の子どもの母でもある。
株式会社co-meeting:https://www.co-meeting.co.jp
"リアルに対話ができる"ツールを利用して、臨場感のある遠隔会議
―株式会社co-meetingでは、どのような事業を行っているのでしょうか。
矢野さん(以下敬称略):法人向けのソフトウェア開発が主な事業内容です。社内の業務をスムーズに回すためのツールを作って販売しています。その関連で、コンサルティングや技術支援を行うこともあります。
―現在、こちらの会社では何人の方がリモートワークをしているんですか?
矢野:現在、社員の人数は役員を含めて6名、そのうちの4名がリモート中心で働いています。役員以外は、全員が育児などの理由から時短勤務を選択しているんですよ。オフィスで仕事をしているのは私と、書類管理等の作業がある事務支援の方です。
私は来られる時はいつもオフィスに来ていますが、それは「オフィスにいる必要があるから」ではなく「オフィスにいたほうが仕事がしやすいから」です。
会社設立以降、長い間オフィスを持たずにメンバー全員がリモートワークをしていましたが、社員や社外の人が集まりやすい環境を作りたかったことや、少しずつですが人を増やしていきたかったこともあり、現在のオフィスを構えました。
―男性のリモートワーカーの方が新たに入社したと伺いました。
矢野:彼は鎌倉から出勤してくれています。出勤前にお子さんを保育園に預けて、退勤後にまたお迎えに行きます。営業担当なのでお客様のところに訪問はしますが、基本的には会社への出勤は義務付けてはいないですね。
寺嶋さん(以下敬称略):営業のリモートワーカーって珍しいですよね。うちの会社は、偶然にも社員全員に子どもがいるんです。みんなお父さんなんですよ。立場が同じなので、そういう中で、働きやすさは感じますね。
―リモートの方も、内勤の方も働きやすい環境ですね。ホームページでは「co-meeting」というツールが紹介されていますが、こちらはリモートワーカー向けのツールでしょうか。
矢野:「co-meeting」は、離れていても対面で会話しているのと同じレベルでコミュニケーションが取れるテキスト会議ツールで、まさにリモートワークのために開発したものです。チャットのようにテキストで会話をするツールですが、密度が濃くまとまった分量のコミュニケーションをテーマ(議題)ごとに行えるので、非常に便利です。
弊社内では主にチャットツールSlackを使って大半の連絡を行っていますが、商談のメモや問い合わせメールに関する相談、日報なんかは大体co-meetingを使って行っています。そのほかにも、月に一度はco-meetingを使い、米国と日本で国境をまたいで会議をしています。リモートワーカーの方も増えたので、今後また利用を深めていきたいと思っています。自社製品ですし。
社員同士の信頼関係。家族のスケジュールも書き込みます
―寺嶋さんご自身の経験について、お話を聞かせていただきます。寺嶋さんが以前のお仕事を辞めてリモートワーカーになった経緯について教えてください。
寺嶋:以前の職場では、企業のために情報システムを構築するSIerの仕事を時短勤務で行っていました。主な業務はマネジメントだったのですが、エンジニアの仕事にも興味を持ち始め、自身のレベルアップとしての転職を考えました。転職というと、大半の企業がフルタイムで勤務することを前提にしていますが、子どもが3人いることや、千葉から通勤することを考えると、それはちょっと難しいなと思ったんです。そこで、同じように時短勤務かリモートワークができる職場を探していた時に、こちらの会社の求人を見つけたんです。
矢野:雇用契約内容の相談をしていた時期は、週4日・5時間勤務を検討していましたが、労働時間が社会保険の規定時間に足りなかったため、週5日に日数を増やしてもらっています。寺嶋さんは10時から16時までの勤務ですね。
―在宅で仕事をする場合でも、仕事開始と終了の時間は定めてあるのですね。
寺嶋:ある程度は任されていますし、自由に働いています。勤務時間を過ぎても作業することはよくありますし。ただ、契約上、労働時間の取り決めは必要なんですよね。
矢野:基本的に、きちんと仕事をしてくれている前提で、相手を先に信用するんです。さぼっているかもしれないけれど、そういうのも引っくるめて信じています。もしもダメだったら後で考える。それに、エンジニアなので作業しているかどうかはある程度、こちらで確認することができますし。月の作業量を定めて、「これくらいやってくれたら良いな」という目安もあります。会社の規模が小さいこともありますが、社員同士なにも隠し事はしていません。共有しているスケジュール表に、家庭のスケジュールも書いてますよ。
―え! 家族の予定も共有してるんですか。
矢野:基本的には隠し事してないので、子どもの誕生日も入れてますよ。みんなに分かったほうが良いよね?
寺嶋:それは矢野さんだけですよ(笑)。私は子どもの授業参観など学校関係の予定を書き込んだりしています。その時間帯に連絡が取れないかもしれないことを、皆さん察してくれるから助かります。子どもがいる立場だから、自然と分かり合えるところはあります。
保育園の登園は子どもに付き合って寄り道も。我が子とじっくり向き合う時間が増えた
―リモートワークを始めて、変わったことはありますか?
寺嶋:子どもと一緒にいる時間が増えました。3人いると、どうしても一番上の子って甘えられないし負荷がかかってしまいがちなんです。でも、リモートに変えてから上の子と1対1で関わる時間が増えて、関係性が変わってきたように思います。去年、小学1年生の時に百人一首にハマっていたのですが、私が仕事をしている時にパソコンで百人一首の上の句を流してあげて、あの子が札をとっていく......という遊びをしていたら、百人一首を全部覚えてしまいました。
―全部ですか! 1年生なのにすごいですね。仕事をしながらでも2人で遊ぶ時間ができたのですね。
寺嶋:一番下の2歳の子を保育園に送る時間も楽になりました。前の会社に勤めていた時は、「早くして!」って急かしながら出勤していました。でも、今は30分以上かけてゆっくり登園しています。2歳の子って寄り道が好きなんですよね?。そんな時間にも気長に付き合っています。保育士さんからは「仕事は大丈夫ですか?」と心配されますが(笑)。
―お子さんとの登園時間にも余裕があるのですね。旦那さんは寺嶋さんの働き方に対してどのように思われていますか?
寺嶋:旦那も同じような職種なので、私がリモートワークをしていることは家庭の中では普通のことです。リモートワークのメリットも分かってくれています。そのため、こちらも保育士さんからは「旦那さんは働いているんですか?」と聞かれてしまいます(笑)。
どのような仕事をしているかは、異業種の方にはあまり分かってもらえないこともありますが、急いで子どもを預けて仕事に行くお母さんたちからは「羨ましい」と言われます。
家だけで仕事をしていると感じるやりづらさ。適度な出勤は必要かも?
―寺嶋さんはどれくらいの頻度でオフィスに出勤しているんですか?
寺嶋:週に一度は来るようにしています。もしかすると週一で来る必要はないのかもしれません。でも、顔の見えないテキストのやり取りだけをしていると、その人がどんな表情で言ってるのか分からないじゃないですか。メールの文章を読んでいる時も、その人の声を想像したりしませんか。
―なるほど。社員の方と円滑なコミュニケーションをするためにも、オフィスに出勤する時間は必要なのですね。
矢野:コミュニケーションもそうだし、気分転換にもならない?
寺嶋:そうですね。通勤の移動時間も意外と必要なんですよね。リモートで働き始めてから本を読む時間が減ったんです。週に1回くらいは、電車の中で本を読む時間があるといいかな、と。
家だとさぼってしまいそうになる時がありますし、ここには来たい時に来られることが有難いです。来ようと思えば週に3回でも出勤できるし。これからリモートワークを始めようとしている人たちも、完全にリモートになってしまうことには抵抗がある人が多いようです。
矢野:個人の働きやすさを大切にしたいですね。自分がいちばん働きやすい形で仕事をしてほしいと思っています。また、仕事の状況によっては集まったほうが早く進行するケースもあるので、その時はこのオフィスに集まったらいいと思います。
―では、逆に家で仕事をしている時は、どのようにプライベートと仕事の時間を区切っていますか? 何か工夫があれば教えてください。
寺嶋:現在、仕事の一環で夜間にデザインスクールに通っています。夜しかやっていないので、午前中に働いて、午後は子どもと一緒に過ごして、夜は学校に行きます。学校があるため、自然とそういった時間組になっていますが、普段はあまり、プライベートと仕事を区切る必要性を感じていないんです。仕事が好きだからという理由もあります。意識して2つを切り離そうとすると、そっちのほうがストレスになっちゃうかも?
でも、子どもが近くに来たらパソコンを高い場所に避けたりするので、そういった場合は必然的に仕事から離れることになりますね。自分で区切っているわけではなく、自然とそうなっている感じです。
子どもが病気の時も、家で看病しながら仕事ができる強み
―リモートワークをしていく中で、難しいと感じることはありますか?
寺嶋:対面だとすぐに確認できることも、すぐに聞けないことでしょうか。分からないことは毎回自分で調べるので、その時間はちょっとかかりますね。あと、皆さん言いますけど運動不足になります。たまに有給を使ってジムに行ってます。
―有給休暇も取得できるのですね。
矢野:社員ですから有給も適用されますよ。プライベートな休みは有給を取ってもらっていますが、みんな子どもがいるので急な病気の対応で休むこともよくあります。その辺りは、今後きちんと統計をとって有給以外の特別な休暇が取得できるように整備していきたいと考えています。
それに、リモートワーカーは子どもが病気でも、ある程度は家で仕事ができるじゃないですか。こういった点はリモートの良いところですよね。
寺嶋:会社に行かなくても仕事ができますしね。自分に風邪がうつってしまった場合も、無理をして外で仕事をする必要がないので、病気が悪化することもありません。無理をしない働き方なので、私自身、病気をしにくくなりましたよ。
―寺嶋さんはリモートワークの働き方をほかの方にも推奨したいと思いますか?
寺嶋:周りの人には結構勧めています。独身の女の子で、いずれリモートワークをしながら子育てをしたいと考えている方も多いようです。反対に経営者側から「女性エンジニアが集まりにくいから、リモートで募集をしたら集まるかな」と相談されたこともあります。これからリモートワークに変えたいと思っている方は、転職をするか会社に相談するか、ということが必要になると思います。
―今後の展望や目標がありましたら教えてください。
寺嶋:展望ですか。うーん、今の状態が充実しているので、特にありません! このままのスタイルで働き続けたいと思っています。
―寺嶋さん、矢野さん、快く集合写真に入ってくださった社員の皆様、ありがとうございました!
1人ひとりの生き方や家族の在り方を社員同士が尊重し合う社風は、これからの時代に多くのお母さん・お父さんから求められるものだと思います。仕事と子育てが双方の足を引っ張ることのない新たな働き方として、リモートワークへの期待が高まります。
この記事の著者:佐藤愛美(Megumi Satou)
保育士とライターのダブルワークを5年間続けた後、フリーライターとしてワークスタイルを確立。女性の生き方、子育て、社会問題等のテーマを中心に執筆している。保育園で連絡帳を書くことも、ライターとして記事を書くことも根本は同じ。「人と向き合い、心に触れる文章」をモットーに事業を展開中。
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