9月上旬に開かれる東京芸術大学の学園祭「藝祭」で開催予定だった「裏ミス藝大」が中止されることが明らかになった。藝祭実行委員会が6月21日、学生課を通して学生全員宛にメールを送り、中止を決めた経緯を説明した。
藝祭には、「ミス」と「裏ミス」のコンテストがある
藝祭では、「ミス藝大」と「裏ミス藝大」という二つの企画がある。
「ミス藝大」は毎年開かれている名物企画で、通常の「ミスコン」のような女性の見た目などを評価するコンテストとは違い、男女問わず参加でき、モデル、美術、音楽でチームを組み「ミス藝大」という作品をつくることで「美」を追求するというのが狙い。作品は人ですらない場合もある。
対して、今回中止となった「裏ミス藝大」は、通常の女性の容姿やふるまいなどを評価する、いわゆる従来型の「ミスコン」を見たいという学生の要望に応え、企画されたものだったようだ。
「企画してしまったことを浅はかであったと痛感」
以下、「裏ミス藝大」の中止を知らせるメールだ。
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本企画の開催が中止となった経緯をご説明いたします。
本企画についてのメールを送らせていただいた後、様々な意見をいただきました。
賛成や出場を希望される意見も多数ございましたが、本企画に対し、懸念を示された方もいらっしゃいました。
本企画の参加資格が女子学生のみであること、また、外見から人の内面や人自身を判断するということが、
「女性は美しくあるべき」というような、強迫的な観念をもたらしてしまうこと、そして、様々な価値観を持つ学生が集まり、芸術を学ぶ藝大という場において、このような企画が催されることに対して、強い危機感を持っていらっしゃいました。
このような経緯を経て、意見をくださった方々とイベント課、企画課を交え、内的な意見交換会を行いました。
そして、交換会において、本企画の発案のきっかけとなった、「ミス藝大」企画に関する意見ポスターについての言及もありました。
意見ポスターには、今まで通り「ミス藝大」を続けてほしいとの意見もございましたが、反対に、「普通の」ミスコンが見たいという旨を、女性に対するハラスメント的な言葉遣いで書かれているものもございました。
上記のような意見が学生の声として正式に受け入れられるとは思わなかった、という声をいただき、意見を取り入れ、企画してしまったことを浅はかであったと痛感いたしました。
今回の件は、毎年開催されている「ミス藝大」企画について再考する機会でもありました。
男女問わず、様々な価値観で「美」を表現する「ミス藝大」は、藝大らしいミスコンだと言えます。
学生の皆様にも「ミス藝大」企画の意義について考えていただきたく、以上の内容を共有させていただきました。
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Twitter上では、「このように他者の意見を取り入れ、丁寧な内容のメールを送る企画課も、意見を臆すること無く言って伝える藝大生も、私は本当に素晴らしいと思います(><)」、「各大学で普通にやっているミスコン、もちろん女性をある種のトロフィーワイフとして扱うことや女子アナへの階段としての機能などその意味は人によってさまざまですがミートゥー(#MeToo)問題のご時世を象徴する出来事なのでございます」、「意見を真摯に検討し、大学としての結論を出したのは素晴らしいと思う」など肯定的な意見がある一方で、「今あるカオスなミス藝も好きだけど、賛成だったのにな。」と中止を惜しむ声もあった。
「ミス・アメリカはもはや美人コンテストではありません。」
最近では、アメリカのミスコンテスト「ミス・アメリカ」で、水着審査が廃止されることになったばかりだ。美しさを容姿だけで判断せず、情熱や知性、ミス・アメリカの役割に対する考えについて審査員からの質問に答えてもらい、判断材料とする方向だ。
「ミス・アメリカ」のように従来の一律的な「美しさ」の定義を見直す動きも世界中で起きている。痩せ過ぎモデルの活用を禁止する法律がフランスで施行されたり、少し太めの「プラスサイズ」モデルが雑誌の表紙を飾るようになってきたりした。「どんな見た目でもそれぞれの美しさがあるんだよ」というメッセージが各地で発信されている。それは「ボディポジティブ」ムーブメントと言われている。
女性の美しさを競うミスコンは、その動きと逆行していてジェンダーの観点でしばしば議論となる。対象者を戸籍上の女性に限定したり、国籍を限定したり、「女性はこうあるべきだ」という考えの押し付けになったり...。美しさの多様性が叫ばれる時代の中で、美人コンテスト(ミスコン)をする意味を藝祭実行委員会は問い直した。
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