SK-II STUDIOが公開した「“VS”シリーズ」は、運命に立ち向かい乗り越えた女性アスリート6組の実体験をもとにしたアニメーション作品群。本シリーズのなかでも、バレーボール日本女子代表チーム・火の鳥NIPPONが「限界」と対峙する姿を描き、話題を呼んでいるのが「VSリミット」だ。

5月1日に公開されて以来、本作にはYouTubeを始めさまざまなプラットフォームで「かっこよすぎる...すごい」「めっちゃ作り込まれてる、、、」などの感想が寄せられている。
理想と現実の狭間で自らの「限界」に立ち向かう、等身大の彼女たちの姿を描いた「VSリミット」は、自分自身と向き合うことの大切さを教えてくれる。
「限界」を決めるのは、自分自身
本作のテーマである「限界」とは、これ以上進めない、あるいはこれより外には出られない境界を意味する。あなたは、自らの「限界」を感じたことがあるだろうか?
「身長、パワー やっぱり足りなかったのか このレベルの試合では体格がモノを言うといわざるを得ません」
リポーターの試合解説の声が響く、「VSリミット」の冒頭シーン。フィジカル面で優れる海外チームに日本が敗退する映像を、中田久美監督が険しい表情で見つめる。


そんな張り詰めた空気のなかで始まる本作は、日本代表チームとしてさらなる高みを目指す火の鳥NIPPONが、自らのリミットを外していく過程を描いている。
幻想的なファンタジーの世界で、彼女たちは「高さ」「身体」「パワー」それぞれの能力を高めるクエストをクリアし、鍵(リミット)を解放する。
3つの鍵を解放し、ついに真の可能性を引き出したと喜ぶ彼女たちだったが、実はそこには未だ見ぬ4つ目の鍵があった。そう、その4つ目の鍵こそが「限界」からの解放だ。

限界から解放された火の鳥NIPPONは、決して敵わないと周囲が信じて疑わなかった相手よりも高く飛び、力強く打ち負かす。
「自分の限界を決めるのは、自分。自分の運命を決めるのも、自分」
作品のエピローグには、自らの限界と運命は自らが決めるという力強いメッセージが発せられる。感動的なラストシーンだ。

「限界なんて無い」は昭和のスポ根なのか?
「そこに限界は無い」なんて言われると、「昭和のスポ根か」と反射的にツッコみたくなってしまう。けれど、本作が訴えるメッセージは、昭和のそれとは異なっている。
そもそも、SK-IIは兼ねてから#CHANGEDESTINYを通じて、自律的に生きようとする女性を称え、エンパワーする取り組みに注力してきた背景がある。
例えば2015年に公開された、アジア人初のボストン・バレエ団プリンシパル(現在、サンフランシスコ・バレエ団プリンシパル)倉永美沙さんをフィーチャーした作品。
この作品は「バレエダンサーに向いていない」と言われた“アジア人ダンサー”の倉永さんが、自身のDNAの限界=運命を変えていく姿を描いており、そのテーマは「VSリミット」とも通じる。
つまりSK-IIが願っているのは、社会的なプレッシャーによる制約としての「限界(=運命)」から女性が解放されること。限界とは社会や他者に定められるものではなく、自分自身が(有るのか無いのかを含め)決めるものだ、というのが同ブランドの主張だと筆者は感じた。

一方で忘れてはいけないのが、社会的なプレッシャーや規範は知らず知らずのうちに内在化されてしまうという点。私自身も恣意的に定めた「限界」を、無自覚に自分へ課していたことがある。
漠然と「受験に失敗した負け組」や「女性はサポート役にしかなれない」などの偏った考えを抱き、自分自身の可能性を矮小化していた。それによって、学生時代に夢みた仕事(それは、文章を書く仕事なのだが)に挑戦する前から諦めていた。
しかしながら、コロナ禍を通じて人の生が有限であることを痛感し、限られた時間を漫然と生きることに疑問を感じた。そして一念発起し、心から自分の時間を使いたいと思える仕事に就こうと転職した(その結果、ありがたいことに今この記事を書かせてもらっている)。
すると、自分が信じて疑わなかった「限界」はどこにも存在せず、肩透かしを食らった。結局、私にとっての「限界」は偏った自分がかけた架空の枷(かせ)でしかなかったのだ。
「“VS”シリーズ」でNo.1にエモい! 作品の見どころ

最後に、「VSリミット」の見どころについて触れたい。過去に紹介した「“VSシリーズ」の作品と同様に、本作もまた細部までこだわり制作されている。
実は「VSリミット」の舞台となる街並みのデザインには、ある工夫が施されている。なんと、1964年の東京オリンピックで活躍した「東洋の魔女」が、レジェンドとして街の壁面に描かれているのだ。

さらにBGMには、1969年に放送開始されたバレーボール部が奮闘する姿を描いた青春アニメ「アタックNo.1」の主題歌が使われている。女子バレーボールの伝統と進化を感じさせる粋な演出だ。
日本の女子バレーの伝統と歴史の延長線上に私たちがいるということ。そして私たちが、その先の新しいものを生み出していくという、挑戦する気持ちを表したフィルムだと感じました。
「VSリミット」の感想をそう述べた、火の鳥NIPPONを率いる中田監督。彼女は、運命を変えたその先に、「一人ひとりが自分の人生を力強く歩んでいく」未来を見据えていると言う。
「一人ひとりが自分の人生を力強く歩んでいってほしい」という思いを込め、「わが道を行く」をチームスローガンとしました。このスローガンのもと、日本のオリジナルバレーを追求していきたい。

「わが道を行く」をスローガンに、自らの限界は自らが決める強い意志を貫く火の鳥NIPPONを描いた「VSリミット」を含む6作品は、バーチャルシティ「SK-II City」で視聴できる。
※「VSリミット」は2019年撮影。出演選手は当時のバレーボール女子日本代表登録選手