あなたは、日々の生活のなかで地球環境にやさしい暮らしをしていますか?
エコバッグにマイボトル、詰め替えパック、リサイクル素材で作られた洋服……こうしたサステナブルなプロダクトをうまく活用することで、環境負荷を減らしている。そんな人も多いのでは。
では、生理用品や紙おむつ、ペット用品はどうでしょう?
世界環境デーに発表されたユニ・チャームの『日用品とサステナブル意識・行動に関する調査』によると、約7割の人が生理用品や育児/介護用紙おむつ、ペット用品において、サステナビリティを意識した行動をしたいと考えているが、まだできていないそうです。
一方、とくに育児や介護、生理をめぐっては種々の社会課題が絡み合い、心理的・身体的・経済的な負担や困難を感じやすい側面もあります。こうした日用品カテゴリにおいて、どのようにサステナビリティを推進していけばよいのか――。
世界に先駆けて紙おむつの水平リサイクル(※)を実現するなど、日用品カテゴリにおけるサステナビリティに取り組むユニ・チャームを取材しました。
※使用済みの製品を原料として使い、同じ製品を新たにつくること
「えらぶ、つかう、めぐらせる」今からできるサステナブルな行動を提案
『日用品とサステナブル意識・行動に関する調査』によると、生理用品の購買や使用においてサステナビリティを考慮している人は、日用品17カテゴリ(下に掲載しているユニ・チャーム『日用品とサステナブル意識・行動に関する調査』のグラフを参照)のなかで最も少なく、8%にとどまっています。
次いで、ペット用品(7.7%)、軽失禁用品・用具(10.0%)、育児用品(9.7%)、介護用品(14.7%)など、主にケアワークに関わる日用品が続く結果となりました。
一方、こうした日用品に関しては、サステナブルな行動をしたいが何をしていいかわからないと回答している人も多く、一定のニーズがあることも示唆されています。
この調査結果に対して、「我々メーカーからのご提案が不足していたことで、生理用品や紙おむつなどの分野でも、サステナブルな行動ができることが伝わっていなかったのではないか」とユニ・チャーム上席執行役員 ESG本部長・上田健次さんは指摘します。
「SDGs達成」を企業のパーパスとして掲げる同社は、リサイクルをはじめとしたサステナビリティに注力しており、2022年には使用済み紙おむつのパルプを新品の紙おむつの一部に再生利用する、水平リサイクルを世界で初めて実現。
今年4月から、イオン九州のスーパーやコーナン商事のホームセンター、ユニ・チャームの公式通販サイトで、リサイクル素材を使った紙おむつやペット用品を販売しています。
そして、6月5日の世界環境デーに合わせ、サステナブルキーワード「えらぶ、つかう、めぐらせる」を発表。「あなたにも、地球にも、ここちよい暮らし」を目指し、商品の選び方やゴミを減らす使い方、使用済み素材の再利用など、今からできるサステナブルな行動を提案していくといいます。
「えらぶ、つかう、めぐらせる」に沿って紹介されているのは、生理用品や介護用紙おむつ、ペット用品などの全6品。
まず、「えらぶ」では、環境負荷の低減につながる商品選びを提案。たとえば、猫用システムトイレの『デオトイレ』を選ぶと、1週間交換しなくても臭いがこもらないため、猫砂を使うよりもゴミの量を約51%削減(※)できます。
※固まるタイプの紙製の猫砂と1カ月使用量で算出
「つかう」では、いくつかの商品を組み合わせることで、資材使用量を削減する使い方を提案。その代表例が、体に挟んで直接吸収してくれる生理用品『ソフィ シンクロフィット』です。いつものナプキンと組み合わせて使うことで、約2時間分の吸収力をプラスオンでき、いつもより安心して過ごせます。さらにナプキンを2枚交換するのと比べ、ゴミの量を約36%削減(※)することが可能。
※『はだおもい 羽つき 23cm』を 2 枚使用時と、同商品 1 枚と『ソフィ シンクロフィット(体につける生理用品)』1 枚の組み合わせ使用時を比較した場合
また、介護用紙おむつ『ライフリー うす型軽快パンツ』と『ライフリー ズレずに安心 紙パンツ用尿とりパッド』の組み合わせでは、ゴミの量を約20%削減(※)できます。
※うす型軽快パンツ4枚使用をうす型軽快パンツ1枚とズレずに安心紙パンツ用尿とりパッド2回吸収を4枚に組み合わせて使用した場合
最後に「めぐらせる」では、紙おむつなどの水平リサイクルを提案。「ライフリー」や「マミーポコパンツ」「デオトイレ」の一部商品において、リサイクルしたパルプを配合しています。
「利便性」と「サステナビリティ」を両立する。ユニ・チャームのものづくり
『日用品とサステナブル意識・行動に関する調査』によると、サステナブルな行動に前向きな一方、環境への配慮のために「商品の価格は上げて欲しくない」「無理なく自分ができそうなものから取り入れていきたい」「商品の快適性や利便性を落として欲しくない」というユーザーの声も多くあります。
一般的に、サステナブルな商品は「価格が高い」「手間が増える」などのイメージをもたれがち。
しかし、ユニ・チャームのものづくりにおいて、商品の「利便性やコストパフォーマンス」と「サステナビリティ」はトレードオフの関係ではなく、むしろユーザーの便益を追求すると必然的にサステナビリティも高まると、ユニ・チャーム ベビーケアマーケティング本部 ブランドマネジャー・福嶋美香さんは語ります。
「私たちの商品開発思想には、二つの異なる要求『絶対に機能は落さない』と『より少ない資源で作れるようにする』は同時に実現できるという考えがあります。
たとえば生理用ナプキンは、お客様の使いやすさを追及すると、よりスリムな設計を目指していくわけですよね。スリムになるということは、必然的に資源使用料の削減につながる。そして、環境負荷の低減へとつながっていきます。
つまり、資源使用量を削減しコストを抑制しながら、より良いものをお客様へお届けすることができる。事業と社会の持続可能性を高める、双方にとってメリットがあるものづくりが理想だと思っています」
一方、育児や介護などのカテゴリにおいては、「商品を買う人」と「実際に使う人」が異なるケースが多い。それゆえ、両者のニーズを汲んだ商品開発をする必要があり、難易度が上がるとグローバルマーケティングコミュニケーション本部企画部 プランナー・福田愛さんは指摘します。
「お客様の生活について耳を傾け、大事にしている価値観や課題感を生活者視点で捉え、商品開発に活かすことを心がけています(福田さん)」
「ライフリー」も、こうしたユニ・チャームならではの開発思想から生まれた商品だといいます。
「介護者の方は、日頃から被介護者の方のおむつ交換を手伝うことがあります。それはなぜかというと、転倒の心配があるから。『つい手伝ってしまう』というインサイトがあるんです。
ですが、本当はご自身で交換できたほうが被介護者の方も嬉しかったり、その嬉しい表情を見て介護者の方も嬉しくなったりする。
そうした潜在的なニーズを汲み上げて生まれたのが、『ライフリー ズレずに安心 紙パンツ用尿とりパッド』なんです(福田さん)」
尿とりパッドと紙パンツを併用することで、パッドの交換だけで済むようになる。その結果、できるだけ介護者の助けを借りずに本人が簡単に着脱できるだけでなく、ゴミの量を削減し、さらにコストパフォーマンスも高まるそうです。
社会課題の解決こそ、事業成長の源泉
生活者の悩みに寄り添い、社会課題の解決に資するものづくりを目指すユニ・チャーム。その精神はどこから生まれたのでしょう? 上田さんは次のように語ります。
「ユニ・チャームの社史を振り返ってみると、それは社会課題の解決を通じて事業を成長させてきた歴史であり、『社会正義』を模索し実践してきた歴史でもあります。
たとえば、ユニ・チャームの大きな転換点となった、ナプキン事業への参入。それは女性の社会進出が進んでいなかった当時の日本において、『学校へ行きたい』『働きたい』という女性の悩みに対する、ユニ・チャームなりの解決策でした。
このように社会課題を解決していくことが、結果的にユニ・チャームという会社を成長させる。そんな感覚が、我々のなかに強くあるんです。
そして現在、地球環境に対して、人間活動の負荷があまりにも大きくなりすぎているという課題があります。これに対して私たちは、今まで享受してきた便利で衛生的な生活を棄損せず、どのように環境負荷を減らしていくのか? を考えています。その一つの試みが、『えらぶ、つかう、めぐらせる』という提案なのです。
一方、コーポレート・ブランド・エッセンスに『Love Your Possibilities !』を掲げているように、ユニ・チャームには『すべての人は等しくさまざまな可能性を秘めていて、その可能性はいくつになっても開花させ続けることができる』という信念があります。
人生には多様なライフステージがあります。その一生涯を通じて、常にお客様に伴走し、『気がつけばいつも傍にユニ・チャームがいた』と思っていただけるような存在になりたい。そんな想いが、私たちの企業活動の根底にはあるんです」
ユニ・チャームのサステナビリティに関する情報はこちら。
「えらぶ、つかう、めぐらせる」に関する情報はこちら。
写真:tomohiro takeshita
取材・文:midori ohashi