企業の業績を評価するひとつの物差しとして、「ウェルビーイング」への注目が高まっている。
3月17日、企業のウェルビーイングを促進する商品やサービス、活動を表彰する「ウェルビーイングアワード」が開催された( 主催:ウェルビーイングアクション実行委員会、共催:ウェルビーイング学会)。
「幸福」や「健康」と訳されるウェルビーイングは、肉体的、精神的、そして社会的に良好な状態を指し、多様な幸せの形を実現するためのキーワードとして注目されている。
授賞式では、応募された審査対象の中から、慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科の前野隆司さん、慶應義塾大学医学部教授の宮田裕章さんをはじめとした審査員によってファイナリスト38件が選出。
その中から各部門のGOLD(3部門計8件)と最優秀のグランプリ(3部門計4件)を決定した。
グランプリ受賞企業一覧。ユニークな取り組みが続々
各部門でグランプリを受賞した4つの企業と、その取り組みは以下の通り。
組織・チーム部門
【株式会社丸井グループ】
株式会社丸井グループは、ウェルビーイングをすべての事業の目的に設定。社員のウェルビーイングを実現する「全社横断ウェルビーイング推進プロジェクト」では、フェムテックに関する企画をはじめ、多様なイベントを“手挙げの文化”によって実現してきた。
活動・アクション部門
【大王製紙株式会社】
大王製紙株式会社の大人用紙パンツ・ブランド「アテント」。「もっといいパンツになる」というメッセージを基に、漏れや履き心地の向上に加え、「恥ずかしさ」を払拭し、精神的にも使いやすい商品開発や発信に取り組んでいる。
モノ・サービス部門
【住友生命保険相互会社】
住友生命保険相互会社の健康プログラム「Vitality」では、リスクに備えるだけでなく、リスク自体を減らしていくための健康増進サポートを提供している。
【株式会社 LIFULL】
株式会社 LIFULLのサービス「FRIENDLY DOOR」では、高齢者やひとり親家庭、外国籍の人、LGBTQ+などの「住宅弱者」の人を含む、あらゆる人の“したい暮らし”実現のサポートに取り組んでいる。
ファイナリストやGOLD受賞に輝いた企業の一覧は、プレスリリースで発表されている。
ウェルビーイングに生きて、ウェルビーイングにこの世を去りたい
授賞式の後には、審査員4人のトークカッションが実施された。
審査員長の前野さんと宮田さんに加え、一般社団法人SWiTCH代表 佐座マナさん、株式会社ヘラルボニー 代表取締役副社長 松田文登さんの4人が登壇した。
前野さんは授賞式を振り返り、「生まれたからにはウェルビーイングに生きて、ウェルビーイングにこの世を去りたいじゃないですか。ところが社会は課題だらけ。1億人いたら1億通りのことをしないと解決しません。それを皆さん一人ひとりが実践してきたからこそ、今日の授賞式が実現しました」とコメント。
松田さんも個人と社会を結ぶ重要性に焦点を当て、「今後の世の中は、ただ収益を追って株主に還元するのではなく、どのように倫理感を持って事業を推進していくのか。社会課題の解決と経済性という両輪をどう回していくのかが前提の社会に突入していくだろう」と語った。
また、個人と社会の繋がりに加え「個人とチーム」という横の繋がりの重要性も言及された。
「個にフォーカスすることもウェルビーイングの本質ですが、受賞された方々は既に『繋がりの中にどうウェルビーイングを作っていくのか』というアクションが始めているように感じました。今日のアワードでも互いの活動を学び合い、また繋がりが生まれたと思うので、そこでも新たな可能性を紡いでいただければと思います」と宮田さん。
佐座さんは「幸せは人によって違うので指標化は難しい」とした上で、「だからこそ寄り添って『(その人の幸せのために)何をすればいいのかな』と対話することが、公平なダイバーシティやインクルージョンにも繋がるのだと思います」とコメント。日々のコミュニケーションの積み重ねや「慮(おもんぱか)り」がいかに大きな役割を担っているかを語った。
そして足元の課題として「まだウェルビーイングの普及はボランティアで終わっている側面も多い」と現状に言及し、「今後ウェルビーイングをどう本業に混ぜていけば良いのか。皆さんのお仕事や暮らしの中で一人ひとりの行動が反映されて、大きな輪につながるのではないかなと思います」と企業や視聴者に声援を送った。
社会が足並みを揃えてウェルビーイング実現へと進んでいる現在、企業の取り組みに今後より注目が集まりそうだ。
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