ヴィクトリアズ・シークレットのショーを見て、自分が肥満体型だと感じた話

モデルたちには、わずかな欠点も見られなかった。

世界中のモデルにとって、ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーは神聖なステージだ。少なくとも、モデルたちはインタビューでそう主張している。だから、ジャーナリストとしてファッションショーの招待状を受け取った時、私は本当に嬉しかった。

招待状の内容はわかりやすくて、高圧的だった。パーティーへ参加したいなら必ずガイドラインに従ってください、と書かれていた。持ち込むハンドバッグはサイズが決められ、セキュリティ対策についても細かく記されていた。厳格なドレスコードがあり、「カクテルアタイア(カクテルパーティ用の格好)」を着てくるよう指定された。写真や動画撮影は厳禁。

会場に到着した私は、列に並んだ。すぐに会場には入れず、また、別の列に並ぶ。待っている最中、タキシードに蝶ネクタイを締めた男性や、スパンコールドレスを着た女性たちの群れに絶え間なく出会った。その時点で、通りすぎる人たちの足は普通の人よりも長く見えた。

ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーは、これまで経験したことがないものだった。席についた途端、拡声器の呼びかけが聞こえて、私は類いまれなる「ユニークなイベント」に今まさしく参加しているのだと気づいた。それと同時に、12月5日に放送されるこのファッションショーを見ると思われる、世界中の何百万、何千万もの視聴者のことも思い出した。

観客ひとりひとりに、小さなパンフレットが手渡された。このブランドの顔である、フラッグシップモデルの美しいスケッチが描かれている。またしても、彼女たちの美しい脚が目に留まった。長く、細く、非の打ち所がない。とはいえ、所詮それらはスケッチだ。

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Adriana Lima 💛さん(@adrianalimaa12)が投稿した写真 -

ファッションショーはあらゆるカラーに溢れていた。最初に、アジアンテイストなモチーフを刺繍で施したランジェリーを着たモデルが登場した。その次は、高いスティレットヒールを穿いて、スポーツジム用のアウトフィットを着たモデル。ランウェイを歩くモデルが顔から転んでしまわないか心配するのをやめて、ヴィクトリアズ・シークレットの世界観に慣れてくると、モデルたちの体型が気になってきた。

一般的に、オートクチュールのコレクションでは、モデルの体型にはほとんど注意が払われない。彼女たちが着ている服の方が重要だからだ。とは言っても、ヴィクトリアズ・シークレットのショーと同じように、目の前を歩くモデルたちの細さは変わらない。それでもオートクチュールでは、モデルたちの体型は切り離してショーに集中できる。

なのに、ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーでは、彼女たちを飾るランジェリーだけではなくてモデルそのものが目立っていた。エンジェルズは派手にポーズをとって、ダンスをして、ライブ演奏をしている歌手と楽しそうに絡む。カメラに向かってハートマークを描いて、観客に挨拶する。モデルたちはみんな、身に着けているランジェリーと同じようにエキサイティングだった。

胸は揺れるけれど、揺れすぎるほどじゃない。モデルたちのお腹は真っ平らで、綺麗な腹筋が浮かんでいて、セルライトのない足をためらいなく見せびらかす。ソーシャルメディア上に溢れかえったエンジェルズの写真や動画を見て、私は個人的に少しショックを受けた。そこには、わずかな欠点すら存在しなかったから。

きっと後ろから見たら完全ではないでしょう、と自分に言い聞かせた。でも、間違っていた。ランウェイを歩く彼女たちのお尻はピクリとも動かない。太ももには1グラムの脂肪もない。何度か私の前をジジ・ハディッドが通り過ぎたが、かつてファッションディレクターたちがジジは他のモデルより体重が重いと考えていたという話が、本当に信じられなかった。ジジの妹であるベラは初めてのショー出演だったが、いっそう細身に見えた。

ケンダル・ジェンナー、アドリアナ・リマ、リリー・オルドリッジ、ロミー・ストリドやその他のモデルたちを見て、私は自分自身を疑ってしまった。私って、どうなの?彼女たちが住む世界に、私の居場所なんてあるの?彼女たちの完璧さを手に入れるために、私はもっと努力するべきなの?

ファッションというのは、もっとさまざまな形とサイズ、多種多様な体型にオープンなものだと思っていた。でも、ヴィクトリアズ・シークレットのファッションショーには、「プラスサイズ」のモデルは見渡す限り1人もいなかった。でも、これはパーティーだ。ブルーノ・マーズがステージに登場し、その後にザ・ウィークエンドが出演した。ショーが続く中、私はあるパターンが繰り返されていることに気づいた。ランウェイを歩くモデルたちはみな、ランウェイの先にあるカメラ一点だけを見つめていて、まったく同じ道筋を辿って歩いていた。

テレビではごく自然に見えることが、リアルで見ると奇妙だ。モデルたちは、本当に私たちと同じ空間にいるのだろうか?本物なのだろうか?私はまわりの観客を見渡してみて、なぜかすごく安心した。まわりに座っていた人たちはみんな太っていたり、痩せていたり、さまざまだった。毎日スポーツやシェイプアップをしているようには思えない体型ばかりだった。少なくとも、ぱっと見る限りは。

1時間のショーが終わり、アフターパーティーの時間になった。ウェイターがシャンパンとターコイズカラーのカクテルを運んできた。私は、カクテルを手に取ってみた。少し口に含んでみて、そのカクテルはシャンパンよりはるかに甘ったるかった。大失敗だ。

セキュリティゲートを通過して、会場の外に出た。冷たい空気に触れて、シャンゼリゼ通りに出ると、クリスマスマーケットの屋台から美味しそうな香りがした。ヴィクトリアズ・シークレットのショーを見終わって立ち尽くしていた私は、お腹が空いていてしょうがなかった(そして、どうやらそれは私だけではなかったみたいだ)。

ハフィントンポストフランス版に掲載された記事を翻訳しました。

■関連画像集「ヴィクトリアズ・シークレット・ファッションショー2016」

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