ありとあらゆる場所に存在する、体重のスティグマ。メディアやエンタメ、学校、職場などで、太った体型を馬鹿にする「ファットシェイミング」を見聞きするのは珍しくありません。
しかし、体重に対するスティグマは女性にネガティブな影響を与える上に、 さらなる体重増加につながる可能性があることが、アメリカ心臓協会の年次大会で発表された小規模研究で明らかになりました。
研究の主執筆者で、オクラホマ州立大博士課程大学院生のナタリー・カーンズ氏は「体重管理に困難を感じている人の中には、『醜い』『自分に甘い』『意志が弱い』という社会的なメッセージが原因で、自分を低く評価する人がいました」「『脂肪は悪い』というメッセージが内在化されると、人々はしばしば恥ずかしいと感じるようになり、更に体重が増加しやすくなる可能性があります」と説明しています。
ファットシェイミングの落とし穴
研究では、内在化された体重のスティグマと内臓脂肪の関連を調べました。
その結果、実際の体重やBMIに関係なく、女性の方が男性より体重のスティグマをより内在化しやすく、腹部の脂肪についても、男性よりスティグマを感じていました。
また、スティグマを内在化している女性の方がより内臓脂肪がより高い傾向がありましたが、この傾向は男性には見られませんでした。
カーンズ氏は「平均的には、男性の方が内臓脂肪が多いにも関わらず、男性には心理的、社会的なスティグマとの関連性は見られませんでした。しかし女性は、自分自身や他人からの見られ方でネガティブな影響を受けていました」「女性は内臓脂肪肥満は少なくても、外見をネガティブに感じることで、より健康に影響を受けるのかもしれません」と述べています。
研究は参加者が70人と小規模で、1度の調査データに基づいた横断研究であるため、この研究だけでスティグマと体重増加の因果関係を証明できるわけではありません。
それでも研究者たちは「研究結果は、体重のスティグマに対処すべきだという重要性を伝えるものだ」と強調しています。
体重のスティグマを内在化していることで、なぜ内臓脂肪を蓄積しやすくなるのでしょうか。
研究者たちはいくつかの仮説を立てていますが、その一つが体重を恥と感じることで、医療ケアを受けにくくなるという点です。この傾向は、医療従事者からファットシェイミングを受けた経験があれば、強くなるかもしれません。
他にも、スティグマに対応しようとして不健康な生活習慣を身につけてしまうことも考えられます。
さらにカーンズ氏は、スティグマによるストレスが関連している可能性もあると述べています。
「恥ずかしいという感情と人間のストレス反応には関係があります」「恥ずかしいと感じることでコルチゾールの量が増えますが、コルチゾールの増加は内臓脂肪の増加につながります」
体重を健康の尺度として捉えることを見直す
専門家たちはこれまで、過剰な内臓脂肪は、糖尿病や心臓病や高血圧など、健康上の問題につながると指摘してきました。その一方で、体重と健康の関係も見直されつつあります。
近年、体重と身長から肥満度を算出するBMIは「単純すぎる」というだけでなく、「人種差別的で性差別的だ」と批判されています。さらに、体重だけを問題視すると問題の確信が見失われる点も問題視されています。
最新研究の一つは、長寿や健康的な生活の予測するためには、体重よりも運動に着目すべきだと指摘しており、この研究に携わった研究者の1人は「健康的な体型には、さまざまな形やサイズがある」と説明しています。
カーンズ氏は「ヘルスケアの専門家たちは、体重への偏見が患者にどうネガティブに影響するかに気付く必要があります」と述べ、医師たちにはただ体重を問題にするのではなく、健康的な行動を促進して欲しいと訴えています。
ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。