1月27日(日本時間)に授賞式が開かれる「第62回グラミー賞」が、内部スキャンダルで揺れている。グラミー賞を主催する団体の前CEOが、選考プロセスの不正や、組織内部のレイプ、セクハラ被害などを告発したからだ。
告発したのは、グラミー賞の主催団体「レコーディング・アカデミー」で初の女性CEO兼プレジデントに就任したデボラ・デューガン氏。2019年8月に就任したばかりだったが、授賞式直前に「不適切な行為」があったとして職務停止処分となっていた。
一方、デューガン氏は、内部のセクハラ問題を告発し、組織改革に取り組もうとしたため男性役員から「職を追われた」と主張している。
女性の活躍目立つ2020年のグラミー賞だが…
ビリー・アイリッシュやリゾ、アリアナ・グランデなど、女性アーティストの活躍が目立つ2020年のグラミー賞。
主要4部門でノミネートされたアーティストの大部分を女性が占め、ノミネート発表後は大きな注目を集めた。2013年から2018年まで、グラミー賞ノミネート者の91%は男性で、男性優位で女性に排他的だと長らく批判されていた。
転換を迎えたかと思いきや、デューガン氏の主張によると、その舞台裏ではいまだに男性優位がまかり通っているという。
何が起きたのか?
騒動は、デューガン氏が授賞式10日前の1月17日、「不適切な行為」により職務停止処分を受けたことから始まる。
デューガン氏は、レコーディング・アカデミーで初めてトップに立った女性だった。ハフポストUS版の取材に答えたデューガン氏は、組織内で起きたセクシュアル・ハラスメント被害を告発した後、アカデミーの男性役員と弁護士から報復を受けたと主張。
雇用機会均等委員会に40ページ以上にわたる告発状を提出し、レコーディング・アカデミーに訴訟を起こした。
告発状では、グラミー賞のノミネートを審査する一部のメンバーが、「ビジネス上関係のあるアーティストを推薦している」として不正行為を指摘している。
グラミー賞では、1万2000人の会員の投票によってノミネート候補者が選ばれるが、会員は白人と男性が多数を占めており、性別や人種に大きな偏りが生まれているとも指摘した。
またデューガン氏は、元CEOのニール・ポートナウ氏をはじめ、団体の幹部や顧問弁護士らが性暴力やセクハラ行為に及んだと主張。自身も顧問弁護士から性的嫌がらせを受けたという。
ポートナウ氏については、会員の女性アーティストが「レイプ被害を受けた」と告発していたという。
主催団体は主張を否定
デューガン氏は、内部の性暴力やハラスメント問題に抗議し、組織改革を行おうとしていたと主張。「私の何がおかしかったのかよくわかりませんが、私は、ポジティブな変化をもたらそうと貢献してきました」と話した。
一方、レコーディング・アカデミーは告発を全面否定している。
レコーディング・アカデミーは、ハフポストUS版の取材に対し、「レイプの告発は実際にあったが、ポートナウ氏の疑いは晴れている」とデューガン氏の主張を否定。また、ノミネートの不正疑惑についても、「断固として誤りであり、誤解を招くものだ」とデューガン氏の主張を退けた。
レイプを告発されたポートナウ氏も声明を発表し、「(デューガン氏の主張は)馬鹿げており、真実ではない」と否定した。
混迷を極めるグラミー賞。授賞式は日本時間1月27日午前9時ごろから開かれる予定だ。