新型コロナウイルスの感染拡大により、あんまマッサージ指圧・はり・きゅう(あはき)業を営む視覚障害者が窮地に立たされている。仕事で使う消毒液やマスクを入手できず、客も減っているからだ。事態を重くみた日本視覚障害者団体連合(日視連・竹下義樹会長)は4月22日、厚生労働大臣、文部科学大臣宛てに要望書を提出。「あはき業には多くの視覚障害者が就業しているが、仕事を失いかねない。消毒液などを優先的に入手できるようにしてほしい」としている。
あはき業は政府の緊急事態宣言で休業を要請されていないが、自主的に休業した治療院は少なくない。
東京都北区内で1990年から治療院を営む全盲の遠藤吉博さん(62)もその一人だ。「消毒用のエタノールが全く手に入らない。治療院の家賃などで経費が毎月10万円かかるが、それでも休まざるを得ない」と嘆く。
常連さんは50~60人で、消毒液(720cc)が月に最低1本は必要という遠藤さん。3月からはお客も減った。緊急事態宣言発令の翌日、4月8日から休み始めた。
お客さんに触れることなしに成り立たないのがあはき業。無症状の人でも感染している可能性があり、他人にうつすこともありえるという新型コロナウイルスは脅威だ。
1回の施術で50分は体に接触する遠藤さん。「常連さんは口に出しては言わないけれどやはり感染を気にしているようだ」。
視覚障害者が通院や買い物の際、ヘルパーの肩に手をかけるなどして歩いたり、ヘルパーに代筆・代読を頼んだりできる障害福祉サービス「同行援護」(全国で毎月約2万7000人が利用)もピンチだ。
東京都盲人福祉協会常任理事の遠藤さんは、月に15回以上利用していたが、4月は半減。外出する機会が減ったことも理由だが「ヘルパーさんも私もお互いに感染を気にしている」と明かす。
日視連が3月23日から電話相談を実施したところ、「同行援護を利用できない」とする相談が10件。その一方で「利用控えが多く、事業所の経営が成り立たない」とする相談が6件あった。
日視連は要望書で、「今のままだと同行援護制度自体が崩壊しかねない」と指摘。同行援護事業所へのマスクの優先配布や休業に伴う従事者の所得補償などを求めた。