米トランプ大統領は中国アプリWeChatの配布を20日付で禁止する命令を発していますが、米カリフォルニア州北部地区の連邦地裁がこれを一時的に差止める命令を下したことが明らかになりました。
この動きにより、アップルおよびGoogleのアプリストアにてWeChatの新規ダウンロード停止が避けられる可能性が生じたかたちです。
8月下旬、NPOの米WeChat Users Alliancetなどを含む原告は、大統領命令は違憲であるとして訴えを起こしていました。原告側はダウンロードの禁止がWeChatユーザーの言論の自由や正当な手続き、法律上の平等な保護に対する権利を侵害し、中国系アメリカ人を標的にしていると主張。今回の差し止め命令は、本訴訟に対して出されたものです。
WeChatはSNSやテキストメッセージ、モバイル決済や企業マーケティングなど諸々の機能を組み合わせたアプリ。中国にてビジネスを行う米国企業が利用しているほか、中国語コミュニティ内で広く使用されており、アプリストアからの削除(新規ダウンロードおよびアプリ更新の停止)は深刻な被害を及ぼす可能性をはらんでいます。
同地裁のローレル・ビーラー判事は、政府の訴えが修正一条の根拠に弱点があり、アプリ提供禁止が米国の中国語コミュニティに与えるであろう損害を考慮すると全体的にあいまいであると主張しています。
さらに政府は中国の活動が国家安全保障上の重大な懸念を引き起こしていることを立証しているとしつつも、WeChatの禁止がこれらの懸念に対応しているとの証拠はほとんど示されていないこと。そして原告の指摘どおり、オーストラリア政府のように政府関係者のデバイス上でWeChatを禁止したり、データセキュリティに対処するため他の手段を講じるなど、完全な禁止のほかにも選択肢があると述べています。
CNBCによれば、米商務省の関係者はダウンロード禁止の「次のステップ」すなわちダウンロード済みのアプリも事実上使用できなくすると示唆していたとのこと。「いくつかの機能障害やタイムアウトを経験するだろう。まだ使えるかもしれないが、日曜(20日=禁止令)の後には特に機能しないかもしれない」との談話が伝えられています。
もしも米国のアプリストアでWeChatが配布禁止とされていれば、中国語コミュニティは大混乱に陥っていた可能性もあるはず。ひとまずそれは回避されたもようですが、中国本土でWeChatを通じてビジネスを展開しているアップルやディズニーも固唾をのんで事態を見守っているのかもしれません。
Source:CNBC,Courtlistner
Via:AppleInsider
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