イギリスのブリストル大学大学院に通うリアム・スミスさんは、デートアプリ「Tinder(ティンダー)」を通して出会った女性と、デートした。
外で食事をした後、スミスさんは彼女を自分の家に招いてワインを飲み、一緒にドキュメンタリー番組を見た。
女性は途中でトイレに立ったそうだ。そしてスミスさんは、女性がトイレから戻ってきたとき、彼女がパニック状態になっていることに気づいた。
女性はスミスさんに、「トイレでうんちをしたんだけど、トイレが流れなくてパニックになってしまった」と告げた。さらに、便器の中からうんちを拾い上げて、ティッシュペーパーで包んで窓の外に投げてしまったと説明した。
スミスさんは彼女に、一緒に外にうんちを拾いにいこうと提案した。問題のうんちを袋に入れてゴミ箱に捨て、全てを忘れよう、と。
ところがスミスさんは、トイレの窓が外側からは開かないことに気が付いた。
スミスさんのトイレの窓は面白い作りをしている。2重窓でトイレ側の内窓は開くが、庭側の外窓は開かない。窓と窓の間には18センチの隙間があり、スミスさんのデート相手が投げたうんちは、この隙間に落ちていた。
スミスさんはハンマーで窓を壊してうんちを取ろうとしたが、女性は別の提案をした。「自分は体操選手なので、窓の隙間に体を入れてうんちを拾える」というのだ。
そこで彼女に手を伸ばして拾ってもらおうとしたのだが、手はなかなかうんちに届かなかった。もう少し、もう少し、と頭から体を隙間に突っ込んでいくうちに、ようやく手が届き、ティッシュペーパーにくるまれたうんちは無事に拾われた。
ところがここで問題が起きた。女性の体が抜けなくなったのだ。
スミスさんはこう綴る。「私は彼女の腰を持ち、引き抜こうとしました。しかし、彼女は完全に動けなくなっていました。窓の隙間の中で、逆さまの状態で完全に動けなくなったのです」
自分ではどうしようもできなかったスミスさんは、消防隊を呼んだ。サイレンを鳴らしながら到着した消防隊は、現場を確認した後、特別なツールを使って彼女は窓の間から救出した。かかった時間は15分だった。
にわかには信じがたい出来事だが、女性を救出した「エイボン消防救命サービス」は地元紙ブリストル・ポストに、スミスさんからの要請で出動し、窓の間で身動きが取れなくなっていた女性を救出したと証言した。
またエイボン消防救命サービスのウェブサイトでも、この救出劇は紹介されている。救出にあたった消防士の一人、クリス・クラザーズさんは次のように語る。
「通常、身動きが取れなくなった人はすぐにパニックに陥ります。そのため私たちは、最善を尽くして相手を落ち着かせます」
「私は女性と話をしました。彼女は、窓の間に挟まった経緯を全て隠さずに話してくれました。きっともうこの時には恥ずかしいという気持ちはなくなっていたのではないかと思います」
「窓の隙間には、数匹の蜘蛛がいました。彼女はそこに挟まった状態でしたが、健康に問題はなく、自由になれたことを喜んでいました」
「私たちは仕事柄、いつも変わったものを見ていますが、今回はその中でも最も変わった事例だと言っていいでしょう。挟まった理由が理由ですから」
救出劇は、エイボン消防救命サービスのTwitterでも紹介された。
女性は無事に救出されたが、壊れた窓の修繕に300ポンド(約4万2000円)かかることがわかった。学生のスミスさんにとって、これは一カ月の収入に値する金額だ。
そこでスミスさんは、事の顛末をクラウドファンディングサイト「Go Fund Me」で公開し、寄付を募ることにした。
「インターネットで助けを求めます。ポンド、ドル、円、ルピー、北朝鮮ウォン、ほんの少しでもいいから、壊れた窓の修理に寄付していただければ嬉しいです。もし窓を修理しなければ、私は大家さんに殺されるでしょう。寄付は文字通り、私の命を救うことになります」
もし、目標額を超える金額が集まったら、 発展途上国で水洗トイレを広げるチャリティー団体と、消防隊のチャリティー団体に半分ずつ寄付する、とスミスさんは約束した。
200ポンド(約2万8000円)を目標額に、9月5日にクラウドファンディングサイトに掲載されたページには、現時点で2482ポンド(約35万円)が集まっている。
スミスさんは、予想を超える額が集まったことに驚きつつ、寄付をしてくれた人たちに心からの感謝を伝えた。200ポンドを超えるお金は、約束通りチャリティー団体に寄付すると追記されている。
もう一つ気になるのはスミスさんと女性の今後だ。クラウドファンディングのサイトには、「2度目のデートには行くの?」「どうか2度目のデートに行って!」とその後の関係を心配するコメントが並んでいる。
そのことについて、スミスさんはデイリー・スター紙にこう答えている。
「彼女は素敵な人です。今、論文でめちゃくちゃ忙しいので、今後どうなるか分かりませんが、ぜひまた会いたいと思っています」
ハフポストUS版に掲載された記事を翻訳・加筆しました。