アメリカ・オハイオ州で、「生育の可能性がない」と診断された胎児を自宅で流産した女性が、死体遺棄罪で起訴された。
AP通信によると、ブリタニー・ワッツさんは妊娠21週5日目だった9月に出血し、病院を訪れた。
診察した医師は「胎児の心拍はまだ確認できるものの、すでに破水しており命は助からないだろう」とワッツさんに告げ、陣痛誘発剤を使用して生存する見込みのない赤ちゃんを産む、すなわち中絶の処置を受けるよう勧めた。
医師はこの時、中絶しなければワッツさん自身が死亡する可能性があると診断したという。
オーストラリアABCによると、ワッツさんが緊急治療室で8時間待たされている間に、妊娠期間は州法が中絶を認める最終期限である21週6日目に入った。
ワッツさんの代理人であるトレイシー・ティムコ弁護士はワッツさんが長時間待たされたことについて「病院関係者が、法的に中絶が認められるかどうかを慎重に検討していたからだ」と説明している。
アメリカでは、長年中絶の権利を保障してきた「ロー対ウェイド」判決を、連邦最高裁判所が2022年に覆した。これにより、各州が中絶の合法性を決められるようになった。
オハイオ州では中絶は合法だが、妊娠21週6日目を過ぎると、ほとんどの場合で違法となる。
ワッツさんは何の処置も受けられないまま自宅に戻り、帰宅後に自宅のトイレで流産した。
翌日病院に戻ったワッツさんのお腹に胎児が確認できなかったため、看護師が警察に通報したという。警察はトイレを差し押さえて配管から胎児を取り出し、ワッツさんを訴追した。
地元テレビ局WKBNによると、検視の結果、胎児の体に傷はなく産道を通る前に子宮内で死亡したことが確認された。
胎児の遺体を解剖した法医学者は「すでに破水しており、胎児は生存不可能だった」と予審で証言している。
一方、検察側は「問題はどうやって、いつ赤ちゃんが死んだかではない」として、トイレの配管に詰まるほどの大きさになっていた胎児が放置されたことを問題視。
ワッツさんが胎児が体から出るのを感じたことや、大きな水の音がしたことなどから、「胎児が体外に出たことに気づいていたはずだ」と指摘した。
ワッツさんは11月、死体遺棄罪で起訴された。有罪になれば、最高1年の禁固刑と、2500ドルの罰金が課せられる可能性がある。
連邦最高裁が「ロー対ウェイド」を覆して以降、一部の州では中絶が厳しく制限され、法的責任を問われることを恐れて医師が手術を拒否する場合もある。
テキサス州では12月、妊娠を続ければ命の危険があると診断された妊婦の中絶を州が阻止した。この妊婦は、中絶手術を受けるために州外に出ることを余儀なくされた。
ワッツさんがすぐに手術を受けられなかったことについて、オハイオ州ケース・ウェスタン・リザーブ大学法学部のB・ジェシー・ヒル教授は「病院は刑事責任を問われることを恐れて、保守的にならざるを得ない」とAP通信にコメントしている。
また、カリフォルニアのサンノゼ州立大学グレース・ハワード法学部助教授は、ワッツさんの行動の何が犯罪なのかを、検察は明確にすべきだと述べている。
「彼女の流産は、まったく普通のことです。彼女がどうすべきだったについて検察がどう考えているのか知りたい。使用済みのナプキンを病院に持ち込んで流産かどうかを確認することを義務づけるというのなら、残酷なだけでなく、馬鹿げているし、プライバシーを侵害するものです」