高齢化や若者の流出による人口減少、それに伴う地域経済の衰退...。
日本各地の地方都市が多くの課題に直面しており、「地方創生」「地域活性化」に向けた取り組みが急務となっている。
そんな中、新たなまちづくりのモデルケースとして、全国の自治体から注目を集める場所がある。瀬戸内の中央に位置する広島県福山市だ。
「古きを活かし、にぎわいを生む」。その手法とは?
福山市再生のための「資源」は何?
福山市は、広島市と岡山市の中間に位置する広島県内第二の都市。およそ400年前には福山城の城下町として栄え、鉄鋼業等の重工業やデニムなどの繊維業で発展してきた。
しかし、多くの地方都市同様、福山市も若者層を中心とする人口流出に悩まされることとなる。
駅前からは大型店舗が次々撤退。幹線道路沿いには自家用車での集客を目的とした大型駐車場を伴う、いわゆる「郊外型店舗」が急増し、空き地や空き家が散在する「スポンジ化」が進行した。生産性の悪化、コミュニティの存続危機、さらに、治安や景観の悪化による住環境や観光業への影響、都市の衰退につながる恐れがあるという見方もある。
こうした状況を打破しようと、市は住民、事業者、行政が連携して地域再生に取り組む方向性を示した「福山駅前再生ビジョン」を2018年に発表。さまざまな「プレイヤー」を巻き込みながら、福山らしいまちづくりを進めてきた。
その特徴は、言うなれば「古きを活かし、にぎわいを生む」手法。既存のビルや公園、住民の知恵など、地域の資源を活用し、人が集まる空間を生み出すことを目指している。雑居ビルの一室をリノベーションして生まれたゲストハウスや、空き店舗を活用した飲食店などが所々に見られ、「古」と「新」が共存した街並みが実にユニークだ。
ハフポストでは、福山市でのユニークな「持続可能なまちづくり」について語り合ってもらった。
福山で進む、持続可能な開発とは
少子高齢化、地方都市空洞化などの社会問題の多様化とともに、各都市の課題や資源に合わせたまちづくりが必要になる。福山市のまちづくりに隠された、そのヒントとは?
── 「古きを活かして、にぎわいを生む」。福山市独自のまちづくりが生まれた経緯を教えてください。
中山 従来型の都市再生の手法は「スクラップアンドビルド」、つまり既存の建物を壊し、商業施設など人が集まれる場所を新たに作るという手法。しかし、それでは地域の課題を根本的に解決していることにならない可能性が高く、にぎわいの持続という点でも、上手くいかないことがあります。
そんな中、福山市が掲げたのが「リノベーションまちづくり」。地域の特性や資源を生かして人が集まる仕組みを作り、新たな事業・雇用を生み出すことでエリア全体の価値を向上させ,民間が投資しやすい環境を整える、というやり方です。
古賀 比較的近い尾道とよく比較されて、「福山って何もないよね」というのは長年言われてきました(笑)。でも、まちづくりに携わる中で気づいたのは、比較ではなく、自分の街を知ることが大切だということ。
自分の街は、今どうなっているのか? 何があるのか? ということを知るのが第一歩かなと。
藤本 私は福山が地元ですが、長年住んでいると魅力が見えにくくなってしまう。“外”から来た人たちの視点はとても貴重でした。
自然、利便性、歴史、さかんなものづくり、そして街並み...。改めて、福山には魅力がたくさんあることに気づかされました。そうした特徴を武器にしていくことで、地域の方々を巻き込んだまちづくりができるのだと感じています。そのためにも、さまざまなプレイヤーが連携することが大切だな、と。
古賀 それは感じますね。まちづくりにおいては、空間や施設などハード面での資源も大切ですが、「プレイヤー」もとても重要。当事者、担い手が増えて、ソフト面でもハード面でも協力していくことで盛り上がるし、アイデアもたくさん出て、地域全体を巻き込んでいけるパワーになる。
福山って、変な人がたくさんいるんですよ。もちろん良い意味で(笑)。公園や駐車場など空きスペースを活用したイベントをおこなってきましたが、たくさんの人が来てくれるし、参加者が続々とまちづくりのプレイヤーになっていく。すごくエネルギーがある地域だな、と。
中山 URでは、福山市、leukさんらとアイデアを出し合い、道路空間や青空駐車場を活用し、駅周辺のにぎわい創出に向けた実証実験をおこなってきました。古賀さんが話す通り、福山のみなさんはエネルギーがすごい。今までも「街をなんとかしたい」という思いはあったのだと思いますが、それをぶつける場所や、集う機会、きっかけがなかっただけなのかなと感じます。
藤本 福山はもともと中小企業も多く、起業家や実業家を多く輩出してきた地域。「福山の人はエネルギーがある」という風に言ってもらえて、そういう気質の方が多いんだなと、改めて気づかされました。
── リノベーションやイベントによるまちづくり、そこから皆さんはどんな「効果」を感じていますか?
古賀 まちづくりの「当事者」は確実に増えています。
福山には公園が700以上あるんですよ、驚きますよね? その特徴を生かして、様々なイベントをおこなってきました。
公園って「みんなで使う」という意識があって、逆に言えば「誰のものでもない」。それが、地域の人と作り上げるイベントを仕掛けることで「私たちのもの」という気持ちが高まっていると感じています。「公園ってこんな使い方もできるんだ」「じゃあ、次はこんなことをしてみるといいんじゃない?」と、まちづくりの当事者がどんどん増えていく。
藤本 当社フューレックでは、古いビルの土地をURさんが、当社がビルを買い取ってリノベーション、運営するという取り組みもしています。ハード面での連携ですね。
古く、空き部屋が発生していた雑居ビルをリノベーションして誕生したのが、ゲストハウス「AREA INN FUSHIMICHO FUKUYAMA CASTLE SIDE」です。コンセプトは、街全体を宿に見立てた「まちやど」。このゲストハウスを拠点に観光や飲食を楽しんでもらったり、瀬戸内の島巡りに出かけてもらったりすることを狙いとしています。
古賀 「歩いて楽しめる街」というのもミッションの一つですね。駐車場の増加は「スポンジ化」の一因にもなりますし、福山には新幹線が停まりますから。今ある空間、建物をリノベーションして、歩いて、見て楽しめる街を作ることができればと。
中山 実証実験に出店した飲食店が、その後、実際に店舗として開業した例もあります。事業や雇用も創出されており、まさに私たちが目指すまちづくりが進んでいる実感があります。
URはまちづくりの担い手ではありますが、いつかは地元の企業、住民の皆さんにバトンタッチをするときがくる。だからこそ、地元の資源を使い、そこに住む皆さんを巻き込んでいくことが本当に大切だと感じています。福山には空間や場所があり、人のエネルギーも十分にある。福山市さん、フューレックさん、leukさんらと協力し合いながら地域が持つ特徴を存分に生かし、ここでしかできないまちづくりをおこなっているという自負があります。
最近では、全国の地方自治体や民間の団体などからの視察も後を絶たないと聞いています。直面する課題も、持つ特徴や資源も地域それぞれ。福山をはじめURが携わる地方再生のあり方が、何かのヒントになればうれしいです。
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今あるものを活用して、新たなにぎわいを生む──。持続可能な開発は、最近でこそ注目を集めているが、UR都市機構はその創成期から、あらゆる事業において「人が輝く都市をめざして、美しく安全で快適なまちをプロデュースする」ことを掲げてきた。
戦後、住宅不足の解消と、環境にも人にも優しい街を目指してスタートしたURの歴史。65年におよぶ住まいとまちづくりのノウハウを生かした持続可能な開発は、時代によって変化する社会課題に応じて、その手法を見直しながら発展を続けている。
全ての世代が住みやすい場所を目指した、団地でのコミュニティづくり。開発区域に暮らす人や、まちびらき後の地域の役割やあり方を第一に考えた都心での大規模開発。そして、地域の特性を生かした地方再生。ノウハウを生かしたさまざまな視点と手法で、持続可能な社会の実現を目指しているのだ。
SDGsやサステナビリティへの取り組みが、ますます重要視される昨今。今後のURの取り組みから、ますます目が離せなくなりそうだ。