「安・近・短」の海外旅行先と言えば、韓国や台湾、グアムといったところが定番だったが、近年新たな旅行先が日本人旅行客の人気を集めている。極東ロシアの都市・ウラジオストクだ。年明けには日本航空(JAL)と全日空(ANA)も成田から直行便を就航させ、ますます身近になりそうだ。
ウラジオストクは、遠くモスクワまでつながるシベリア鉄道の始発駅がある港町。レトロな建物が並ぶ雰囲気で「日本に一番近いヨーロッパ」とも言われている。北海道の函館は、明治時代の大火の後、ウラジオストクの町並みをモデルするよう、市役所が指導したという話も残る。戦前は約6000人もの日本人が住んでいた記録もあり、実は日本と縁の深い町だ。
一方でロシアというと、今までの日本人にとって、あまり旅行先としては一般的とは言えなかった。日本政府観光局の統計によると、2017年の統計で、日本人旅行客のうち231万人と最も多くが韓国を訪問している。また、台湾には189万人、グアムには62万人がそれぞれ訪れている。一方ロシアは国全体でも10万人にとどまっている。
こうした要因の一つになってきたのが、訪問する際に必要な手続きの煩雑さだ。ロシアに日本人が入国する際にはビザの取得が求められ、直接大使館などで申請をするか、代理店などを通じてビザを取得する必要がある。
しかし2017年8月から、ウラジオストクを含む極東ロシアに限って、ネットで手続きが出来る電子ビザが導入され、手間が一気に簡素化された。
先ほど2017年の日本人旅行客の訪問数を紹介したが、2016年と比べると、それでも20%以上増やしており、ビザの簡素化の影響が見られる。
こうしたことに後押しを受け、2018年には「地球の歩き方Plat」がウラジオストクを単独で扱ったガイドブックを出した。
日本とウラジオストクの間には、すでにロシアの航空会社が成田や関西に直行便を飛ばしている。これに加えて2020年には、日系の航空会社が相次いで成田からの定期便を就航させる。
JALは2月28日から、ANAは3月16日からそれぞれ週2便が就航予定。両社とも就航を伝えるサイトでは、成田から2時間半で行ける旅行先であることをアピール。JALは、ウラジオストクを週末に気軽に訪れる旅行先と提案している。
日本ではなじみの薄いロシア料理や中央アジア料理に舌鼓をうち、国立マリインスキー劇場沿海地方ステージでは、本場ロシアのバレエが楽しめる。これまでの「安近短」の旅行先とはひと味違う選択肢として、定着していくか注目される。