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旧ソ連がドイツに勝利してから78年が経ったことを祝う軍事パレードが、ロシアの首都モスクワで5月9日に開催された。
しかし、参加した戦車はたった1両のみ。第二次大戦に投入されたの同じ旧式のモデルだったことに世界から驚きの声が上がった。
2022年から始まったウクライナ侵略に多くの戦車を使っていることで、軍事パレード用の戦車が足りなかった可能性がある。
■「ロシア軍の一層の劣化が示された」と戦争研究所
ロシア国営タス通信によると、今回の式典はプーチン大統領らが参加。ベラルーシなど旧ソ連の友好国の首脳を招いて、ウクライナ戦争に参加する530人の戦闘員を含む8000人の兵士が参加したという。
プーチン政権を威信をかけるこの軍事パレードには例年、最新設計の「T-14」など多くの戦車が参加するが、今回参加した戦車は、第二次大戦中に使われた「T-34」が1両のみと寂しい光景になった。
アメリカのシンクタンク「戦争研究所」は同日、「戦勝記念日のイベントは、通常よりもはるかに少ない軍備によるものだった。第二次世界大戦時代のT-34/85が1両のみで、ロシアがウクライナでどうしても必要としている近代戦車はなかった」というレポートを公式サイトに掲載した。「ロシア軍の一層の劣化が示された」と分析している。
■T-34とは、どんな戦車?
T-34は、第二次大戦前の1937年にBT戦車の後継として旧ソ連で開発が始まり、「T-34/76」が1940年に完成した。砲弾を弾くための「傾斜装甲」や、火炎瓶攻撃でも引火しにくいディーゼルエンジン、76.2mm戦車砲など当時としては先進的な装備だった。全ての能力で、当時存在した戦車を凌駕していた。
1941年の独ソ開戦で、この戦車と遭遇したドイツ軍は「T-34ショック」と言われるほどのパニックに陥ったという。1943年からは、85mm砲を搭載するなど改良した「T-34/85」の生産が始まり、ベルリン侵攻の原動力となった。
旧ソ連での生産は1946年に終わるが、その後もポーランドと旧チェコスロバキアで生産された。3カ国で両タイプを合わせて8万4070両が生産され、第二次大戦後は旧ソ連による友好国への軍事援助の一環として39カ国に輸出。朝鮮戦争や中東戦争、ベトナム戦争に使われたという。
2019年にロシアは博物館や軍事パレード用に、ラオスが保管していた30両の「T-34/85」を引き取っている。1950年代半ばに旧チェコスロバキアでライセンス生産されたものだという。今回の軍事パレードで使用されたのも、ラオスから持ち込まれた車両の可能性がある。
■たった1両の戦車の寂しいパレードの光景
ロシア国営メディア「RT」のスペイン語版のTwitterに、今回の軍事パレードに参加したT-34の動画が掲載されている。
【参考図書】
・『世界の戦車パーフェクトBOOK』(コスミック出版)
・サイエンス・アイ新書『世界の傑作戦車50』 (SBクリエイティブ)