「今日は職場で嫌なことがあった」と思う日は誰にでもあります。でもそれが何日も何日も続くようであれば、要注意かもしれません。
雇用する側にとっても働く側にとっても、仕事環境は大切な問題です。スタンフォード大学のジェフェレー・プフェッファー教授の研究によると、アメリカでは年間の医療費の8%、12万人の死亡がお粗末な経営に関係しています。
自分では大丈夫だと思っても、体は危険信号を送っているかもしれません。仕事が嫌だと感じている時、体にはどんな症状が現れるのでしょうか。
■ 寝られない
メリーランド州在住の臨床心理士・モニーク・レイノルズ氏は、職場でストレスを抱えている人たちの体に最初に現れるのは、眠れないことだと言います。
「多くの場合、(患者が)最初の症状として訴えるのは不眠症です。頭の中を色々なことが駆け巡って眠れない、もしくは眠りが続かないといった悩みを訴えます。真夜中に目が覚めて、 仕事のことをずっと考えてしまうのです」
眠れない夜が数日で終わるのであれば、さほど心配する必要はないかもしれません。しかし何日も続く場合は、仕事のストレスが体に負担になっているかもしれないと考えてもいいかもしれません。
「眠れないことと仕事に常に何らかの関係があるのなら、何かのバランスがうまく取れなくなっているのかもしれません」
■ 頭痛がとれない
怪我をすると、筋肉は体を守るために緊張して張り詰めます。同じように、職場を安心できない場所だと感じていると筋肉が張り詰める、とアメリカ心理学会のウェブサイトに書かれています。
首や肩や頭の筋肉が慢性的に緊張していると、偏頭痛や緊張性の頭痛につながることがあります。
「ストレスが体の症状となって現れ、痛みを伴うことがあります」とレイノルズ氏は説明します。
■ 体の筋肉が、全体的に痛い
職場環境が悪い中で仕事をするのは、机の上で野生の虎を追い払うために戦うようなもの。危険を感じていると、脳はアドレナリンなどのストレスホルモンを体内に放出します。レイノルズ氏はこう説明します。
「職場環境が悪いと、私たちの神経系は常に緊張してしまいます。何かが起こるのではと常に警戒し、不愉快なボスや同僚に備えようとします」
いつも猫背で歯を食いしばってメールを打ち続けているのであれば、職場環境が悪いサインかもしれません。
■ メンタルヘルスの問題を抱える
ストレスの増加は、メンタルヘルスの問題を悪化させるとレイノルズ氏は指摘します。「心配性の人が、いつも不安を感じる職場にいると、心配しすぎて体が限界を超えてしまうことがあります」
上司からの風当たりが強いと、精神的な負担が大きくなります。2012年の分析調査では、「会社は不公平だ」と感じている従業員に、過食やうつなど健康上の問題を訴えている傾向がみられました。
カナダ・セントメアリーズ大学の研究者E. ケヴィン・ケロウェイ氏は、職場での不公平な扱いは、大きなストレスをもたらすと説明します。
「不当な扱いは、特に害の大きいストレス要因です。その人自身の人格、尊厳を攻撃するからです。お前は公平な扱いを受けるに値しない、もしくは他の人と同じように扱うに値しない人間だと、言っているのと同じです」
■ 頻繁に体調を崩す
定期的に風邪を引くようであれば、仕事との関係を一度じっくり振り返ってみてもいいかもしれません。
研究からも、慢性的なストレスは免疫システムを低下させ、病気にかかりやすくするとわかっています。
■ セックスへの興味を失う
時間の使い方というのは、その人の価値観を反映します。家で仕事ばかりしていると、パートナーとの関係が悪化してしまうかもれません。
アメリカ心理学会のウェブサイトには、ストレスが性欲に与える影響が書かれています。
それによると、女性の場合は自分の責任や金銭上の義務に仕事のストレスが加わったときに、セックスに対する興味を失う傾向があります。男性の場合は、慢性的なストレスがテストステロンの生成を減らし、性欲の減少につながるようです。
「性的な興奮を感じるためには、ある程度気持ちがリラックスした状態や時間の余裕が必要です。時間がなくてセックスできないという悩みを聞きます」とレイノルズ氏は話します。
■ いつも疲れている
体の芯からクタクタ、もしくは昼寝をしたり週末に寝たりしても取れない疲れを感じてはいないでしょうか?
ケロウェイ氏は「悪い職場環境に対するに反応は、人によって様々です」としつつ、ストレスが疲労の原因になっている可能性もあると指摘します。
プフェッファー氏も、悪い職場環境が悪循環を作り、精神的にも身体的にも疲労を感じることがあると言います。「労働時間が長いために精神的に参ってしまう場合もありますし、精神的に参っているから労働時間が長くなる場合もあり得ます」
■ 胃の調子が悪くなる
消化や便秘、膨満感が、ストレスに起因している場合もあります。ストレスが腸の消化や腸内細菌に影響を与えるからです。怒った時や動揺した時に胃が痛くなることがあるのはそのためです、とケロウェイ氏は説明します。
ケロウェイ氏自身も、職場環境のせいで胃腸の調子が悪くなったことがあるそうです。
「働いて6カ月ほど経った時、日曜の午後になるたびに、胃が痛むことに気がつきました。それは、時間と関係していました(胃痛が始まるのは、月曜日の仕事を考え始めるタイミングだった)。仕事が始まると考えて、胃が痛み始めたのです。仕事を変えたところ、症状はおさまりました」
■ 食欲がなくなる
食欲は脳と深い関係があります。ハーバード大学発行のヘルス・レターには、激しいストレスを感じると闘争・逃走反応が起きて体内にアドレナリンが放出される、と書かれています。脳が消化機能を低下させて、危険から逃げることに集中せよと体に伝えるのです。
その一方で、ストレスが長期に渡ると、副腎がコルチゾールというホルモンを生成します。コルチゾールは空腹感を作り出すホルモン。長期間精神的な苦痛を感じると、食べることでストレスを解消しようとするかもしれません。
さらに、糖分の多い食事はストレスに関連する体や心の反応を鈍らせる可能性があるとも、ハーバード・ヘルス・レターは伝えます。甘いものは元気が出ると考えられているのはそのためです。しかし、糖分の多い食べ物の取りすぎは、健康に悪影響を与えるということも忘れてはいけません。
■ 対処方法は?
休みを取る
理不尽な会社や上司に耐えられず、体がストレスを感じている時は休みをとりましょう。
「リラックスする時間やリセットする機会がないと、神経は長期間ダメージを受け続けてしまいます」とレイノルズ氏は説明します。職場以外での友人関係を作ったり、メディテーションやエクササイズをすると、ストレスの症状が和らぐかもしれません。
ネガティブ思考を見直す
考え方は感じ方に影響します。「誰もが仕事を簡単に変えられるわけではありませんが、自分がコントロールできる事に集中はできます」とレイノルズ氏は話します。
例えば、マインドフルネスも取り入れることで「プレゼンがうまくいかなかった」「同僚が自分のことをどう思っているのだろう」といったネガティブな考えをコントロールできるかもしれません。
辞める
仕事を辞めるというオプションもあります。ただ、辞める場合は別の収入源を事前にみつけた方がいいでしょう。
長時間労働や自治の欠如、不確かなスケジュール、経済的な不安定があると、職場は働きにくくなります。頑張りすぎるより辞めた方がいい時もあるとプフェッファー氏は話します。
「対処するのではなく、根底にある問題から解決した方がいい場合もあります」
ハフポストUS版の記事を翻訳しました。