
アメリカのトランプ大統領が、180以上の国や地域に対する関税を発表した後、株価が大幅に下落するなど世界経済の先行きに対する不安が広がっている。
トランプ政権は、すべての国に対して一律10%、さらに日本も含む約60の国にそれよりも高い相互関税を課すとしている。
またこの相互関税とは別に、すべての鉄鋼とアルミニウムに25%、自動車にも25%の関税が導入されている。
関税とは何なのか。なぜ、アメリカが関税をかけることが、世界的な問題になるのだろうか。
関税とは?
関税は、外国からの輸入品に課される税のことだ。例えば、1000円の品に25%の関税がかけられた場合、関税は250円になる。
関税は、輸入業者が自国の政府に支払う。しかし、輸入業者は全額もしくは一部を商品の価格に上乗せすることが多いため、最終的には消費者の負担になる。
つまり、関税の導入や引き上げは、消費者にとって増税となる。
どんな影響が考えられる?
関税の引き上げにより、アメリカでは衣料品や食品、アルコール、電子機器など、さまざまな物の値段が上がり、インフレが起きるのではないかと懸念されている。
価格が上がる可能性があるのは、国外で作られた完成品だけではない。
部品や原材料にも関税が適用されるため、たとえアメリカ国内で作られている製品であっても、輸入部品を使っていれば値上がりする可能性もある。
また、生産や部品の調達を行っていたアジアなどの国に関税がかけられることで、価格が上昇してグローバルサプライチェーンの混乱や崩壊も懸念されている。
一方、名目GDP(国内総生産)世界1位の経済大国であるアメリカを主要な輸出国としている、カナダやメキシコ、EU、中国や日本、韓国、ベトナムなどの企業や輸出業者は、関税で輸出品が売れなくなって顧客を失い、業績が悪化したり、労働者が職を失ったりする可能性がある。
また、報復関税により貿易戦争が起き、世界経済が悪影響を受けて、インフレや世界的な不況に陥るのではないかという懸念も高まっている。
中国やカナダ、メキシコなどは、すでにアメリカに対する報復関税を導入するとしている。
トランプ氏が相互関税を発表した後、世界の株式市場で株価が大幅に下落した。
株価の下落は企業年金の運用や雇用、金利などに関係があるため、株に投資していなくても、株価変動の影響を受ける場合がある。
なぜ関税をかけるのか?
関税は、自国の成長中の産業や農業などを海外との競争から守るなどの目的で利用されてきた。
しかし、関税は貿易縮小や価格上昇、他国からの報復を招くことが多いため、第二次大戦後は先進国ではあまり好まれなくなった。
アメリカも、関税を収入源にしていた時代もあったが、第二次世界大戦後は、貿易拡大を世界戦略の中心に据え、関税を引き下げてきた。
しかしトランプ氏は、アメリカが貿易赤字を抱えていることを長年批判してきた。
ただし、貿易赤字とは輸入が輸出を上回ることを意味するものであり、経済状態を直接的に示しているわけではない。
アメリカの貿易赤字は、消費中心の経済であることの反映であり、赤字を抱えていても、堅調な国内成長を維持している。
それでも、トランプ氏は、貿易赤字は他国に「不公平」な取引をされているからであり、諸外国はアメリカの富を略奪して自国の経済を豊かにしてきたと主張してきた。
相互関税を発表した4月2日には、「相互というのは、彼らが我々にやるなら、我々も彼らにやるということだ」と述べた。
トランプ氏は、関税により国内製造業が活性化され、国内投資が増え、貿易赤字が削減し、税収が増えるとしている。
また、関税はカナダやメキシコ、中国などからの麻薬流入を防ぐための対策だともしている。
一方「相互関税」とは、貿易相手国がアメリカに対して課しているのと同じ水準の関税を課すということだ。