「国連機関UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の一部職員が、武装組織ハマスによる10月7日のイスラエル襲撃に関与した疑いがある」というイスラエル側の主張を受け、日本政府は1月28日、UNRWAへの追加の資金拠出を一時停止すると発表した。
この疑惑をめぐり、アメリカやドイツ、イギリス、カナダなどもUNRWAへの資金拠出を停止している。
UNRWAとは?
UNRWAは、イスラエル建国を発端にした1948年の第1次中東戦争後に難民となった、約70万人のパレスチナ人の救済や人道支援を目的に設置された国連機関だ。
支援内容は、教育や医療保健、社会保障サービス、難民キャンプのインフラ・環境改善、保護、小規模金融など多岐にわたり、ガザ地区やヨルダン川西岸地区、ヨルダン、レバノン、シリアで活動している。
UNRWAの活動開始は1950年で、日本は1953年から同機関を通じてパレスチナ難民支援を続けている。
問題になった疑惑とは?
UNRWAはパレスチナ難民らの支援のために、多くの現地スタッフを雇用している。ガザでは約1万3000人のパレスチナ人スタッフが活動しているが、イスラエルはUNRWAで働く12人の職員が10月7日のハマスの襲撃に関わったと主張している。
これを受けて、UNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長は1月26日、人道支援を継続するために、疑惑を指摘された職員を解雇すると発表。
疑惑を調査しており、「テロ行為に関与したUNRWA職員は、刑事訴追を含め責任を問われることになる」と強調した。
国連によると、12人のUNRWA職員のうち9人が即解雇になり、1人は死亡が確認され、残りの2人はまだ身元確認中だ。
UNRWAが職員の解雇を発表した一方で、最大の援助国であるアメリカは26日に資金拠出提供を一時停止した。これまでに、イギリス、カナダ、オーストラリア、ドイツ、イタリア、オランダ、スイス、フィンランドも援助を停止している。
日本の外務省も1月28日、UNRWAによる調査が行われて対応策が検討される当面の間は、追加の資金拠出を一時停止すると発表した。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、疑惑を「忌まわしい行為」と非難し「テロ行為に関わった職員は責任を問われることになる」と強調した一方で、資金拠出が再開されなければ2月にも支援が縮小される可能性があるとして、停止を発表した各国政府に対し、UNRWAの活動継続を保障するよう求めている。
UNRWAによると、ガザでは200万人が同機関の支援に頼っている。ラザリーニ事務局長も「各国の資金拠出削減の決定により、UNRWAによる人命救助のための支援が終了しようとしています。ガザで200万人の命綱になっている私たちの人道支援が崩壊しつつあります」と述べて、支援継続を訴えている。
UNRWAは、ガザでは食料が不足して、人々が飢餓に瀕していると警告している。
ラザリーニ事務局長は「戦争が継続し、人道支援がますます必要とされ、飢饉が迫っている中で、数人の行動に関連した疑惑に基づいてこのような決定が下されることに、私はショックを受けています。ガザのパレスチナ人に、新たな集団処罰は必要ありません。(資金拠出停止は)私たち全員を汚します」とも述べている。
ガザ保健省によると、10月7日にイスラエルとハマスの武力衝突が始まって以来、これまでに2万6000人以上のパレスチナ人がガザで死亡している。
UNRWAは、少なくとも152人のUNRWA職員がガザで死亡したと発表している。