7/15,16の二日間に渡る愛媛県西予市での災害ボランティアを終え、17日はまた車で12時間かかる帰途の日となりました。
しかし、帰る前に、私にはなんとしてもやりたいことがありました。
前回の記事でご紹介した「神対応ボランティアセンター」の仕掛け人、香川大学の高橋真里先生に、なんとかお会いして一言ご挨拶できないものだろうか...?
愛媛県西予市から香川県高松市まで移動し、ダメ元で香川大学に電話してみたところ、高橋先生は創造工学部で講義中で、昼になったら会えるかもしれないとのこと!
ともかく香川大学の林町キャンパスに向かい、面会を申し出たところ、講義を終えた高橋真里先生とお会いすることができました!
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私としては、一言ご挨拶して、西予市ボランティアセンターからの「伝言」をお伝えするだけのつもりだったのですが、高橋先生はご自身で撮影した写真をディスプレイに投影し、西予市ボラセンの取り組みを熱心に解説してくださいました。
お昼の時間を使ってしまってすみません。ありがとうございました!
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私もボランティアセンターで見た、西予市野村地区の地図です。
各戸の被害状況が書き込まれています。
肱川沿岸の多くの家が浸水被害を受け、山間では土砂崩れの被害を被った家もあります。
支援が必要な家が数多くあり、それぞれの家の事情が各々異なります。
それぞれの事情にあった支援をどうやって行うか。
大勢来るボランティアをどう割り振り、どうやって支援先とマッチングするか。
これらは、災害の混乱の最中にあるボランティアセンターとしては厳しい課題であり、過去の事例としては、マッチングまで2時間ほどもかかることもあったとのことです。
その間、せっかく来ていただいたボランティアはただ待機。
貴重な時間が無為に失われます。
この課題を、西予市ボランティアセンターは劇的に改善しました。
この手法を「西予モデル」と名付け、全国的に普及させるべきと思います。
この西予モデルについてご説明しましょう!
「西予モデル」 a.k.a.「ドラクエ小分けモデル」
「西予モデル」とは、言い換えれば「ドラクエ小分けモデル」と言えましょう。
どういうことかと言いますと...。
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まず、受付を済ませたボランティアに、あらかじめ設置した椅子に座っていただきます。
5列×4列×2、40席のブロックが2箇所用意されていました。
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40人に対して1人のボラセンスタッフがオリエンテーションを行います。
最大で80人のボランティアに、一気にオリエンテーションを行うことが可能です。
オリエンテーションが終わったら、現地対応のボラセンスタッフが40人のグループをそのまま連れ出しま
す。
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このぞろぞろとついていく様子を「ドラクエ」と表現してみました^^
数珠つなぎで歩きながら現地へ向かい、支援先ごとに必要な人数を次々に切り離していきます。
そして切り離したグループごとにボランティアリーダーを決めます。
そのリーダーには、活動終了後に報告書を書いてもらいます。
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「ドラクエ」で歩いていって「小分け」していくので「ドラクエ小分けモデル」というわけです^^
このやり方は、何しろマッチングが早いのです。
板橋区から同行した熟練ボランティアさんは「8時40分に活動開始できる現場なんて見たことない」と驚いていました。
マッチングが早ければその分活動時間が確保でき、支援先としても満足いく支援になりやすくなります。
この「西予モデル」。
まだまだボランティア支援が必要な西日本各地において、ぜひ採用してみてはいかがでしょうか?
体制は毎日見直し
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受付の動線について説明する高橋先生。
ボランティアセンターの体制は、その日の反省をもとに毎日見直し、改善を繰り返したそうです。
そのたびごとにこうした資料を作り直し、配布と周知を行う。
こうした見直しの多くは、ボラセンのスタッフが自ら考え出したものだ、と高橋先生は語っていました。
活動時間の厳守を徹底
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酷暑の中、関係者全員の健康を守るため、活動時間の厳守が徹底されていました。
ボランティアは、ついつい働きすぎてしまいます。
熱中症も怖いですし、昼に休まず働いていると、やってもらっている支援先も引け目を感じ、休めなくなってしまいます。
また、夕方になっても活動を続けていると、ボランティアセンターのほうで報告を受けての反映や見直しを行う時間が夜遅くになってしまい、スタッフが疲弊してしまいます。
このため、「昼休憩は12時から必ず取る」「30分ごとに休憩を取る」「午後は15時で必ず活動を終える」ということが徹底されていました。
傾聴するリーダー
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これは高橋先生が撮影した写真で、日付は7/13、西予市社協の職員による「終礼」の様子です。
この中央奥のほうに小さく写っているのが、西予市社協の常務だそうです。
この常務さんが大変すばらしいリーダーだったとのことです。
この常務さんのやり方は、職員の話をひたすら聞くというもの。
愚痴、溜め込んだ思い、連日積み重なる疲れ...。
そういったものをまず徹底的に聞く。
また自分から提案する際も、全員の意向を確認する。
こうした「みんなを支えるリーダーシップ」があればこそ、西予市ボランティアセンターはすばらしいものになったのだ、と高橋先生は語っていました。
西予モデルは「優しさ」でできている
西予市モデルは「ドラクエ小分けモデル」だけでできているわけではなく、
・すべての関係者について考え抜く
・一人ひとりのスタッフの力とアイディアを引き出す
・振り返りと改善、つまりPDCAサイクルをすばやく回す
・「見える化」して周知することを徹底する
このような、見事な「ボトムアップ型マネジメント」によって成立しているわけですね。
高橋先生は「西予モデル」の成功理由を、
「とにかく、西予市社協のみなさんが、本当に優しい方ばかりだったからです。それに尽きます」
と語っていました。
西予市モデルは「優しさ」でできている、というわけですね^^
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そして、さらに多くの外部からの協力によって「西予市モデル」が構築されていったとのことです。
この場を借りまして、高橋先生から紹介いただいた協力団体に、高橋先生に成り代わりまして御礼を申し上げたいと思います。
順不同にてご容赦ください。
Thanks to
・支援P(事務局:さくらネット)
・一般社団法人オープンジャパン
・一般社団法人コミュニティ・4・チルドレン
・災害情報支援ポータル
・ジョージ防災研究所
・日本青年会議所 四国地区愛媛ブロック協議会
・愛媛大学 社会共創学部
・エム・ビー・エス株式会社
・横浜市総務局危機管理室
・公益社団法人 さぬき青年会
・香川県社会福祉協議会
・日本防災士会
もしご協力いただいた団体に漏れがありましたら、私の手違いによるものです。
何卒ご容赦をいただければと思います。
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「『西予市モデル』は、私が作ったわけではありません。私は何もしていません。西予市社協を中心とした多くの皆様が、みんなで一致協力して、改善を繰り返して作り上げたモデルです」
と、高橋先生は謙遜します。
しかし、私は、西予市ボランティアセンターから高橋先生への「伝言」を預かっていました。
それは、
「今すぐ来てほしい」
でした。
本当に何もしていない人に「今すぐ来てほしい」なんて、言うわけないでしょう、高橋先生?^^