ZOZOで服が買える時代、リアル店舗のルミネに行く意味あるの?

「どちらも、選んでしまう私たちがいる」
ルミネ 2014年秋の広告
ルミネ 2014年秋の広告
株式会社ルミネ

「運命を狂わすほどの恋を、女は忘れられる。」

「これは当時、大失恋した時にグッときすぎて...携帯に保存しちゃってました」

IT企業勤務の31歳の女性が見せてくれたスマートフォンには、主要駅前などでファッションビルを展開する「ルミネ」(東京)の2014年秋シーズンの広告が画像として保存されていた。

お守り代わりにたまに画像を見るという。

Marie Minami/HuffPost Japan

隣にいた同僚の女性は、「『自分のことを励ませるくらいには、自分のこと素敵にしておきたい』、の広告が好き」と空で暗唱してくれた。

広告であるにも関わらず「服を買え」と直接言ってこない。

ファッションを引っ張ってきたルミネの意地がみえてくる。広告で使われる、尾形真理子さんのキャッチコピーや蜷川実花さんの写真のファンも少なくない。スマホに保存までさせるそのパワーには驚くしかない。

  ◇  

ルミネは2017年夏、"終わりなき値下げセール"の慌ただしさから離れ、洋服の本当の価値を感じてもらうために、セールを遅くした。他の店が早々に夏のセールで盛り上がる中、「良いモノを、適切な値段で買って欲しい」と願いを込めた施策だという。

先日、ルミネの新井良亮会長にインタビューした。お客さんには価格だけに踊らされるのでなく、店頭でショップスタッフと話をしながら服の価値を学んで、大事に暮らして、買い物をしてほしい、と語った。広告の裏のメッセージだそうだ。

本当のものづくりの価値がわかる人にルミネに通っていただきたいと、常々考えています。

劇的に変化していく世の中において、自分自身でしっかりとした人生観をもっていて欲しいのです。20代で「自分は何をして生きていくのだろうか」と、30代で「自分には何ができるのだろうか」と、しっかり問うことのできる人ですね。

(オンラインでの買い物などで)画面越しの商品が満たすことができるのは、お客さまの「物欲」だけです。でも、(リアルな店舗で)本物の接客を受けたお客さまは、「体験」、そして「学び」を得ることができます。」ルミネ 新井良亮会長

単に「物欲」で服を買うのではなく、ルミネが広告や接客態度を通して伝える価値に惹かれる「理想のお客さま」に来て欲しいのだという。

Marie Minami/HuffPost Japan

新井会長の言葉は、確かに正しいと感じる一方で、キレイゴトにも、聞こえた。

私たちの買い物のスタイルは常に変わり続けているからだ。

スマホにルミネの広告を保存していた冒頭の女性は「ずいぶん多くの洋服を、ZOZOTOWNで買うようになった」と話す。

最初はネット上で見る服の写真と、実際の商品のズレが気になっていたが、だんだん慣れて「感覚」が掴めてきて、今では想像通りの服が届くようになったという。

ZOZOだけではない。「『来年は着ないだろうな』と薄々感じながら、ファストファッションで流行の服を買いあさってしまうこともある」とも話してくれた。

私たちは、女友達や好きな男性に、LINEでルミネの広告画像を送りながら、ベッドに寝そべってスマホでぽちぽち洋服を買う。ステキな広告に胸が打たれても、お財布が向かうのはECサイト、そんな日々がリアルだったりする。

   ◇

何が「理想的」というわけではないと思う。

はっきりとしたスタンスを取れるほど、誰もまだ強くない。企業だって安売りの服を作ったり、高級ブランドを作ったり、消費者の動向をつかめないでいる。

買う側も、確からしい思想に共感して、きちんと選び取る瞬間もあれば、何となく昨日と違う服を着たくて、さっとカートに入れる瞬間もある。

ZOZOの商品情報には、写真モデルの身長や着用サイズが書いてあったり、ZOZO独自の採寸方法でサイズを測り直したりしてあるので慣れると、選びやすく、リアルな店のスタッフより「気が利いている」とも感じる時もある。

あるいは、職場からの帰り、たまたま立ち寄った見知らぬお店で、スタッフと会話をしながら買った1枚のワンピースで、仕事の嫌なことが忘れられることもある。「理解してお金を使うっていいなぁ」と自己満足に浸る帰り道もあった。

しっかり選んだ服は、タグまでしっかりレイアウトしてInstagramにアップするけど、セールで衝動的に買ったオフショルダーのトップスのことは、誰にも話さずしれっと着ている。

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新井会長が言っていた「理想のお客さま」って本当にいるのだろうか。

ルミネの広告を振り返ったら何か分かるだろうか。

株式会社ルミネ

【2012年春】私が「ルミネの広告」を初めて意識したビジュアル。社会人2年目の春でした。「わたし、なんか前進できてないかも」と焦燥感が背中に走ったのを覚えている。

株式会社ルミネ

【2014年秋】中学の同級生にLINEでこの画像を送った。27歳。彼女は恋に悩んでいたし、悔しいけれど、私の言葉よりこの言葉の方が、彼女を救える気がしてしまった。

株式会社ルミネ

【2015年春】この辺まで来ると、「ルミネは次、女たちをどう奮い立たせてくれるんだろう」と待つまでになっていた。「意志」じゃなくて「意思」なんだね。会社の隣の席の先輩が漏らしていた感想。

株式会社ルミネ

【2016年春】こんな真理ってある?!と思いました。ピンクのソックスを履いてる子に、不幸せな子はいないよ、確かにね。

株式会社ルミネ

【2016年秋】春に励まされて、秋に叱咤される。ルミネって本当、女に甘くないです。何でもかんでも「言語化」しようともがいている自分のことを、愛を持って笑ってくれる女の先輩みたいな。

株式会社ルミネ

【2017年秋】新井会長へのインタビューの帰り道、街中で「愛は、声で。」にぶつかった。叫びたいくらいの大きな感情を、いつも胸に持っていたい。

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