「本当のこととは思えない。信じられません」――引越しの最中に盗まれたテディベアと4日振りに再会し、マラ・ソリアノさんは喜びを語った。
カナダ・バンクーバーに住むソリアノさんにとって、このテディベアはただのぬいぐるみではない。「ママベア」と名付けたテディベアには、2019年に亡くなった母の声が録音されていた。
しかし7月24日、引越し中に大切なママベアが盗まれてしまった。メディアや著名人らも協力し、テディベアの捜索が行われていた。
ライアン・レイノルズさんも情報提供を呼びかけ
CBCによると、ソリアノさんは引越しの最中に友人から事故にあったという連絡を受け、運んでいたバッグをその場に置いてすぐに友人の元へ向かったという。
しかし、フィアンセにバッグのことを伝えるのを忘れてしまい、バッグは屋外に放置された状態に。その後、置かれたバッグを1人の人物が持ち去る様子がセキュリティカメラにうつっていた。
バッグには、母からもらったテディベアが入っていた。盗まれたことを知って打ちのめされたソリアノさんは、ポスターやSNSで情報提供を呼びかけた。
地元メディアもテディベア捜索を取り上げ、著名人を含む多くの人に記事がシェアされた。
バンクーバー出身の俳優ライアン・レイノルズさんはCBCの記事をリツイートし「クマを返してくれたら5000ドル支払います。詳しいことは何も聞きません」と、返却を呼びかけた。
見知らぬ人物から、メールが届く
カナダプレスによると、ソリアノさんの元に28日、テディベアの情報を知っているというメールが届いた。
メールには多くの詳細が書かれていなかったため、ソリアノさんは半信半疑だったが、記事を書いた記者と一緒に安全な場所で情報提供者と会った。
ソリアノさんによると、待ち合わせ場所に現れた2人の人物はテディベアを持っていた。「驚くなかれ、ふたりの見知らぬ親切な人が、ママベアを返してくれたんです」とソリアノさんはカナダプレスへのインタビューで語る。
テディベアが戻ってきたニュースにレイノルズさんも大喜びし、「ありとあらゆる場所を探してくださった皆さん、ありがとうございます。クマを持っていった方は、安全に保管していてくれてありがとう。バンクーバーは素晴らしい」と感謝をツイートした。
メッセージを再生すると、母を近くに感じられる
カナダプレスによると、ソリアノさんの母マリリン・ソリアノさんは約10年前、ソリアノさんが18歳だったにがんと診断された。
マリリンさんは2017年12月に、自分の声を録音したテディベアを作り、ソリアノさん渡したという。
母親からもらったテディベアには「あなたを愛しています。そして誇りに思っています。私はいつもあなたと一緒にいますからね」という声が録音されていた。
その後マリリンさんはホスピスに入院し、2019年に亡くなった。ソリアノさんは「母を恋しく思うたびに、クマをハグしては母の声を聞いていました。そうすることで、近くに母を感じられる」と語る。
メッセージにはソリアノさんが生まれたフィリピンの言葉で「あなたのことが大好きですよ」というメッセージも録音されていて、ふるさとを思い出すという。
テディベアが戻ってきた後、ソリアノさんは大好きなクマを抱きしめてメッセージを再生した。